BtoBカスタマージャーニーマップの作成手順と運用設計の実践ガイド
最終更新日:2026年05月02日
マーケティングにおいて、顧客行動を分析する上で重要なファクターを占めるカスタマージャーニーマップ。これを活用することにより顧客への課題解消が可能となります。
こちらではカスタマージャーニーマップの意味と役割やその作成方法、そして使用する事によるメリットなどを解説しています。
BtoBのカスタマージャーニーマップは「作って終わり」では機能しません。複数の意思決定者が関与し、検討期間が数ヶ月から1年を超えることもあるBtoBの購買プロセスを適切に設計し、施策とKPIを接続して初めて成果につながります。本記事では、BtoBカスタマージャーニーマップの戦略的価値から実際の作成手順・テンプレート・運用改善サイクルまでを一気通貫で解説します。
BtoBカスタマージャーニーマップの戦略的価値

BtoBカスタマージャーニーマップとは、複数の意思決定者が関与する購買プロセスを可視化し、各フェーズで必要なコンテンツ・タッチポイント・施策を設計するための戦略フレームワークです。単なる「顧客の行動図」ではなく、マーケティングと営業を接続する運用基盤として機能します。
BtoBマーケティングにおいて施策が場当たり的になる最大の要因は「顧客の購買プロセスが可視化されていないこと」です。どのタイミングにどのコンテンツを届ければ意思決定が前進するのか、担当者レベルでは整理されていても組織全体で共有されていないケースが多くあります。カスタマージャーニーマップを設計することで施策の整合性が生まれ、営業とマーケの連携が強化され、商談化率の改善につながります。
BtoBマーケティング全体の戦略設計についてはBtoBマーケティングとは?戦略の立て方や手法・成功事例を解説もあわせてご確認ください。
BtoB購買プロセスで生じる設計難易度

BtoBの購買プロセスがBtoCより複雑なのは、意思決定に関わる人物が複数存在するためです。一般的なBtoB購買では現場担当者・部門長・経営層・経理・法務など、5〜10名が各段階で審査に関与します。それぞれが異なる評価軸(費用対効果・リスク・操作性・法的適合性など)で判断するため、単一ペルソナを前提とした設計では実態と乖離が生じます。
また検討期間の長さも設計難易度を高めます。製造業や医療機器など高単価の商材では、初回接触から受注まで12〜18ヶ月かかることも珍しくありません。この期間中に担当者の異動や優先順位の変化が生じるため、継続的なリードナーチャリング設計が不可欠です。さらに「稟議・承認」という日本のBtoB特有の意思決定フローが、購買プロセスをさらに複雑化させます。こうした多段階構造に対応するためには、フェーズごとに関与者を特定したうえで設計を進めることが必要です。
カスタマージャーニーマップ導入で得られる経営インパクト
カスタマージャーニーマップを正しく設計・運用すると、以下の経営インパクトが得られます。
- 施策整合の実現:各フェーズにどのコンテンツが必要かが明確になり、コンテンツマーケティングの優先度が決まります
- 営業連携の強化:MQL(マーケティング適格リード)からSQL(営業適格リード)への引き渡し基準が明確になり、商談化率が改善します
- 予算配分の最適化:どのタッチポイントへの投資が最も効果的かを数値で判断できるようになります
- 社内合意の形成:マーケ・営業・経営が同じ顧客像を共有し、組織として一体化した戦略を実行できます
120業種・8,000社超の支援実績を持つZenken株式会社では、カスタマージャーニーマップを起点にしたポジショニングメディア戦略により、多くのクライアントの商談化率改善を支援しています。
BtoBとBtoCのカスタマージャーニー比較設計

BtoBのカスタマージャーニーがBtoCと大きく異なるのは、意思決定が個人ではなく組織で行われる点です。フェーズごとの行動・情報要求・評価軸がステークホルダーの役割によって異なるため、複数パターンのジャーニーを並行して設計する必要があります。
フェーズ別の行動差分と情報要求の整理
BtoBとBtoCのカスタマージャーニーを比較すると、各フェーズで求められる情報と態度変容の目的が大きく異なることがわかります。比較検討フェーズや稟議・承認フェーズはBtoB固有であり、これらへの対応がマップ設計の核心となります。
| フェーズ | BtoC(個人) | BtoB(組織) |
|---|---|---|
| 認知 | SNS・口コミ・広告 | 業界メディア・SEO・紹介 |
| 比較検討 | レビューサイト・価格比較 | ホワイトペーパー・導入事例・ウェビナー |
| 稟議・承認 | (存在しない) | ROI試算書・セキュリティ資料・稟議用サマリー |
| 導入 | 購入完了・利用開始 | PoC・トライアル・契約交渉・担当者研修 |
| 継続・拡大 | リピート購入 | 成果測定・追加導入提案・担当者変更対応 |
BtoBでは「稟議・承認」フェーズが固有に存在し、ここで失注する案件が全体の3〜4割を占めることも珍しくありません。このフェーズに必要な「稟議資料テンプレート」「ROI計算シート」「競合比較表」を事前に用意しているかどうかが成否を分けます。
役割別ステークホルダーごとの評価軸
BtoB購買に関与するステークホルダーは役割によって評価軸(KBF:Key Buying Factors)が異なります。以下の表を参考に、それぞれの関与者が何を重視するかを事前に整理しておくことが重要です。
| 関与者 | 主な評価軸(KBF) | 提供すべきコンテンツ |
|---|---|---|
| 実務担当者 | 操作性・学習コスト・サポート体制 | 操作マニュアル・デモ動画・Q&A |
| 部門長・管理職 | 業務効率改善・チームへの影響 | 導入事例・改善数値・導入ロードマップ |
| 経理・財務 | 費用対効果・支払い条件・月額vs一括 | 費用シミュレーション・ROI試算資料 |
| 法務・情報システム | セキュリティ・契約条件・法令適合性 | セキュリティホワイトペーパー・契約書サンプル |
| 決裁者(経営層) | 事業貢献度・競合優位性・リスク | 経営インパクト資料・競合差別化資料 |
比較表で使う評価項目テンプレート
カスタマージャーニーマップで各フェーズを設計する際、以下の評価項目テンプレートを活用すると施策との紐づけが効率的になります。この構造を転用することで、フェーズ設計の抜け漏れを防ぐことができます。
| 評価項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 顧客の課題 | このフェーズで顧客が直面している問題・悩み |
| 顧客の懸念 | 前進を妨げる不安・リスク認識 |
| 必要なコンテンツ | 課題解消・懸念払拭に有効なコンテンツ種別 |
| 推奨タッチポイント | SEO、メール、広告、展示会、インサイドセールスなど |
| 態度変容ゴール | このフェーズ終了時に顧客に達成させたい状態 |
BtoBカスタマージャーニーマップ作成前の準備工程

BtoBカスタマージャーニーマップで失敗する最大の原因は、準備不足によるペルソナの精度不足です。単一の担当者像だけでなく、購買委員会全体を想定して設計することで、稟議フェーズでの失注を大幅に減らすことができます。顧客解像度を高める準備工程は省略できません。
ペルソナと購買委員会の同時設計
BtoCでは「ペルソナ=購買決定者」ですが、BtoBでは「ペルソナ=購買委員会(Buying Committee)」として複数のステークホルダーを同時に設計する必要があります。複数ステークホルダーを前提に置くことで、稟議段階でのストップを事前に回避できます。
購買委員会の設計では、以下の4つの役割ごとに基本情報を整理します。
- チャンピオン:内部で導入推進する実務担当者。最初に接触する人物であることが多い
- インフルエンサー:意見を持ちチャンピオンに影響を与える技術・業務専門家
- ゲートキーパー:情報フィルタリングを行う経理・法務・情シス担当
- デシジョンメーカー:最終承認権を持つ経営層・部門長
それぞれの役割ごとに「課題・懸念・必要情報・接触チャネル」を整理することで、稟議プロセスで誰に何を提供すべきかが明確になります。顧客解像度を高めるためにも、この設計はスキップせず必ず実施してください。
インタビューと失注分析による一次情報収集
ペルソナを仮説だけで作ると、実態と乖離したジャーニーマップになりがちです。一次情報を収集するために以下の3つのアプローチを実施します。
- 顧客インタビュー:既存顧客5〜10名に「検討開始から決断までの経緯」を半構造化インタビューで聞き取る。「どこで知ったか」「何が決め手だったか」「何に不安を感じたか」を必ず確認する
- 失注分析:過去6〜12ヶ月の失注案件をCRMから抽出し、失注理由のパターンを分類する。「価格」「競合選定」「稟議見送り」など理由別に整理し、各フェーズの障壁を特定する
- 問い合わせログ分析:資料請求・問い合わせフォームのテキスト、インサイドセールスの商談記録から頻出する質問・懸念事項を抽出し、設計に反映する
沈黙ステークホルダーの可視化
BtoBの購買プロセスには、表に出てこない「沈黙ステークホルダー」が存在します。彼らは商談の席には現れませんが、稟議段階で強い影響力を持ちます。
特に注意が必要なのは情報システム部門・法務・経理の3部門です。セキュリティ審査・契約条件審査・費用承認の段階でストップがかかり、失注につながるケースが多くあります。これらの沈黙ステークホルダーが「何を懸念するか」を事前に把握し、対応資料(セキュリティホワイトペーパー・FAQ集・ROI試算資料)をジャーニーマップ上の稟議フェーズに組み込んでおくことが重要です。
BtoBカスタマージャーニーマップの作成手順とタッチポイント設計

BtoBカスタマージャーニーマップの作成は、フェーズ定義→行動仮説設定→タッチポイント設計→部門連携設計の順で進めます。施策を「なんとなく」配置するのではなく、各フェーズで必要なコンテンツと責任者を明確にすることで、現場で運用できる設計になります。
フェーズ定義と行動仮説の設定
BtoBカスタマージャーニーマップは、以下のフェーズを基本軸として設計します。
- 認知フェーズ:課題に気づき、解決策を検索し始める段階。SEOコンテンツ・業界メディア・展示会が主なタッチポイントです
- 情報収集フェーズ:複数のサービスを比較検討する段階。ホワイトペーパー・事例資料・ウェビナーが有効です
- 比較検討フェーズ:最終候補を絞り込む段階。デモ・PoC(概念実証)・見積もり依頼が発生します
- 稟議・承認フェーズ:BtoB特有の社内承認プロセス。稟議資料・ROI算出・リスク評価への対応が必要です
- 導入・定着フェーズ:契約後の初期設定・研修・定着支援。継続率とアップセルに直結します
各フェーズに対して「顧客はどのような行動を取るか」「どのような疑問・障壁があるか」を仮説として書き出します。この行動仮説は営業担当者の経験と顧客インタビューの結果を組み合わせて作成します。
タッチポイントとコンテンツ施策の紐づけ
フェーズごとに最適なタッチポイントとコンテンツを紐づけます。コンテンツマーケティングとリードナーチャリングを組み合わせた設計が、BtoB購買プロセスの各段階で特に重要になります。
- SEO記事・コラム:認知・情報収集フェーズ。ターゲットが検索するキーワードに対して包括的な解説コンテンツを提供します
- ホワイトペーパー:情報収集・比較検討フェーズ。専門性を訴求しリードを獲得するための詳細資料です
- ウェビナー・セミナー:比較検討フェーズ。課題解決の具体像を示し、購買意欲を高めます
- 導入事例・インタビュー記事:稟議フェーズ。「同業他社がどう成功したか」を示し、社内説得材料を提供します
- 比較表・ROI計算ツール:稟議フェーズ。稟議資料の作成を支援し、意思決定を加速します
どの施策がどのフェーズのどのペルソナに向けて作られているかを明確に定義することが重要です。BtoBのリード獲得戦略の全体像についてはBtoBリード獲得メディア徹底比較|新規見込み顧客を増やす戦略と成功のポイントも参考にしてください。
部門連携フローと運用責任の明確化
カスタマージャーニーマップを運用可能にするためには、マーケ・営業・インサイドセールスの3部門の役割分担と受け渡し基準を明確にする必要があります。
| 担当部門 | 担当フェーズ | 受け渡し条件(例) |
|---|---|---|
| マーケティング | 認知・情報収集 | スコアリング100点以上またはホワイトペーパーDL |
| インサイドセールス | 情報収集・比較検討 | 商談設定完了またはSQL認定 |
| フィールドセールス | 比較検討・稟議・導入 | 受注またはPoC開始 |
この受け渡し基準を明文化し、CRMまたはMAツールに実装することで、リードが各部門を通過する際の取りこぼしを防ぎます。
BtoBカスタマージャーニーマップのテンプレート実装
BtoBカスタマージャーニーマップのテンプレートは、フェーズ・顧客行動・心理・障壁・施策・KPI・担当者の7列を基本構造とします。この構造を実装することで、作成後すぐに施策を接続できる実用的なマップになります。
基本テンプレートの列設計
カスタマージャーニーマップの基本テンプレートは以下の7列で構成します。各列の意味と記入例を確認し、自社の商材に当てはめていきます。
| 列名 | 記入内容 | 記入例(比較検討フェーズ) |
|---|---|---|
| フェーズ | 購買プロセスの段階名 | 比較検討フェーズ |
| 顧客行動 | このフェーズで顧客が取る具体的行動 | 複数ベンダーのデモ参加・見積もり依頼 |
| 顧客心理 | 顧客の感情・思考状態 | 「どこが自社に最適か判断できない」「稟議が通るか不安」 |
| 障壁 | 前進を妨げる要因 | 社内合意形成・費用対効果の明確化困難 |
| 施策 | 障壁解消のためのコンテンツ・アクション | 導入事例資料提供・ROI計算シート・稟議サポート |
| KPI | フェーズ通過の成功指標 | デモ実施数・見積もり提出数・SQL数 |
| 担当者 | 施策実行の責任部門・担当者 | インサイドセールス+フィールドセールス |
記入見本で学ぶ初期ドラフト作成
初期ドラフトを作成する際は、以下のステップで進めます。
- ステップ1:フェーズを横軸に配置:認知・情報収集・比較検討・稟議・導入の5フェーズを横に並べ、各列に期間の目安を記入します
- ステップ2:顧客行動を仮説で記入:営業や顧客インタビューで把握した行動を各フェーズに当てはめます。まずは仮説で構いません
- ステップ3:障壁と施策のペアを記入:各フェーズの「失注・停滞」が起きやすい理由を書き、それを解消する施策を対応させます
- ステップ4:KPIを数値で設定:各フェーズの通過指標を数値で設定します(例:CV率3%、MQL→SQL転換率30%)
抜け漏れ防止ポイントとして、「稟議フェーズ」と「沈黙ステークホルダーへの対応」が空白のままになりやすいため、必ず記入します。
現場運用に合わせるカスタマイズ手順
業種や商材単価によってテンプレートをカスタマイズする必要があります。主な調整ポイントは以下のとおりです。
- 高単価・長期検討(製造業・医療・ITインフラ):稟議フェーズをさらに「稟議準備」「部門承認」「役員承認」に細分化します。PoC期間も別フェーズとして追加します
- 中単価・中期検討(SaaS・コンサル):比較検討フェーズにトライアル・無料期間を組み込み、実績ベースの意思決定を支援します
- 低単価・短期検討(消耗品・定期サービス):稟議フェーズは省略可能です。認知→情報収集→即断の3フェーズ構成に簡略化します
使われないBtoBカスタマージャーニーマップの再設計

「マップを作ったのに現場で使われない」という状況は、BtoBカスタマージャーニーマップで最も多い失敗です。原因のほとんどは「企業目線での設計」「施策との未接続」「更新ルールの不在」の3つに集約されます。再設計のポイントを押さえておくことで、形骸化を防ぐことができます。
失敗パターンの診断フレーム
自社のカスタマージャーニーマップが「使えない状態」かどうか、以下の4つのパターンで診断します。
- 企業目線過多:「自社がやりたいこと」を中心に設計され、顧客の感情・課題・懸念が薄い。症状:マップが自社の営業プロセス図になっています
- ターゲット曖昧:ペルソナが「30〜50代の管理職」などと大雑把で、購買委員会の役割分担が設計されていない。症状:誰に向けて施策を打てばいいか不明確です
- 施策未接続:マップは存在するが、各フェーズの施策・コンテンツが紐づいていない。症状:日常業務でマップが参照されません
- 更新停止:作成時のデータを使い続け、市場変化や施策の成果が反映されていない。症状:1年以上更新されていません
再設計チェックリストの実装
以下のチェックリストを使って、現行のカスタマージャーニーマップを評価します。すべての項目に「Yes」と答えられる状態が目標です。
- □ ペルソナが購買委員会の役割別に複数設定されている
- □ 各フェーズに顧客の障壁(マイナス感情)が記載されている
- □ 各フェーズに施策・コンテンツが紐づいている
- □ 各フェーズにKPIと測定方法が設定されている
- □ 担当部門と受け渡し条件が明確になっている
- □ 月次または四半期ごとの更新ルールが決まっている
- □ 最後の更新から3ヶ月以内である
ポジショニングマップ統合による施策優先度決定
カスタマージャーニーマップの再設計では、ポジショニングマップと統合することで施策優先度を戦略的に決定できます。ポジショニングマップで競合が弱いフェーズ(ホワイトスペース)を特定し、そのフェーズの強化に優先的にリソースを投下するアプローチです。
たとえば競合他社が認知フェーズのSEOコンテンツは充実させているが、稟議フェーズの支援資料(ROI計算シート・稟議サポートコンテンツ)が弱い場合は、そこにリソースを集中させることで差別化を図れます。施策優先度をデータドリブンで決定するために、ポジショニングマップの活用は非常に有効です。
ポジショニングマップの活用方法についてはBtoB・法人のポジショニングマップの作り方、およびポジショニングマップの作り方と縦軸・横軸の決め方を解説もあわせてご確認ください。
BtoBカスタマージャーニーマップ運用のKPI設計と改善サイクル
BtoBカスタマージャーニーマップは作成後に運用・改善を継続することで成果に直結します。フェーズ別KPIを設定し、MAとインサイドセールスを連携させることで、商談化率を継続的に改善する体制を構築できます。
フェーズ別KPIと商談化率の接続
BtoBカスタマージャーニーの各フェーズに対応するKPIを設定し、CV・MQL・SQL・受注率まで指標を一気通貫で接続します。
| フェーズ | KPI指標 | 目安数値(参考) |
|---|---|---|
| 認知 | オーガニック流入数・インプレッション数 | 月次前年比110%以上 |
| 情報収集 | ホワイトペーパーDL数・CV率 | CV率2〜5% |
| 比較検討 | MQL数・デモ実施数 | MQL→商談転換率30〜50% |
| 稟議・承認 | SQL数・稟議前進率 | SQL→受注率30%以上 |
| 導入 | 受注数・ACV(年間契約額) | 目標受注数に対する達成率 |
「目安数値」は業種・商材によって大きく異なるため、自社の過去実績から基準値を設定することを推奨します。商談化率の改善状況は月次でトラッキングし、低下しているフェーズの施策を優先的に見直します。
MAとインサイドセールス連携の実務設計
BtoBのリードナーチャリングでは、MAツールとインサイドセールスを連携させる実務設計が重要です。具体的には以下の3点を標準化します。
- スコアリング条件の設定:ページビュー・資料DL・ウェビナー参加などの行動に点数を付与し、一定スコア以上でインサイドセールスに通知します
- フォロータイミングの最適化:高スコアリード(100点以上)には24時間以内にフォロー電話をします。中スコアリード(50〜99点)には3日以内にメールシーケンスを開始します
- 商談情報のCRM記録:インサイドセールスとの会話内容をCRMに記録し、フィールドセールスへの引き継ぎ時に情報が失われない体制を構築します
製造業でのMA活用については製造業のマーケティングオートメーション(MA)運用方法を伝授も参考にしてください。また、リード獲得から商談化までの全体戦略はBtoBリード獲得メディア徹底比較であわせて確認することをおすすめします。
月次レビューで改善を回す運用ルール
カスタマージャーニーマップを「生きたドキュメント」として機能させるために、月次レビューの運用ルールを定めます。
- 月次データ集計:各フェーズのKPI実績を集計し、前月比・前年比で比較します(所要時間:1〜2時間)
- 仮説との照合:当月の施策仮説と実績を照合し、「効果があった施策」「効果がなかった施策」を記録します
- 次月施策への反映:効果のなかった施策は修正または停止し、次月の施策優先度を更新します
- マップの更新:フェーズ・KPI・施策の変更をカスタマージャーニーマップ本体に反映し、全部門で共有します
Zenken支援知見に学ぶBtoBジャーニー活用事例

Zenken株式会社は120業種・8,000社超の支援実績を通じて、BtoBカスタマージャーニーマップの設計と運用における多くの知見を蓄積しています。業種ごとの傾向と成果指標の読み方を整理します。
製造業での比較検討フェーズ強化事例
製造業においてBtoBカスタマージャーニーマップを活用するうえで共通して見られる課題は「比較検討フェーズの長期化」です。製品スペックが複雑なため、技術担当者・調達担当者・工場長の3者が異なる評価軸で同時に検討を進めることで、情報提供が散漫になりがちです。
Zenkenが支援する製造業クライアントでは、技術資料(PDF)のダウンロードを比較検討フェーズのKPIとして設定し、ダウンロード後に自動メールシーケンスで「導入プロセスの可視化資料」を送付する施策を実施しました。この施策により、技術担当者・調達担当者・工場長それぞれに適した情報を順次提供できるようになり、商談化率の改善につながった事例があります。比較検討フェーズへの投資を優先することで、稟議前の社内合意形成を加速できる点が製造業における重要な設計ポイントです。
ITサービスでの稟議フェーズ最適化事例
SaaS・クラウドサービスなどのITサービス分野では、稟議フェーズにおける「情報システム部門の審査」と「経営層の費用承認」が主な失注ポイントとなります。
Zenkenが支援するITサービスクライアントでは、稟議段階に向けた「稟議資料テンプレート(PowerPoint形式)」の提供と、部門別のFAQページ(情シス向け・経営層向け)の整備を実施しました。特にROI計算が組み込まれた稟議資料テンプレートは稟議フェーズの前進率を高める効果が高く、複数部門の関与者に対して同時に訴求する設計として有効でした。キャククル(shopowner-support.net)はZenken株式会社が運営する成約特化型の比較メディアで、このような施策設計の知見を多数発信しています。
BtoBカスタマージャーニーマップ運用のFAQ
Q. どこまで細かく設計すると運用しやすいですか?
A. フェーズ数は5〜7段階、各フェーズのタスク行は5〜7行を目安にします。それ以上細かくすると更新コストが高くなり、形骸化のリスクが増します。「月次で更新できる粒度」を基準にして、運用可能な設計に収めることが重要です。最初は粗くても問題ありません。運用しながら実態に合わせて精緻化していくアプローチが、現場で定着しやすいカスタマージャーニーマップを作る近道です。
Q. 関係者が多い商材で合意形成を進めるコツはありますか?
A. カスタマージャーニーマップ自体を社内合意形成のツールとして活用することをおすすめします。マーケティング・営業・インサイドセールスの各部門担当者を集めたワークショップ形式で最初のドラフトを作成し、各部門が「自分たちが作ったマップ」と感じられるようにすることが重要です。また意思決定ログを残し「なぜこの設計にしたか」の理由を記録しておくことで、担当者が変わっても設計意図が引き継がれます。
Q. 小規模チームでも改善サイクルを回せますか?
A. 2〜3名の小規模チームでも改善サイクルを回すことは可能です。まず着手すべきは「測定できるKPIを1〜2個に絞る」ことです。複数の指標を同時に改善しようとすると、どこに問題があるか分からなくなります。最初はCV率(リード獲得率)と商談化率の2指標に集中し、月1回30分の振り返り会議で改善アクションを決定するシンプルな体制から始めることを推奨します。
BtoBカスタマージャーニーマップを成果につなげる実行計画
BtoBカスタマージャーニーマップを成果につなげるには、設計・実装・運用の3段階を一気通貫で実行することが重要です。まず優先すべき3つの設計要素を押さえ、段階的に運用体制を構築していきましょう。
記事内容の実行優先順位
今すぐ着手すべき設計要素を3つに絞ります。
- 購買委員会の設計:ペルソナを複数役割(チャンピオン・インフルエンサー・ゲートキーパー・デシジョンメーカー)に分けて整理します。これだけで施策の対象が明確になります
- 稟議フェーズの強化:失注の多くは稟議フェーズで起きています。まずROI計算資料と稟議資料テンプレートを1つ作成し、営業がすぐ使える形にします
- 月次KPIトラッキングの開始:CV率と商談化率を月次で記録し始めます。最初の3ヶ月はデータ収集に徹し、4ヶ月目から施策改善に入る設計が現実的です
BtoBマーケティング全体の戦略設計についてはBtoBマーケティングとは?戦略の立て方や手法・成功事例を解説もあわせてご確認ください。カスタマージャーニーマップをより広い戦略の文脈で位置づけることができます。
自社運用が難しい場合の支援活用
以下の状況に当てはまる場合は、外部支援の活用を検討することを推奨します。
- マーケティング専任担当者が1名以下で、カスタマージャーニーマップの設計・運用に割けるリソースが限られている
- 過去に作成したマップが現場で使われず、形骸化した経験がある
- 施策を打ってもリード数・商談化率が改善せず、何が問題か特定できていない
Zenkenでは、クライアントの業種・商材・現状の課題に応じてカスタマージャーニーマップの設計から施策実行・効果測定まで一気通貫で支援しています。120業種・8,000社超の実績をもとに、自社にとって最適な顧客導線を設計します。












