ランチェスター戦略(ランチェスターの法則)とは?小が大に勝つための秘策を解説

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中小企業の経営・マーケティングに携わっている場合、自社の商品やサービスがたくさん売れる、市場シェアをたくさん獲得できるような経営戦略を立てることが大切です。しかし、経営戦略と一口に言っても考え方や方法はさまざまであり、各企業によって向き不向きもあるので、どのようなアプローチを行なうべきか迷ってしまうのではないでしょうか。

そこで今回は、あらゆる中小企業にとって重要性が高い経営戦略「ランチェスター戦略」について解説していきます。「勝てる経営戦略」が知りたいなら、ぜひお読みください!

「ランチェスター戦略」とは?

「ランチェスター戦略」とは、企業間における営業・販売競争に勝つための経営戦略です。

もう少し踏み込んで説明すると、自社を含む各企業をそれぞれ「強者(戦力で勝る)」と「弱者(戦力で劣る)」に分類したうえで、弱者が強者に勝つためにどう戦うべきかを考える取り組みとなります。

基本的に強者はいわゆる業界トップの大企業、弱者はその他の中小企業や個人事業主を指しますが、弱者が強者に真っ向勝負を挑んでも勝てる可能性はほとんどありません。なぜなら、強者はすでに強力な商品やサービスを持っており、関連する市場シェアの大半を獲得しているため、そこを切り崩すことは極めて困難だからです。おまけに強者はヒト・モノ・カネといったリソースも潤沢なので、戦いが続くほど弱者は不利な状況に追い込まれてしまいます。

では、弱者は強者に勝てないのかというと、決してそんなことはありません。真っ向勝負で勝てないなら、そもそも真っ向勝負を挑まなければ良いのです。弱者なりの経営戦略、つまりランチェスター戦略をもとに戦えば、勝てるポイントが見えてきます。

このランチェスター戦略を導入する場合、先に「ランチェスターの法則」を学ぶ必要があります。次章で詳しく解説するので、引き続き読み進めてください。

「ランチェスターの法則」とは?

ランチェスターの法則とは

「ランチェスターの法則」とは、第一次世界大戦が勃発した1914年、イギリス人エンジニアのF・W・ランチェスターによって提唱された軍事理論です。文字から想像できると思いますが、前章で解説したランチェスター戦略のベース理論となっています。

イギリス軍の戦闘機を開発していたランチェスターは、実戦で使われる戦闘機がどのように戦果を上げるのか興味を持ち、独自に研究をスタートしました。その結果、戦闘機の質(武器効率)と量(兵力数)から、敵軍に与えられる損害を算出できることを発見したのです。これを体系化したものがランチェスターの法則ですが、従来の軍事理論が覆されるほどの衝撃を生みました。

第二次世界大戦の頃になると、コロンビア大学の数学教授B・O・クープマンをはじめとする研究チームによって、ランチェスターの法則はさらなる発展を遂げます。クープマンたちは戦闘機の質・量だけではなく、戦争全体の流れに着目して研究を行ないました。戦争における力を最前線で直接敵軍と戦う「戦術力」と、敵軍の後方支援を攻撃して生産・補給を断つ「戦略力」に分類。そのうえで戦争に勝つためには、より大局的な視点に基づく「戦略力」のほうが重要だと提唱したのです。

この考え方は「クープマンモデル(ランチェスター戦略方程式)」と呼ばれており、第二次世界大戦における連合国の勝利に大きく貢献したと言われています。

軍事理論から経営理論へ

戦後、ランチェスターの法則やクープマンモデルは軍事だけではなく、ビジネスの方面でも活用されるようになりました。車で有名なフォルクスワーゲン社が世界へ進出する際、上記の考え方に基づく経営戦略が展開されたと言われています。

ランチェスター戦略として体系化されたのは1970年前半であり、日本のコンサルタントの草分け的存在である故田岡信夫先生によって提唱されています。1962年から田岡先生は、社会統計学者の斧田大公望先生とともにクープマンモデルを研究し、1972年に著書「ランチェスター販売戦略」を出版されました。日本がオイルショックの不況に陥っていた時代、企業が生き残るための考え方をまとめたものがランチェスター戦略です。

ほとんどの経営戦略は海外から日本に伝わっていますが、ランチェスター戦略は日本発ということもあり、日本人にとって馴染みやすい考え方となっています。実際、日本では「販売戦略のバイブル」などと呼ばれることもあり、トヨタ・日本生命・ソフトバンク・エイチアイエスなど、多くの大企業・有名企業がランチェスター戦略を導入しているのです。

1984年に田岡先生が亡くなられた後、その遺志を受け継いで特定非営利活動法人「ランチェスター協会」が設立されるなど、ランチェスター戦略は今なお活用され続けています。

ビジネスにおけるランチェスターの法則

先述した通り、ランチェスターの法則やクープマンモデルは軍事理論として提唱されたので、ビジネスの世界に転用できるのか疑問に思われたかもしれません。しかし、戦場を市場に、兵士をリソースに、武器を商品やサービスなどに置き換えれば、経営理論として問題なく成立するのです。

戦争における戦いは、ビジネスの世界だと「顧客の奪い合い」に他なりません。できるだけ顧客を増やして、競合他社より市場シェアを多くしなければなりませんが、弱者が何の策もなしに強者と戦っても、結果は目に見えています。

弱者が強者に勝つためには、ランチェスターの法則における第一法則・第二法則を押さえることが大切です。

第一法則

「第一法則」とは、原始的な戦いに対して適用される考え方です。狭い範囲で戦う局地戦、敵と肉薄して戦う接近戦、一対一で戦う一騎打ち戦などが当てはまります。

例えば、A国の兵士10人とB国の兵士5人が同じ武器を使って戦う場合、当然ながらA国のほうが有利です。仮に1人ずつ戦ってすべて相打ちになったとしても、A国の兵士は5人残ります。

また、同じ5人同士で戦うことになっても、A国がB国より優れた武器を持っていれば、A国の勝利は揺るがないでしょう。武器効率(武器の質)に差があるので、A国の兵士のほうが有利に戦えます。

つまり、武器効率が同じなら兵士の数で、兵士の数が同じなら武器効率で勝敗が決まるということです。敵に勝ちたいなら兵士の数、もしくは武器効率で上回る必要が出てきます。

第二法則

「第二法則」とは、近代的な戦いに対して適用される考え方です。広い戦場において敵味方が離れて布陣し、機銃や大砲といった近代兵器を使うような戦いが当てはまります。

近代兵器を使った戦いの場合、敵味方ともに損害が確率的に発生することから「確率戦」とも呼ばれています。この確率戦では、武器効率より兵士の数が重要視されており、原則として兵士の数が多いほうが圧倒的に有利です。

例えば、A国が兵士10人と高性能な武器、B国が兵士20人と低性能な武器という条件下で戦う場合、A国はいかに優れた武器を使っていたとしても、兵士を増やさない限りB国に勝つことは不可能と言えます。

ランチェスター戦略から勝ち方を考える

ランチェスター戦略から勝ち方を考える

ここまでランチェスター戦略について解説してきましたが、ビジネスの世界で特に重要となるのは第一法則第二法則です。

  • 第一法則
    局地戦・接近戦・一騎打ち戦に適用。兵士の数もしくは武器効率で勝敗が決まる。
  • 第二法則
    確率戦に適用。兵士の数で勝敗が決まる。

上記を踏まえると、弱者の勝ち方が見えてくるはずです。

「強者の法則」と「弱者の法則」

第一法則と第二法則をビジネスの世界に当てはめて考えた場合、基本的に大企業ほどリソース(兵士)の数が多いので、第二法則を適用して戦っても中小企業はまず勝てません。しかし、第一法則なら商品・サービス(武器)の質で勝負できるため、中小企業が大企業に勝てる可能性も出てくるのです。また、リソースについても大企業ほど数は増やせませんが、工夫次第である程度はカバーできます。

このような考え方から第一法則は「弱者の法則」、第二法則は「強者の法則」と呼ばれています。弱者は強者と同じように戦えないため、弱者の法則から経営戦略を立てることが大切です。

強者・弱者の定義

ランチェスター戦略では、以下のように強者・弱者が定義されています。

  • 強者 市場シェアNo.1の企業
  • 弱者 市場シェアNo.1以外の企業すべて

つまり、必ずしも大企業=強者ではないということですが、市場シェアNo.1を獲得している企業のほとんどは大企業・有名企業です。日本の中小企業は一部の例外を除けば、ほぼ弱者で占められているので、必然的に弱者の法則のほうが重要となってきます。

弱者が経営戦略を立てるためには、第一法則(弱者の法則)に基づく三原則を意識することが大切です。その三原則に沿ってアプローチすれば、小は大に勝つことも実現できるでしょう。

弱者が勝つための三原則とは?

弱者が勝つための三原則

弱者が強者に勝つためには、以下の三原則が欠かせません。

  1. 戦う範囲を絞り込む
  2. 武器効率を高める
  3. 競合局面にリソースを集中させる

それぞれ詳しく解説するので、しっかり押さえておきましょう。

戦う範囲を絞り込む

弱者は第一法則に沿って経営戦略を立てなければならないので、戦い方は局地戦・接近戦・一騎打ち戦が基本となります。ビジネスに置き換えて説明すると、以下のような状況で戦うということです。

  • 業界や地域を限定して、リソースの分散を抑える(局地戦)
  • 卸売店や広告代理店を挟まず、顧客に直接アプローチする(接近戦)
  • 競合他社が1社しかいない、もしくは少ない市場を狙う(一騎打ち戦)

広範囲でビジネスを展開すると、業務効率の悪化やリソース不足に陥りやすいだけではなく、強者が第二法則によって戦いを挑んでくるので、勝ち目がなくなってしまいます。弱者はとにかく範囲を絞りに絞り込んで、自社に有利な状況を作り出さなければなりません。

例えば、スイーツ店を経営している場合、ターゲットを10~20代の若い女性に限定する、一種のスイーツだけに特化する、近隣住民向けにSNSで直接アピールするといった方法があります。また、新たに店舗を構えたり、新作スイーツを販売したりするなら、競合他社の動向をチェックして、勝てる可能性があるか確かめることも大切です。

武器効率を高める

ビジネスにおける武器とは、商品・サービスだけではありません。社員のスキルや集客ノウハウ、市場に関する情報なども有用な武器となります。

第一法則では、リソース(兵士の数)を増やす、もしくは武器効率を高めることが大切です。現実的に考えると、弱者が強者のように社員や資金をたくさん得ることは困難ですが、商品・サービスの品質やスキルレベルを高めることはできます。

武器効率でアドバンテージを取れば、競合他社よりリソースが少なくても、勝てる可能性が出てくるのです。

競合局面にリソースを集中させる

競合局面とは、わかりやすく説明すれば「顧客の奪い合いが起こるポイント」のことです。この競合局面を見極めれば、リソースで勝る競合他社を相手にしても十分戦うことができます。

例えば、個人でスイーツ店を経営していて、近所に有名スイーツを販売する大型スーパーができたと仮定します。大型スーパーは他にもさまざまな商品を取り扱っているため、リソースや商圏の広さはスイーツ店と比較にならないほど膨大です。また、価格もスイーツ店より安いので、最初から勝ち目がなさそうに見えます。

しかし、スイーツ店と大型スーパーの競合局面は、あくまでスイーツだけです。スイーツ店はそこにリソースを集中させることができますが、大型スーパーは他の商品にもリソースを割く必要があるため、実質的に投下される社員や資金の量を見ると、それほど変わらない可能性が高いでしょう。

リソースに大した差がなければ、あとは武器効率の勝負なので、弱者でも無理なく強者と戦うことができるでしょう。

【弱者の経営戦略】実践段階における4つの心得

ランチェスター戦略について理解したら、いよいよ実践に移ります。そこで、実践段階における4つの心得についてまとめました。どれも経営戦略を考えるうえで重要なので、三原則と合わせて押さえておきましょう。

徹底的に差別化する

弱者が経営戦略を考えるにあたって、最も大切なことは差別化です。第一法則で勝つためには、武器効率を高めなければなりませんが、いかに優れた武器を持っていたとしても、その特徴やメリットが強者と大して変わらないなら、顧客は強者へと流れてしまいます。

差別化のポイントは企業によって異なりますが、業界や業種を問わず、商品・価格・流通・宣伝・顧客の5つは検討すべきです。自社商品だけの機能を持たせる、他社にはできないサービスを提供するなど、徹底的に差別化すれば、弱者でも強者に勝つことができます。

小さなNo.1を目指す

市場シェアNo.1を達成することがランチェスター戦略のゴールですが、いきなり全国No.1や業界No.1を目指すことは困難です。そのため、自社周辺のエリアで来店数No.1を目指したり、特定の商品カテゴリで販売数No.1を目指したりするなど、まずは小さなNo.1から達成しましょう。

狭い範囲におけるNo.1でも立派な実績なので、顧客へのアピールとして有効です。小さなNo.1を1つずつ達成すれば、着実にシェアを広げることができます。

足下の敵を攻める

もし自社が市場シェアNo.1を獲得できた場合、晴れて弱者から強者へとランクアップします。しかし、強者になったからといって、安心できるわけではありません。次はNo.2以下の弱者から、No.1のポジションを守らなければならないからです。

そこで、足下の敵を攻めるというアプローチが重要となります。足下の敵とは、ずばり市場シェアNo.2の企業です。No.3以降の企業も気になるかもしれませんが、No.2の企業を放っておくと逆転される可能性があるので、先に抑える必要があります。

足下の敵を攻めるときは、経営戦略を真似る「ミート戦略」が有効です。例えば、No.2の企業が若い世代に向けたサービスを展開している場合、自社でも似たようなサービスを展開すれば、高い効果が期待できます。

コアなファンを作る

より多くの顧客を獲得するためには、多くの人から支持されるような万人受けのアプローチを行なう必要があります。しかし、リソースに乏しい弱者が万人受けを狙おうとすると、思うように差別化できなかったり、顧客からの反応が鈍くなったりするなど、中途半端な結果に終わりがちです。

そのため、最初から万人受けを狙わず、一部のコアなファンから支持されるようなアプローチを実施しましょう。

ランチェスター戦略は難しいものではない

ランチェスター戦略は軍事理論から生まれた経営理論なので、導入にあたって戦争での戦い方や法則を理解する必要があります。しかし、軍事理論ベースと言っても決して難しいものではなく、簡単な計算やビジネス知識が身についていれば、問題なく導入することが可能です。

また、ランチェスター戦略はすでに数多くの企業で結果を出しています。正しく導入・実践すれば、確かな結果が返ってくるので、ぜひ検討してみてください。

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