従来の手書きのカルテでは、患者の待ち時間が増えたり、看護師の業務負担も大きくなりがちです。また、補助金申請や診療報酬加算は電子カルテの導入が前提になっている場合もあるので、電子カルテの導入を検討している中小病院が増えています。
この記事では、中小病院向けに電子カルテを提供する企業を紹介します。サービスの特徴や費用、導入事例などもご覧いただけますので、自院への電子カルテ導入の参考にしてみてください。
中小病院向け電子カルテの一覧表
ここでは、各社が提供する中小病院向けの電子カルテシステムを一覧で紹介しています。電子カルテは自院に合ったシステムのほうが高い効果が得られるため、機能性やサービス特徴を比較して、自院に合ったシステムを見つけましょう。
会社名 | サービスの特徴 |
---|---|
ウェブカルテⅡ |
追加費用なしでユーザーを増やせるライセンスフリーの電子カルテ
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電子カルテシステムER |
自由度の高いシステム構成とユーザーニーズへのスピーディ対応で業務効率化をサポート |
メディコム |
必要な機能をパッケージ化!直感的な使いやすさで業務効率アップをサポート |
ミナリス |
中小病院向けに特化したハイブリッドクラウド情報システム |
HOPE Cloud Chart II |
オーダー機能をベースとしているシステム。電子カルテツールがオプション |
AHIS |
「日医標準レセプト(ORCA)」と「日立DOCTOR-SEED」との連携が可能 |
モバカル |
200床未満の中小規模医療機関向けに設計されたモバイル端末向けシステム |
Henry |
音声入力やタブレット端末での操作も可能。追加のオプション料金や保守運用料金が不要 |
OCS Cube-Smart |
堅牢な国内自社データセンターを強みとしているシステム |
HAYATE/NEO |
199床以下の中小規模病院向けに特化。電子処方箋や医療情報標準規格 「HL7 FHIR」にも対応 |
ヘルス×ライフ カルテ |
診療所向けプランは月額19,000円~と低め |
セコム・ユビキタス電子カルテ |
通信を保証する専用ネットワークと堅牢なデータセンターを使用 |
MI・RA・Is/AZ |
スマホでも利用可。リストバンドやバーコードなどにも対応している3点認証を採用 |
blanc |
一般病院や精神科病院向けに開発されたシステム。遠隔診療や訪問医療にも対応 |
MALL |
150社以上の機器・システムとの互換性が特徴。約3,000の設定項目でカスタマイズできる |
A-CHART |
ICカードとパスワードの二重認証により個々の利用者認証を強化したシステム |
医次元 |
導入コストを削減し、必要な機能を厳選!UIを重視した使い勝手優先のシステム |
メディカルフォース |
自由診療や形成外科、婦人科クリニック向けのシステム |
RACCO |
コストパフォーマンスに優れた健診システム「HOTATE」も提供 |
電子カルテとは?
電子カルテは、医療情報をデジタル化し、管理するシステムです。従来の紙のカルテを電子的に置き換え、患者の診療情報をコンピューターに記録。医療機関内で共有し、診療情報の入力・閲覧・更新が迅速に行われるようサポートしてくれます。
電子カルテの三原則
厚生労働省は、電子カルテの使用において、「真正性」「見読性」「保存性」の三つの基本原則遵守を要求しており、医療現場で効果的に機能するためには不可欠としています。 電子カルテの導入によって、患者情報の整合性・アクセス管理・データの永続性を保証し、診療情報を正確に更新・維持・管理ができると考えられます。
電子カルテの連携性
電子カルテシステムは、異なる医療機関や関連する健康管理システムとデータを共有する能力を持っています。電子カルテの使用により、患者の一貫したケアを可能にし、医療提供者間で情報が効率的に流通できるはずです。
電子カルテの基本機能と高度な機能
基本機能には、患者の病歴・診療記録・薬剤情報の記録が含まれます。高度な機能としては、臨床決定支援ツール・カスタマイズ可能なレポート生成・リアルタイムでのデータ分析ツールがあり、医療の質と効率向上が期待できます。
カスタマイズ性とユーザーインターフェース
電子カルテは、利用環境に応じてカスタマイズが可能です。各医療機関のニーズに合わせたフォーマットや、特定の専門分野に特化した設定ができ、ユーザーインターフェースも直観的に操作できるものが多く採用されています。高い利便性により、医療従事者は患者ケアに集中できる環境を実現できると考えられます。
中小病院向けに電子カルテを導入するメリット
電子カルテは、導入によって中小規模病院の業務にさまざまなメリットをもたらすと考えられます。ここでは、それぞれのメリットについて紹介します。
情報管理の最適化
電子カルテにより、患者の医療記録や診療情報がデジタル化され、検索やアクセスが容易になります。紙カルテを物理的に探す手間が省け、情報管理の効率化が期待できます。
診療プロセスの効率化
電子カルテシステムは、テンプレートや補助機能の活用により、カルテの入力や処方箋、紹介状の作成が迅速に行えるようサポートしてくれます。転記ミスの防止や異常値の早期発見に役立つアラート機能も組み込まれているものもあります。
スペースとコストの削減
ペーパーレス化により、従来の紙カルテを保管していたスペースが不要になります。さらに、クラウド型電子カルテを採用すれば、高額な初期投資や継続的なサーバー保守のコストの大幅削減が可能です。
アクセスと連携の強化
クラウド型電子カルテは、医療スタッフが院外からも診療情報にアクセスが可能。在宅医療や往診時の利便性が高められるはずです。また、他の医療システムや診療支援ツールとの連携が容易で、チーム医療や地域医療の促進に寄与すると考えられます。
データの安全性と復旧
外部サーバーに保管できると、火災や自然災害からデータを保護し、緊急時にも迅速な復元が可能になります。医療機関は、どのような事態にも迅速に対応ができ、患者情報の漏洩や損失のリスクを心配する必要がありません。
中小病院向けに電子カルテを導入するデメリット
電子カルテ導入には、メリットだけでなくデメリットについても理解しておく必要があります。ここでは、電子カルテ導入のデメリットについて紹介します。
初期設定とトレーニングの負担
電子カルテシステムの導入には、初期設定やスタッフトレーニングに時間と労力が必要です。特に、中小規模の病院では、リソースが限られているため、日常業務に影響を与える場合があります。
技術的な障壁
システムに不慣れなスタッフが多い場合、電子カルテシステムへの適応が困難である可能性が考えられます。また、システムの不具合やダウンタイムが発生した際の対応が、病院運営にストレスをもたらすケースも少なくありません。
継続的な費用
電子カルテの維持には、定期的なソフトウェア更新やサポートサービスのための継続的な費用が伴います。特に予算が限られている中小規模病院にとって、経済的な負担となるため、システム選びは、慎重にしたいものです。
中小病院向けに電子カルテの相場費用
電子カルテの費用は、オンプレミス型とクラウド型では異なります。ここでは、それぞれの費用相場を紹介します。
オンプレミス型電子カルテの費用
オンプレミス型電子カルテの導入には、サーバー設置のための初期費用として約200万円から500万円が必要です。さらに、システムの維持や更新に必要な保守費用は、月額約2万円が目安。耐用年数はおおよそ5年で、その後は新しいシステムの再購入が必要です。
クラウド型電子カルテの費用
クラウド型電子カルテでは、初期費用が大幅に削減され、約10万円から数十万円程度です。月額料金は、1万円から数万円で、システム使用料やサーバーのレンタル料が含まれます。クラウド型は、ユーザーの追加や外部機器の連携によって費用が変動する場合があります。
電子カルテの補助金について
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が生産性向上のためにITツールを導入する際、経費の一部を支援する制度です。対象となるソフトウェアやサービスは、事務局の審査を経て公式サイトに登録されたもののみが補助対象。サポート費用やクラウドサービスもカバーします。
通常枠(A・B類型)
電子カルテの導入には、通常枠の補助金が活用できます。A類型とB類型に分かれており、A類型では補助率1/2以内で、補助金額は5万円以上150万円未満です。
B類型は、補助率は同じく1/2以内で、補助金額が150万円以上450万円以下に設定されています。電子カルテのソフトウェア・導入関連費用・クラウドサービス利用料(最大2年分)に適用可能ですが、ハードウェア購入費は対象外です。
デジタル化基盤導入枠
デジタル化基盤導入枠では、補助対象として会計ソフトや受発注ソフトなどがあり、電子カルテシステムに関連する機能が含まれる場合に利用できます。ソフトウェアの補助率は最高で3/4。補助上限額は50万円超で350万円以下です。また、ハードウェアに関しては、補助率1/2以内で、補助金額はPCやタブレットが10万円以下、その他機器が20万円以下に設定されています。
セキュリティ対策推進枠
サイバーセキュリティの強化を目的としたセキュリティ対策推進枠は、電子カルテシステムのセキュリティ対策を含むITツール導入に利用できます。補助率は1/2以内で、補助金額は5万円以上100万円以下です。医療機関におけるデータ保護と効率化のためにもセキュリティ対策推進枠の活用が推奨されています。
中小病院向け電子カルテシステム導入に関するよくある質問
Q1.中小病院の電子カルテの主な機能は?
中小病院向けの電子カルテシステムには、効率的な患者管理と診療支援を実現する多様な機能が組み込まれています。患者管理機能では、患者の病名・既往歴・感染症・薬品や食物アレルギー情報を詳細にプロファイリングし、アクセスを簡単にしてくれます。
外来機能
受付時にカルテを呼び出し、問診内容を記録。次回診察のスケジュール管理や他部門への予約手続きを行う機能が必要です。一部システムでは、患者自身による予約やオンライン診療機能も提供されています。
電子カルテ機能
カルテ作成のテンプレート利用、薬歴や検査結果の参照が可能。高頻度で使用する薬剤のデータを保存し、必要に応じて家族カルテも確認できるよう設計されているものがあれば利便性が高まると考えられます。
オーダー機能
薬の処方や各種医療処置、入退院管理をはじめ、リハビリや手術などのオーダーを効率的に管理します。カレンダー機能や薬品の名称検索も利用できます。
病棟機能
入院管理・看護記録・患者ケアの管理を一元化。部門機能では、検査予約の管理や実施状況を追跡し、記録や治療文書の作成が可能です。また、文書管理機能では、患者同意書やリストバンド作成などがスムーズに行え、院内の情報共有や他システムとの連携を強化。中小病院でも大規模な施設と同等のサービスを提供が可能になると考えられます。
Q2.中小病院の電子カルテの選び方とは?
中小病院の電子カルテ選定は、医療サービスの効率化と品質向上を目指す重要なプロセスです。適切なシステム選びは、医療従事者の作業負担を軽減し、患者ケアの質を向上させるために不可欠です。
選定の流れ
電子カルテを選ぶ際は、まずプロジェクトチームを組織し、医師・看護師・医療事務など各部門から意見を集めます。チームは、現場の課題を洗い出し、解決のための優先順位を決定。必要な機能を明確にできれば、適合する電子カルテの選出が可能になると考えられます。
重要な選定ポイント
効果的な運用を実現するためには、以下のポイントに着目してみるといいかもしれません。
- 操作性:直感的で使いやすいインターフェースを採用している電子カルテは、機会が苦手な方にも安心感を与えられるはずです。まずは、デモンストレーションを通じて操作性を確認し、実際の現場のニーズに合っているかを判断する必要があります。
- 標準化:地域で広く利用されている電子カルテを選ぶと、他の医療機関や薬局との情報共有がスムーズに行えると考えられます。患者の一貫したケアが可能になり、患者満足度の向上につながるはずです。
- 安定性:システムの安定性は、日常的な運用において重要です。導入前には、他の医療機関のレビューや評価を参考にし、信頼性の高い製品を選びましょう。
- 連携性:電子カルテは、効率的な医療業務の実施のためにも、他の医療システムや機器とスムーズに連携が必要であると考えられます。
電子カルテを選ぶ際は、医療機関の特定のニーズを満たしているかどうかがポイントになります。トライアル期間を利用して、実際の使用感を試すのも一つの方法で、最終的な判断材料として具体的なフィードバックが得られるかもしれません。
中小病院向け電子カルテシステムの導入を考えている方は、本ページに掲載している中小病院向け電子カルテシステムの早見表をご覧ください。
中小病院向け電子カルテシステムのまとめ
中小病院向け電子カルテは、効率的な患者管理・シームレスな情報共有・診療プロセスの最適化を実現してくれるシステムです。医師や看護師の業務負担が軽減され、患者ケアの質の向上が期待できます。また、カルテのデジタル化により、データの迅速なアクセスと正確な情報管理が可能になります。自院にあった電子カルテシステムを選んで、業務効率化と診療の質向上を目指してみませんか。
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- 本記事は、2024年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載各社の情報・事例をはじめコンテンツ内容は、現時点で削除および変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。