失敗例に学ぶスタートアップ失敗の原因と対策を解説

失敗例に学ぶスタートアップ失敗の原因と対策を解説
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「スタートアップの多くが失敗する」。残念ながら、これは事実です。スタートアップの際は、事前に現実的な分析に基づく事業計画を立て、失敗しないビジネスモデルを構築する必要があります。そして、失敗を回避するために有効なのは、先人たちの失敗から学ぶこと。

そこでこの記事では、スタートアップにおける失敗の原因と失敗例、失敗を回避するための対処方法を紹介します。

スタートアップ企業が失敗するのはなぜ?

スタートアップ企業が失敗するのはなぜ?

市場のニーズがない

最も多いスタートアップ失敗の理由は、市場のニーズに合っていないというものです。顧客が抱えている課題を解決できる商品・サービスの提供なくして、スタートアップの成功はありません。

顧客の問題を解決でき、その商品やサービスが市場に受け入れられている状態のことをプロダクトマーケットフィットと言います。市場にニーズがなければ、プロダクトマーケットフィットは起こりません。提供している商品・サービスと市場に整合性がなければ、スタートアップは失敗に終わってしまうでしょう。

顧客のニーズを正しく把握する必要がある

スタートアップ企業の多くは、自社で開発した商品やサービスに熱い想いを込めています。思い入れが強すぎて、顧客のニーズと乖離が起こることは少なくありません。自分たちでは革新的だと思っても、顧客に必要とされるかは別問題。商品・サービスの開発時は、自分たちの想いを重視するのではなく、顧客のニーズを的確に捉えることが大切です。

ターゲットとする顧客へのアンケート調査やカスタマージャーニーの手法で、顧客のリアルな意見を把握できればベストです。しかし、スタートアップ企業では、その資金力や知名度の低さから市場ニーズの有無を判断するのが難しい場合もあります。

顧客に直接意見を募れないとしても、起業メンバーだけの意見で商品開発を進めるのは危険です。第三者の意見も取り入れましょう。

その際に頼るべきなのは、先にスタートアップして成功した経営者やスタートアップ企業への投資経験が豊富な投資家。有益な情報と知識が得られます。

組織力が脆弱

スタートアップが失敗する要因には、組織力の脆弱さもあります。単に団結力ということではなく、スタートアップのフェーズにおいて必要な場所に適したメンバーがいるかということ。

大企業のように人材が豊富ではないスタートアップ企業において、適材適所の組織づくりは不可欠です。必要な場所に人がいなければ、実行力不足などの問題が生じて、スタートアップの勢いがつきません。

必要な人材を的確に集める

今どのような人材がいて、どのような人材が不足しているのかを的確に把握して、必要な人材を集めることが組織力アップにつながります。また、途中で主力メンバーが抜けてしまった場合は、新たな人材を確保したり、体制を見直したりなど、柔軟で迅速な対応をしなければいけません。

組織づくりの経験が乏しく、上手く組織マネジメントができないのなら、スタートアップを成功させた経験者などからアドバイスをもらいましょう。

組織力には、経営陣の問題もあります。アイデアのブラッシュアップやリサーチに十分な時間をかけない見込みの甘さ、スケジュールがずれ込むような実行力の甘さがあると、スタートアップは上手くいきません。しっかりとした戦略を立案し、それを実行できる経営力が必要です。

製品の問題

製品が売れるものでなければ、スタートアップは失敗します。売れる製品になっていない原因には、大きく2つの問題があります。
ひとつは、品質の問題です。製品の品質が、市場ニーズの求めるレベルまで洗練されていないケース。

サービスでも同じです。現代の市場は、どんなものであれ、高品質なものがあふれています。既存の製品と比較したときに、見劣りしてしまうようなレベルの製品は売れません。

もうひとつは、「顧客のニーズ意識」です。よく時代の先取りなどと言いますが、スタートアップにおいて、時代の先取りはおすすめできません。「今すぐに欲しい」と思われる製品でなければ売れないからです。

強く求められているものを提供する

仮に2~3年で市場のトップになれる見込みがある場合でも、その間の資金が持ちません。時代の先取りをして、顧客のニーズ意識が追い付いてくるのを待つスタイルのビジネスは、数年間商品が売れなくても耐えられる大企業がすることです。

スタートアップ期に市場に提供すべきなのは、「喉から手が出るほどほしい」「なくては困る」と思われるほど、強く求められている商品やサービス。「あると助かるけど…」というレベルでは、買ってもらえません。市場に求められている製品レベルにアイデアをブラッシュアップしていくことが大切です。

資金不足

資金不足もスタートアップの失敗にありがちな理由です。起業したばかりの時期は、事業計画通りに収益が伸びなくても不思議ではありません。収益が伸びないことを想定して、何年なら耐えられるのかを確認しておく必要があります。

途中で資金が不足しても、スタートアップ企業は資金調達が難しいでしょう。実績がなく、将来性も未知だからです。資金調達ができるようになるためには、投資家やベンチャーキャピタルが投資したいと思えるようなビジネスを構築する必要があります。

資金調達前に戦略を構築する

そのため、創業時は優秀なパートナーと組んで、技術的な障害を乗り越える力を得ることが重要。ベータ版を販売したら顧客の反応を見て、製品が売れ始めたらユーザーからのフィードバックを得て改良。プロダクトマーケットフィットが確立できれば、ユーザーの獲得法や収益性は証明されます。

資金調達が期待できるのは、この段階です。

起業家の中には、ここまでのビジネスモデルを確立する前に、熱意などを根拠に資金調達できると考えている人がいます。しかし実際には、しっかりとした戦略を構築して、市場ニーズと収益性を確信させられるステージまで一気に駆け上がることが大切です。

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海外におけるスタートアップの失敗事例

海外におけるスタートアップの失敗事例

HOMEJOY

掃除をしてほしい人とホームクリーナーをマッチングするアプリ事業で起業した会社です。手数料を25%と高めに設定したことで、質の低い仕事を提供するクリーナーを呼び寄せてしまったことが失敗の大きな要因。

ユーザーが望むクオリティとは合致しませんでした。さらに、アプリ上で依頼してもらうことによって収益が発生するビジネスモデルにもかかわらず、依頼者がクリーナーにオフラインで直接依頼する「プラットフォーム漏えい」に対処しきれなかったことで、継続利用するユーザーの割合は、立ち上げ当初の25%から半年後には10%を下回ってしまいました。

POLIANA

政治と金の流れを可視化するアプリ事業で起業。学校法人や学生向けにデータの可視化ツールの開発も手掛けました。しかし、無料版ツールに頼ってしまい、課金ユーザーを獲得できず、マネタイズに失敗。

仮説検証の段階で、ユーザーの声を十分に把握できないままサービスの提供をしてしまったことが大きな要因です。さらにスクール向け事業においては教育機関とのコネクションがなかったため、営業成果が上がらずこちらも失敗に終わります。

RDIO

2008年から2015年にかけて、検索やシェア機能がついた音楽配信サービスを提供していた会社です。ビジネスモデルは、広告なしの有料月額プラン。ライバル企業が同様のサービスを広告ありの無料サービスで提供していたため、ユーザーの獲得に苦戦を強いられます。

後に広告ありの無料サービスに移行したものの、時期が遅く改善に至りませんでした。CMOが数ヶ月不在の時期があるなど、組織力にも問題があり、マーケティングや事業の俯瞰を十分にできなかったことが失敗の大きな要因と言えます。

QBOTIX

太陽光発電装置を提供するサービス。2012年から2015年の3年で失敗に終わった会社です。ソーラーパネルの発電量を効率化する革新的な技術だったものの、リスクを恐れる公益電力市場においては受け入れられませんでした。

十分な顧客を獲得できないと分かったため、太陽光発電装置からライセンスやソフトウェアの販売に方向転換。しかし、その事業移行中のキャッシュフローが上手く回せず、従業員の給料を払えなくなり事業が継続できなくなりました。

GROOVESHARK

無料で音楽を聴けるアプリを提供していた会社で、2006年から2015年まで活動していました。失敗の原因は、罰金です。著作権問題により、違法配信とみなされ、730億円もの罰金を請求されました。

違法と判断されたため、アップルストア、グーグルプレイ、フェイスブックからはアプリが削除されます。デスクトップ版の開発をするも、ユーザーのほとんどがアプリを利用していたので、デスクトップ版に集客できませんでした。

SECRET

匿名で秘密を共有できるプラットフォームを提供。2013年から2年間で事業は廃止。大きな理由は、「匿名」という性質にありました。匿名のため、誹謗中傷など悪意の書き込みが発生。コミュニティの治安が悪化してしまいます。

ルールを定めるなど対処に乗り出しますが、改善されませんでした。経営者に長期的視点が欠けていたため、優秀な従業員は会社を去ってしまい、事業の継続ができず失敗に終わっています。

SONAR MEDIA

社内用コミュニケーションツールを2010年から2013年にかけて提供していました。顧客獲得の方法が費用対効果の悪い方法だったため、資金不足に陥ってしまいます。また、集客方法が悪かったため、顧客のフィードバックを受けられる体制が構築できず、ニーズをくみ取った改良ができませんでした。インキュベーターとの問題も起こり、資金調達もできず、事業を継続できなくなりました。

EVENTVE

ソーシャルネットワークを利用して、カンファレンスで獲得した見込み客をフォローアップする支援を提供するも、ターゲットから「便利ではあるかもしれないが必要不可欠ではない」という評価を受け、プロダクトマーケットフィットに至らず3年で事業を終了することになりました。

プロダクトの需要が高まっていない段階でセールスにコストをかけたのも失敗の原因です。状況を打破するため、知人参加の通知機能を追加したものの、知人がいるかどうかの確認のみに使われて、購入にはつながりませんでした。

スタートアップを失敗させない対策とは?

スタートアップを失敗させない対策とは?

市場ニーズの把握

ここまでに紹介してきたスタートアップが失敗する理由やスタートアップ失敗の事例を見ても分かるように、何より大切なのはプロダクトマーケットフィットです。市場ニーズを把握して、ターゲットが必要とするサービス・商品を提供しましょう。市場ニーズの把握といっても何をすればいいか分からない場合は、「3C分析」「PEST分析」「SWOT分析」「ファイブフォース分析」を行ってみてください。

3C分析

「3C分析」の3Cは、Customer(市場・顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)のことです。市場におけるニーズと自社の強み、そして競合サービスの分析を行い、事業計画やマーケティング戦略を決定します。差別化のポイントを見つける際にも使われる手法です。

PEST分析

「PEST分析」のPESTは、Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)です。自社を取り巻く環境を深く観察し、将来の影響まで見据えます。海外戦略を構築する際にも活用できる方法です。

SWOT分析

「SWOT分析」のSWOTは、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)のことです。自社の強みと弱みという内部環境のプラス要因とマイナス要因、そして外部環境のプラス要因とマイナス要因を分析します。今後起こり得るビジネスチャンスや課題も明確にすることが可能です。スタートアップ企業では重要な分析と言えます。

ファイブフォース分析

「ファイブフォース分析」は、競合や業界全体の状況と収益構造を明らかにする分析です。「フォース」とは、脅威という意味。自社にとっての脅威を明確にして、競争優位性を探ります。業界への新規参入の局面において、収益性の検討も可能です。スタートアップ企業では、必要不可欠な分析と言えます。

自社の強みを明確にする「バリュープロポジション」

バリュープロポジションとは、顧客が求めているが競合は提供できていない、自社だけが提供できる価値のことです。

バリュープロポジションのイメージ図

広告を出稿する際には、このバリュープロポジションを軸とすることで他社との差別化、またそれ以上の独自化が可能になります。

ぜひ商圏内のユーザーニーズや、競合のサービス内容やバリュープロポジションを分析したうえで、自社が勝つべくして勝てる市場を見つけてみてください。
【漫画で解説!】
バリュープロポジションとは

貴社のためだけの広告「ポジショニングメディア」

上述したバリュープロポジションを軸に、貴社と相性の良いユーザーを狙って集客できる広告手法として「ポジショニングメディア」があります。

ポジショニングメディアでは、貴社のバリュープロポジションを徹底分析した上で、その魅力がユーザーに伝わるようなストーリー構成・コンテンツ設計がされたWebメディアです。

まさに貴社を勝たせるためのサイトではありますが、やみくもに貴社をPRするものではありません。

なぜその強みが魅力的なのか、選ぶ基準になるのか、しっかり根拠のある情報をユーザーに伝えた上で貴社をPRします。だからその強みを魅力に感じる、購買意欲の高いユーザーの集客が可能になるのです。

スタートアップのポジショニングメディア戦略

Zenkenでは、ニーズ分析、市場分析、競合分析とあらゆる分析データをもとに、貴社のバリュープロポジションを明確にした上で、ポジショニングメディア制作を行います。

  • 自社の強みが明確にできていない
  • 広告戦略やマーケティング戦略を決めかねている
  • 広告手法の段階から他社と差別化したい

といった課題解決ができるWeb施策について、ご興味のある方は以下で詳しく解説しております。ぜひご確認ください。

キャククルのWeb集客施策
ポジショニングメディアとは?

資金繰りの確保

スタートアップでは、資金不足が致命傷になりかねません。資金繰りを確保しておけば、収益が上がるまで耐えられます。様々な資金繰りにアンテナを張りましょう。スタートアップで活用できる資金繰りには、「事業支援制度」「投資家」などのサポートがあります。

事業支援制度

公的な事業支援制度は、助成金や補助金です。返済不要ですが、要件を満たす必要があり、審査もあります。ハードルは高く必ずもらえるわけではありません。投資家の中には、スタートアップへの投資に積極的なエンジェル投資家がいます。

資金の他に、人脈構築や企業同士のマッチングなど様々なサポートをしてくれる可能性がありますが、悪質な投資家もいる点には注意が必要です。個人の投資家以外にも、ベンチャーキャピタルが出資してくれることもあります。ベンチャーキャピタルに出資してもらえると、多額の資金を準備できます。ただし、審査が厳しいことは覚悟しましょう。

日本政策金融公庫の融資

投資以外では、日本政策金融公庫の融資も活用できます。融資までに時間はかかりますが、低金利で融資期間も長いのがメリット。ただし、あくまで借金のため、返済が必要です。融資を受けたいなら、信用保証協会の利用を検討してみてください。中小企業が金融機関から融資を受けやすくなるようにサポートしてくれる公的機関です。金融機関から事業資金を借入する際に公的な保証人になってくれます。

クラウドファンディング

最近では、クラウドファンディングを活用するケースも少なくありません。インターネットのプラットフォームを通して、不特定多数から資金を集める方法です。寄付型や購入型、融資型など、様々な方法で資金集めができます。ただし、人々に共感してもらえるような事業でなければ資金は集まりません。また、インターネットで事業内容を公開するため、アイデアを真似されるリスクがあります。

ファクタリング

最後に、ファクタリングを紹介します。ファクタリングは、売掛債権がある場合に使える方法です。入金日まで日数がある売掛金を現金化できます。すぐに現金化できて簡単ですが、手数料が取られる点には注意してください。

人材マネジメントの徹底

スタートアップのときに見落としがちなのが、人材マネジメントです。人材不足問題に直面することが多いスタートアップ企業では、社員一人ひとりの影響が大きくなります。会社にとって必要な人材を把握して、不足していないか確認しましょう。

また、事業の成長とともに、適切な配置は変化します。人材の配置が適切かどうか、定期的に確認することが大切です。

組織のマネジメントにおいて、人材と同様に重要な資金。特に経営者や役員の給料は、安易に増額すると経営を圧迫しかねません。事業の見通しを厳しめに考慮して決めましょう。他にも無駄なコストが発生しないよう、組織をしっかり管理してください。

本記事のまとめ

スタートアップでは、資金不足が発生すると事業継続ができなくなってしまいます。

その大きな原因は、市場ニーズを上手く捉えられず、プロダクトマーケットフィットが達成できないことです。ニーズにフィットする商品・サービスを提供して、適切なマーケティングが実施できれば、早期に収益が発生しさらなるマーケティングを実施でき、事業を伸ばしていけます。スタートアップを失敗しないためには、市場ニーズの把握が重要ポイントです。

ところが、「市場ニーズの把握・分析が大切だと分かっていても、そのやり方が分からない」というケースも少なくありません。そんなときは、ワークシートを活用してみてください。

キャククルでは、スタートアップ期に必要な「市場ニーズ」「自社の強み」「競合」が分析できるワークシートを用意しました。ぜひお役立てください。

自社と競合他社を分析し「成果に繋げるワークシート」

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