新製品開発戦略の概要と成功のポイントを事例を交えながら解説

新製品開発戦略の概要と成功のポイントを事例を交えながら解説
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新製品開発戦略で、新たなビジネスチャンスをつかめる可能性があります。なぜかというと、これまでとは異なる視点を得られることがあるからです。このページでは、新製品開発戦略の概要を解説するとともに、成功のポイントや成功事例を紹介しています。新製品開発の参考にぜひご活用ください。

新製品開発戦略における概要と手法

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新製品開発戦略(=新商品開発戦略)は、定番のフレームワーク「アンゾフのマトリクス」に登場する戦略のひとつです。具体的には需要と供給がマッチングしている既存市場に、新しい製品を開発して投入する戦略を指します。例えば飲食店が顧客の利便性を高めるため宅配サービスを開始するなどが該当します。

新製品開発戦略は、顧客の購入頻度などを高める市場浸透戦略、既存製品を新規市場に投入する新市場開拓戦略よりも難易度が高く、新製品を新市場に投入する多角化戦略よりも難易度が低いと考えられています。新製品開発戦略を成功させるポイントとして以下の3点が挙げられます。

ユーザーニーズを理解し新製品開発を行う

高品質・高性能な製品を開発しても、ユーザーニーズとマッチしていなければ基本的にヒットすることはありません。まずはユーザーニーズを理解して、ユーザーニーズを満たすベネフィットを考えることが重要です。ユーザーニーズとはつまり、顧客の満たされていない欲求です。

ユーザーニーズを把握するには、既存製品のユーザーが抱えている悩みや不満などをリサーチすることが必要です。自社製品のユーザーを対象にリサーチする場合は、ヘビーユーザーを重視することをおすすめします。

ヘビーユーザー自社製品の利用回数などが多いので、製品のベネフィットや課題などを深く理解しているケースが多いです。リサーチ方法として、顧客アンケートやマーケティング会社のヒアリング調査などが挙げられます。

競合商品の改良品を新商品とする

競合他社の製品を改良して、自社の新製品を開発することもできます。競合他社を上回る製品を開発しなければならないので、徹底したリサーチと分析が欠かせません。

リサーチ・分析のポイントは、顧客から支持されている点と顧客が不満に思っている点とです。この2つを把握しながら製品に改善を加えれば、競合他社の製品を上回る新製品になる可能性があります。

ただし競合他社が改善できていない点を改善することは簡単ではありません。技術力や製品開発のノウハウを求められます。

今までにない斬新なモノを開発する

ユーザーニーズよりも自社の技術や方針を優先することで、魅力的な新製品を開発するのも一つのアプローチです。現在ではほとんどの企業がユーザーニーズを重視しているため、市場によく似た製品が出回っている場面が多いです。そこで今までないモノで顧客の興味を引けば、新製品が成功する可能性があります。

ただし自社の作りたいものを作るため、開発した新製品が売れるとは限りません。ユーザーニーズと大きく乖離している場合、ほとんど売れないことも考えられます。作りたいものを作れる点は魅力ですが、リスクのやや大きい手法といえるでしょう。斬新な製品を市場に出す上でもやはりニーズが大事で、顧客に「こんなものが欲しかったんだ!」と感じてもらうことが最大のポイントとなります。

新製品開発に役立つフレームワーク・考え方

新規製品を開発したいが、どのように取り組めばいいのかわからない…という方も多いのではないでしょうか。その場合、フレームワーク(特定の問題や課題に対処するための構造化された考え方)が役に立ちます。ここでは、新規製品の開発に付けるフレームワークをいくつか紹介します。

デザイン思考

デザイン思考は、顧客のニーズや問題に焦点を当て、共感し、創造的な解決策を見つけるプロセスです。デザイン思考に重要なのな、ターゲットとしているユーザーの観察と分析です。「スポーツ好きの20代の男性に向けた商品」という完成イメージを前提に製品を開発するのではなく、そのターゲット層の実際の行動や特性を調査し、それにフィットする製品を考案します。自社の競合他社の盲点となっている部分をターゲットとした製品開発が可能になるので、まだ埋まっていない市場のニッチを狙った開発に向いています。

アジャイル開発

アジャイル開発は、新規製品を企画から販売までの一連の流れをそのままで辿るのではなく、短期間で繰り返しプロトタイプ(試作品)をして、「企画をしながら開発する」アプローチです。大規模なプロジェクトを小さな部分に分割し、それぞれの開発サイクルで前段階の改善を図っていきます。顧客のフィードバックも取り入れることで、よりユーザーニーズに沿った製品の開発が可能になります。

デザインスプリント

デザインスプリントは、短期間(通常5日間)でアイデアを検証してからプロトタイプ(試作品)を作成し、テストするプロセスです。アジャイル開発に似ていますが、より短期間で実現可能なアイディアを生み出すことに特化したフレームワークになっています。SaaSなど、数日間である程度利用できる試作品が作れる業界に向いている手法です。

新製品開発のフロー

続いて新製品開発のフローを紹介します。

アイデアを考える

最初に新製品のアイデアを考えます。新製品のアイデアは、ユーザーニーズや自社の技術、ビジョン、既存のサービスなど、様々な方面から考えられます。ポイントはできるだけ多くのアイデアを考えることです。顧客の要望をデータベース化する、社内に提案制度を創設するなどに取り組むと、様々なアイデアを見つけやすくなります。

マーケットの分析

次にマーケット分析を行い、アイデアをふるいにかけます。具体的にはユーザーニーズ・市場規模・市場の成長性、競合他社のシェア・戦略・強みと弱み、自社のシェア・戦略・強みと弱みなどを分析して、最も見込みのあるアイデアを選びます。ユーザーアンケートを実施して、アイデア選定の参考にしてもよいでしょう。

企画を考える

アイデアを選定したら、全体のスケジュール、予算、製造方法、売上予測、利益予測などを企画します。この段階で、販売までのスケジュールと販売予定日、開発にかかる予算、外注先などを考えておくことが重要です。また売上予測・利益予測をだして、製品化できるアイデアであることを確かめておくことも欠かせません。

開発

企画を考えたら、設計開発部門などと協力しながら仕様を検討して試作品を製作します。開発では製造コストに注意しなければなりません。自社で製造できるものであっても、条件によっては外注の方が安いことがあるからです。選択肢を限定せず、製造コストを下げる方法を模索するべきといえるでしょう。

テストマーケティングの実施

試作品が完成したら、テストマーケティングで想定通り売れる製品であることを確かめます。テストマーケティングの方法として、エリアを限定したテスト販売などが考えられます。想定通り売れる製品は、計画通り製品化できます。

想定通り売れない製品は、改善または別のアイデアへの切り替えが必要です。いずれにせよ競合他社に市場参入のチャンスを与えないように、テストマーケティングを迅速に行う必要があります。

商品化

テストマーケティングで問題がなければ製品化へと移ります。製品化では、マーケティング戦略に基づきさまざまな施策を実施していきます。具体的にはパッケージや流通ルートなどを決定します。また広告施策も実施します。アフターフォロー体制も明確にしておかなければなりません。

発売後のフォロー

新製品を市場に投入したら、ユーザーの意見を集めて製品の改善に活かします。例えば価格やボリュームの見直し、パッケージの見直しなどが考えられます。

新規製品のプロモーションに活用できる施策ならコレ!

新規製品は開発段階も重要ですが、むしろ販売開始以降が本番です。後発の市場参入でもターゲット層にアプローチしやすい施策について詳しくしりたい方はぜひこちらのページをご確認ください。

差別化したマーケティングを実現!
ポジショニングメディアについて

新製品を開発するためのポイント

新製品を開発するためのポイント

新製品開発のフローが分かったところで気になるのが、新製品開発に成功するため意識したいポイントです。新製品の開発を控えている方は、以下の点に注意するとよいでしょう。

既存製品を活かす

新製品を開発するというと、ゼロから新しい製品を考えなければならないと考えてしまいがちです。しかし実際は既存製品を改良する形でも新製品を作れます。

例えば女性向けに販売していた製品に男性目線をプラスして男性向けの新製品として販売する、既存製品が抱えている課題を明らかにして課題を解決した製品を新しいコンセプトの新製品として販売するなどが考えられます。

既存製品をリサーチ・分析してアイデアを考えればよいので、ゼロから新しい製品を考えるよりも負担は少ないはずです。まずは自社の既存製品を見直すとよいでしょう。

自社の強みを活かす

新製品は自社の強みを活かす方向で検討します。新たに強みを生み出すよりも、すでにある強みを活かすほうが合理的だからです。強みの代表的な例として挙げられるのが技術力です。自社の技術力でユーザーニーズを充足する製品を作れば、ヒット製品になる可能性があります。

中小企業の場合は、自社の強みで大手がまねできない製品を作ることも重要です。ちなみに企業の強みは、これまでの延長線上以外のアイディアも考えることが大事です。

例えば富士フィルムは、カメラフィルムの製造過程で使っていた技術を応用して化粧品を開発しています。柔軟な思考で自社の強みを活かすとよいでしょう。

新製品開発戦略の成功事例

成功事例

最後に新製品開発戦略の成功事例を紹介します。

コカ・コーラの新製品開発事例

新製品開発戦略の成功事例として、コカ・コーラが挙げられます。コカ・コーラは、砂糖が気になるユーザーを対象に、ダイエット コカ・コーラを販売していました。

スッキリとした味わいは20~30代の女性を中心に評価されていましたが、オリジナルのコカ・コーラが好きなユーザーにはあまり評価されていませんでした。ダイエット コカ・コーラとオリジナルのコカ・コーラを比べると、微妙に味わいが異なったからです。

2004年頃から起きたゼロカロリー飲料ブームを受けて、コカ・コーラはオリジナルの味わいを変えずにカロリーをゼロにしたコカ・コーラ ゼロを新製品として投入します。

コカ・コーラ ゼロは、味にもこだわりたい健康志向のユーザーから支持させる人気製品となっています。ユーザーニーズを満たす製品を、すでに立ち上がっていたゼロカロリー飲料市場に投入した点がヒットの要因といえるでしょう。

マクドナルドの新製品開発事例

マクドナルドの新製品開発事例として挙げられるのは、3020年から発売されている「サムライマック」です。既存商品(バーガー)を活用しながら、マクドナルドを利用する頻度が少ない客層をターゲットとして開発事例です。サムライマックは「大人(特に30代~40代の男性)が求める満足感」に特化した商品で、肉と野菜のバランスの良さやソースにこだわったもの。

マクドナルドはサムライマックを2020年に期間限定で発売し、売れ行きを確認しました。テスト販売は良好だったためレギュラー販売を開始し、あっという間にヒット商品になりました。プロモーションに俳優の堺雅人を起用するなど、ターゲット客層に刺さるマーケティングも行っていたこともポイントの一つ。

また、マクドナルドは「サムライマック」以外でも、月見バーガーといった季節に合わせた商品開発や「アジアのジューシー」「ハワイやんバーガーズ」から、ゴジラバーガーのようなブランドとのコラボまで、期間限定の新商品の開発を頻繁に繰り返しています。

味の素の餃子の新製品開発事例

新製品開発戦略の成功事例として、味の素も挙げられます。味の素は、1997年に油をひかなくてもパリッとした食感を楽しめる冷凍餃子を開発しています。冷凍餃子は、9年連続で売上金額1位(全冷凍食品中)を記録するヒット製品となりました。

味の素は、製品の魅力をさらに高めるため、調理法についての実態調査を行いました。実態調査で明らかになったのは、多くのユーザーが目分量で水を注いでいることです。水を注ぎすぎると、冷凍餃子の魅力であるパリッとした食感を楽しめません。つまり多くのユーザーに、製品の魅力を届けられていないことが分かったのです。

実態調査の結果を受けて、味の素は油だけでなく水も使わずにパリッとした食感を楽しめる冷凍餃子の開発に着手し、油や水分を含ませた羽根の素を餃子底面に着けることで実現しています。また冷凍餃子をフライパンにのせて焼くだけで、羽根までできる付加価値もプラスしています。

改良の結果、冷凍餃子の売上は前年比130%アップとなりました。味の素はユーザーリサーチで自社製品の課題を見出し、改善した製品を既存市場に投入することで新製品開発戦略を成功させています。

花王のアタックZEROの新製品開発事例

花王もアタックZEROで新製品開発戦略に成功しています。アタックZEROは、花王の主力製品であるアタックを完全リニューアルした新製品です。

アタックZEROの訴求ポイントは、新開発の洗浄基材により従来の洗剤では落としにくい化学繊維に着いた皮脂などを落としやすいことと水の使用量が少ないドラム式洗濯機に適していることです。

新開発の洗浄基材を投入した理由は、花王の調査で9%のユーザーしか汚れ落ちに満足していないことが分かったからです。自社の技術力を活かし開発した新製品を、既存の洗剤市場に投入することで成功を収めています。

新製品開発戦略は専門家に相談

新製品開発戦略は専門家に相談

既存市場に新しい製品を開発して投入する戦略を新製品開発戦略といいます。市場浸透戦略、新市場開拓戦略よりも、難易度の高い戦略と考えられています。新製品開発戦略は、しっかりと準備を進めてから実施しましょう。

新製品開発戦略では、ユーザーニーズの把握、競合製品の分析、斬新なアイデアなどが重要です。基本的にはリサーチ結果や分析結果などをもとに、ユーザーニーズを満たす価値を提供できる新製品を開発することになります。

また、新製品を販売する上で重大となるのはマーケティングです。同じ製品でも、広告の内容や見込み顧客とのコミュニケーションによって結果が大きく変わるからです。インターネットを活かしたマーケティングについて悩んでいる方は、キャククル運営元のZenkenへお問い合わせください。120以上の業界での集客経験をもとに、最適な施策をご提案いたします。

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