製造業のサービス化「サービタイゼーション」の背景・戦略・事例とは

製造業のサービス化「サービタイゼーション」の背景・戦略・事例とは
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サービタイゼーション(製造業のサービス化)とは

これまで製造業において、主流となっていたビジネスモデルは単純に“製品を製造し販売すること”でした。しかし近年では製品そのものではなく“サービスとして顧客に提供すること”で売り上げを上げることが主流になってきています。

これを「サービタイゼーション」と言い、モノで売っていたビジネスからコトで売る時代へと変化しつつあります。ではなぜ、サービタイゼーションが注目されはじめているのでしょうか。

サービス化が注目され始めた背景

先ほども述べたように、サービタイゼーションが注目されはじめている一番の理由は、あらゆる市場の需要がモノからコトへと変化しているところにあります。

以前は、「良いモノ」を作りさえすれば商品が何年も安定的に売れることが可能でした。しかし、技術の進展や市場の変化が早く、顧客のニーズが多様化している現代では、そのような「良い商品の一人歩き」を実現すうることがなかなか難しくなっています。

今まではモノづくりによって売り上げを上げてきましたが、コトづくりにシフトチェンジすることで製品に付随する「付加価値」が上がり、競合他社と差別化を図ることができるようになります。

サービタイゼーションを更に後押ししているのは、IT技術の進化とIoT時代の到来です。これらの急速な進展が、サービスが中心となしている新しいビジネスモデルを可能にしています。

サービタイゼーションの重要性

サービタイゼーションの重要性
サービタイゼーションが注目されはじめている背景が分かりました。次は、サービタイゼーションはどうして重要なのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

製品のコモディティ化

コモディティ化とは、付加価値の高い製品の市場価値が低下し、一般的な製品として扱われるようになったことを言います。もともとコモディティには「商品」の意味があり、ビジネス業界においては「一般化」としても使われている言葉です。

コモディティ化は、ある製品が広く普及した証拠として捉えることもできますが、製品を生産している企業にとってはは望ましくないものです。なぜかというと、製品のコモディティ化によって価格が下がってしまいまうからです。さらに、顧客が「どの会社のモノも同じ」と認識するようになるので、製品自体による競争力が落ちてしまいます。

サービタイゼーションで、自社の製品のコモディティ化が防止できます。修理、スペアパーツの提供、製品をもっと活かすためのデータ収集・提供といったサービスで、顧客に「購入したモノ以上の価値が手に入れられる」と感じてもらえます。それによって自社の製品が長期にわたって選ばれ、売上が向上します。

「モノ消費」から「コト消費」への変化

これまでの製造業は、モノをつくり売り上げを上げることが目的とされていました。しかし競合他社と差別化や多様性などが注目されはじめている昨今、コトづくりで売り上げを上げることが重要視されるようになっています。

モノ消費からコト消費への移行の原因は、現代人のモノに対する価値や意識の低下です。モノが少なかったひと昔前までは、良いモノをつくって売ることが重要視されていました。

しかし経済の発展やインターネットの普及などによって手軽にモノが入手できるようになった今、人々のモノに対する意識は大きく変化しています。誰でも使っている、普遍的で良いモノよりも、「自分に最適化されたモノ」が求められています。

また「モノ消費」では、一回お金を払ってある商品を完全に「自分のモノにする」という考え方が一般てきです。しかし、技術の進展や市場の変化が早くなっている今では、商品の市場価値も著しいスピードで低下している場面が少なくありません。そこで、商品自体の市場価値の低下を補うサービスが求められています。

サービタイゼーションは、顧客の「価値が落ちないモノ、あるいは自分に最適化できるモノが使いたい」というニーズに応える解決策として注目されています。

戦略的にサービタイゼーションに取り組む際に不可欠な「ICT」

戦略的にサービタイゼーションに取り組む際に不可欠な「ICT」
サービタイゼーションに取り組むためには「ICT」が欠かせません。ICTとは「情報通信技術」のことで、インターネットで検索をしたりSNSで情報を集めたり、通販をするときに用いられています。サービタイゼーションではこのICTの概念が不可欠です。なぜかというと、ICTによって顧客に関するデータを「見える化」して膨大なデータを分析し、情報提供することで製造効率を上げることができるからです。

また製品にIoT技術を埋め込むことで、稼働状況を把握しデータ収集することが可能となります。収集されたデータは、顧客に提供する、商品に付属しているサービスで活用することができます。

コトづくりをするうえでICTやIoTなどは必要不可欠であり、これなくしてはサービタイゼーションには取り組めないと言っても過言ではありません。

製造業がサービタイゼーションに取り組むメリット

製造業がサービタイゼーションに取り組むメリット
これまで製造業においてサービタイゼーションの必要性を解説してきました。ここでは製造業がサービタイゼーションに取り組むとどんなメリットがあるのかを解説します。

競合との差別化が可能

コトづくりを重視することで製品の付加価値が着目されるようになり、同じ製品であっても付加価値が異なると競合他社との差別化が図れるようになります。製品の性能や価格に加えて関連サービスという、新しい差別化のチャンスができるわけです。そのためにはICTやIoTなどの技術を取り入れ、サービスに展開できる価値のあるデータを収集しなければいけません。

サービタイゼーションとICT・IoTは深い関係があるため、積極的に取り組むことで大きく差別化し、高収益と繋げることができます。差別化は、サービタイゼーションにおいて一番のメリットと言えるでしょう。

顧客満足度の向上

サービタイゼーションが行われた多くの事業は、顧客が利用している製品の種類、あるいは製品の利用頻度に応じて課金を行うシステムになっています。

このシステムを活かして商品の付随サービスにバリエーションを持たせれば、製品の使い勝手がよくなり、顧客満足度が向上する状況が作れます。製品自体に加えて、ニーズに合わせてのサービスの利用で満足をした顧客は長期にわたってサービスを利用し、その長期的な利用が自社の売り上げに直結します。

“安くても価値のある良い製品”を求める時代だからこそ、サービタイゼーションは顧客が満足しやすいのです。

顧客ロイヤルティの獲得

付加価値のある製品には当然多くのファンが付きます。逆に付加価値が低いものは、最新の技術で合っても注目を集めにくい傾向にあります。

たとえば4Kテレビで考えると分かりやすいでしょう。確かに従来のテレビに比べ品質が高く魅力的ですが、視聴するためには4K放送専用チューナーが必要になります。モノは良いけれどそれに付随するものがマイナスなのです。そのため発売当初の予想以上に消費者が少なく、あまり価値を感じられていないと言われています。ブルーレイレコーダーよりもDVDプレイヤーのほうがいまだに消費者が多いのにも同じような理由があります。

サービタイゼーションはサービスを重視していますから、製品自体のスペックはそれほど高くなくても製品品質が高いため多くのファンが付きます。これは顧客ロイヤルティの獲得にも繋がるでしょう。

安定した収益の確保

製品をサービス化するサービタイゼーションは、高品質で信頼できる製品を必要最低限のスペックで顧客に提供するため一般人でも気軽に製品の利用ができ、それが高収益へと繋がります。また随時顧客ニーズに合わせて変化しているので、安定した収益も確保することができるようになります。

単に良いモノだけでは価値が下がり収益にもマイナス影響を与えますが、製品価値が高いものは顧客と長期的に繋がれるため収益も安定しやすいのでしょう。

製造業がサービタイゼーションに移行する流れ

製造業がサービタイゼーションに移行する流れ
製造業がサービタイゼーションに移行する段階は4つに分けられます。ここではそれぞれの段階について簡単に解説します。

1段階目:分裂

分裂の段階では、ほとんどのデータが社内が分断され、それぞれの部署で手作業で管理されています。旧式な企業資源管理システムや方法で、製品の運用パフォーマンスが不透明となっています。

2段階目:サイドカー

バックオフィスシステムとフロントオフィスシステムが標準化されている状態です。バックオフィスシステムとは会計や経理、総務などのサービスを支援するシステムのことで、フロントオフィスシステムは営業部門やコールセンターなど、顧客と直接関わり柔軟に対応するシステムのことを言います。

「分裂」段階と比べると効率が上がり、初歩的なサービスも実施されていますが、データの管理が依然として分裂されているため、その効果がまだ限定的です。

3段階目:結合

バックオフィスシステムとフロントオフィスシステムがリアルタイムデータで繋がっている状態です。社内のデータ収集・管理が充実しており、顧客への価値の高いサービス提供の実施を可能にしています。

4段階目:ボーダーレス

高度な技術で、バリューチェーンのあらゆる要素の間の繋がりが実現されている状態です。顧客、サプライヤー、ビジネスパートナー、そして場合によっては競合者もデータを共有し、製品の生産やサービスの提供に活かせます。

こちらの過程はIDCのネブローニ氏が提唱しているもので、適切に行われているとサービタイゼーションが成功すると言います。しかしすべての段階をクリアしている企業は少なく、なかでも4段階に到達している企業はたった3%です。ほとんどは2段階・3段階までしか到達できていません。

日本におけるサービタイゼーションの成功事例

日本におけるサービタイゼーションの成功事例
海外では当たり前のように取り組まれているサービタイゼーションですが、日本ではどんな成功事例があるのでしょうか。いくつか紹介します。

株式会社クボタ

クボタは有名な農機メーカーです。国内外問わずトップレベルを誇っており、サービタイゼーションに取り組むことで農地管理や作業記録の自動化などを実現しています。また「KSAS(クボタ・スマート・アグリ・システム)」と呼ばれるシステムを提供。

このシステムは農機とIoTを連携しており、データ収集機能とセンサー付きで前述した管理や記録が可能になります。インターネットの地図データを活用しているのも特徴です。これにより新たな収益を生み出しています。

ダイキン工業株式会社

ダイキン工業は世界各国で展開している大手空調メーカーです。IoTプラットフォーム「Daikin Global Platform」を開発・提供しており、クラウドを使って自身が販売している空調設備の稼働状況を一元管理しています。

このプラットフォームで取り扱っている空調機器を、インターネットを通して世界中へと繋いでいます。さらに管理しているデータを基に、遠隔点検や故障検知などのサービスも提供しているのが特徴です。

古野電機株式会社

古野電機が最初に取り組んだサービタイゼーションの事業は「生化学自動分析装置」です。これは医療機器のひとつで、血液中の脂質・糖質などを精密測定するものです。

次にクラウド上にマスキングした状態の個人情報を蓄積し、MicrosoftDynamics365からSNSと連携することで付加価値を上げました。これにより顧客満足度も向上しています。

さらにクラウドに溜まったデータはAIで分析、装置で使用した試薬をMicrosoft Power BIで稼働状況を分析するなど、サービタイゼーション以外のビジネスにも参入しています。

製造業ではサービタイゼーションが必要不可欠

製造業ではサービタイゼーションが必要不可欠製造業において、これまでのモノづくりではなくコトづくりが重要になることが分かりました。コトづくりを重視することで製品のサービス化が高まり、他社との差別化やマーケティングに大きく影響します。そのためには製品に付随する付加価値に着目し、顧客(消費者)に伝えていくことが大切でしょう。

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