薬局DXとは?導入メリットやDX事例を紹介

薬局DXとは?導入メリットやDX事例を紹介
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政府による「かかりつけ薬局」の促進により、薬局やドラッグストアに求められる機能の幅が広がる中、薬局業界は薬剤師不足などの問題を抱えています。

上記のような課題を解決し、薬局で働く薬剤師の業務効率化に役立つのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

しかし、電子処方箋やオンライン服薬指導など、デジタル化に取り組む薬局が増えつつある中、まだまだDX化に踏み切れない薬局が多いという現状があります。

今回は、薬局がDXを導入するメリットについて、事例と合わせて解説していきます。これから自局にDX導入を検討している薬局運営者の方は、ぜひ参考にしてください。

薬局DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

近年、日本国内でもDX化に取り組む企業が増えてきましたが、海外と比べて日本のDX化はまだまだ遅れているのが現状です。DX推進が急がれる理由の一つに「2025年の崖」という問題が挙げられます。

「2025年の崖」とは、経済産業省が提起した日本経済に対する警鐘のことです。その内容は、今後日本企業がDXを推進していかなければ、2025年以降、日本経済に年間で最大約12兆円もの損失が起きる、というものです。

日本の企業では、ブラックボックス化した既存システムが問題となっており、業界を問わず、レガシーシステムからの早期脱却が課題となっています。そして、この問題は薬局を含む医療業界も例外ではありません

そもそも、DXとは?

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、ビジネス領域においては「デジタル技術を活用して、業務フローの効率化やビジネスモデル・組織体制の変革を実現する」という意味合いで使われます。

薬局におけるDXは、「デジタル化によって、薬局で働く薬剤師の働き方改善や作業の効率化・自動化、来局者の利便性向上を実現すること」を指します。

DXを導入することで、患者が利用しやすい薬局になるだけでなく、薬剤師が働きやすい環境づくりに繋がるのです。

薬局にはなぜDXが必要なのか

なぜ、薬局ではDXが必要とされているのでしょうか。薬局にDXが求められる背景として、医療業界が抱える以下のような課題が挙げられます。

薬剤師の人材不足

現在、薬剤師の人数は増加傾向にありますが、高齢化や医薬分業の影響により、薬局やドラッグストアの数も増加していることから、薬剤師が不足している薬局も少なくありません。

また、薬剤師は比較的女性の割合が高い職種であることから、出産などでやむを得ず休職や時短勤務をする方も多く、これも薬剤師が不足している理由のひとつとなっています。

薬剤の売上減少

日本では急速な少子高齢化の進行による医療費増大を受けて、医療費を抑えるために、今後診療報酬や薬価の引き下げが行われると予測されています。

この影響を受けた売上減少に伴い、人件費の削減を余儀なくされ、結果として薬剤師が不足するのです。

かかりつけ薬局としての必要性

近年、高齢化の影響から、厚生労働省が「かかりつけ薬局・薬剤師」を推進しています。

そして、かかりつけ薬局の推進によって、患者の服薬情報の一元管理や24時間対応など、薬局の役割の幅が広がっているのです。

かかりつけ薬局として機能するためには、業務の自動化や人材の確保など、これまで以上に薬剤師の業務負担を減らす工夫が必要とされます。

薬局におけるDXとは実際どのようなもの?

上記のような背景から、DX化が求められる薬局業界。医療業界のDX化は待ったなしと言えますが、このような状況下でもDXに積極的に取り組んでいる企業は存在します。

ここからは、薬局のDX導入事例をいくつか確認していきましょう。

BIツール「Domo」の導入(クオールホールディングス株式会社)

全国に約800店舗の調剤薬局を展開するクオールホールディングス株式会社は、ドーモ株式会社が提供するクラウド型BIツールの「Domo」を導入しました。

これまでは、データの収集やレポート作成、店舗の損益情報の作成などは全て手作業で行っていたため、膨大な時間と手間がかかっていました。

Domoを導入したことで、手作業で対応していたデータ収集や加工処理を自動化。レポート作成の工数も大幅に削減することができました。

※参照元:クオールホールディングス株式会社公式サイト:https://www.qolhd.co.jp/

「DX認定取得事業者」への認定(日本調剤株式会社)

全国で調剤薬局を展開する日本調剤株式会社が、調剤薬局業界で初めて「DX認定取得事業者」に認定されました。

DX認定制度は、デジタル技術を活用した経営ビジョンの公表に必要な事項をまとめた「デジタルガバナンス・コード」を基に、経済産業省がDX化に積極的に取り組んでいる事業者に対して認定を行う制度です。

日本調剤株式会社では、オンラインでの診療・服薬指導システムや医薬品情報プラットフォームの導入など、2021年8月から本格的にDX戦略を策定・公表し、DX推進に取り組んでいます。

※参照元:日本調剤株式会社公式サイト:https://www.nicho.co.jp/corporate/

薬局DX導入のメリット

薬局にDXを導入するメリットとして以下のようなことが挙げられます。

調剤業務の自動化

調剤業務は大部分が決められた作業内容となるため、自動化しやすい業務のひとつです。しかし、処方箋は患者の体調や体重に合わせて、個々に薬の微妙な分量調整が必要となります。

近年、このような薬量の調整も、蓄積されたデータを基にAIによって自動で調整可能なツールも開発されています。

具体的には、分包された薬の種類、分量に間違いがないか、AIの画像認識技術によって最終確認を行うといったことが期待されます。

新人薬剤師の教育サポート

服薬指導は患者ごとに対応が異なるため、薬剤師が行う必要がありますが、AIによって業務をサポートすることは可能です。

ベテランの薬剤師と新人の薬剤師では、服薬指導のノウハウに大きな差があります。

そこで、患者ごとに服用している薬や服用歴などの情報を蓄積し、AI技術によって即座に参照できるシステムを導入することで、経験の浅い薬剤師もベテランの薬剤師と変わらない服薬指導を行うことができます。

薬局DXで業務配分はどう変わるのか

先述の通り、薬局内の業務にAIを始めとしたデジタル技術を取り入れることで、少人数での薬局運営が実現可能です。

現在の薬局は、薬剤の調製を始めとした対物業務の占める割合がまだまだ多いのが現状ですが、DX導入によって、将来的には患者のアフタフォローといった対人業務の割合を増やすことが理想とされています。

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画像引用元:Musubi公式サイト(https://musubi.kakehashi.life/yakkyoku-dx)

具体的には、DXを活用することで以下のようなことが期待できます。

患者ごとのより細やかな服薬指導

薬剤の調整や監査といった対物業務をICTの活用によって効率化することで、患者一人ひとりの服薬指導の時間をより多く確保できるようになります。

また、調剤情報のデータ化によって、リアルタイムで患者の調剤状況が把握できるようになれば、その時の患者の状況に応じた丁寧な服薬指導が可能となります。

在宅訪問での薬学管理対応

データをクラウド上で管理することで、在宅訪問での薬学管理をより簡単に行うことができます。

医療機関へ効率的なフィードバック

電子処方箋ネットワークの活用によって、処方内容の確認を円滑に行い、医療機関へもスムーズに共有が可能となります。

また、電子処方箋を活用することで、薬局で疑義照会などの調剤業務を実施した結果を医療機関にフィードバックして、医療機関側は次の処方情報の参考にするといった、薬局と医療機関での効率的な情報共有の実現が期待できます。

※参照元:厚生労働省「薬局薬剤師DXの推進について」(https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000910847.pdf

ドラッグストアでもDX活用が進んでいる

ここまで薬局のDX推進について説明してきましたが、ドラッグストアでもDXの活用は進んでいます。具体的には、ドラッグストアのDX化として以下のようなことが挙げられます。

独自アプリの活用

現在、アプリを導入するドラッグストアが増えています。ライフログ機能や予防医療プログラムの配信など、アプリを通して、ドラッグストア利用者向けのサービスの提供が可能です。

業務の自動化

顧客の購入状況をAIによって情報収集・分析することで、商品の売れ行き状況に基づいた在庫管理や発注の自動化が実現できます。

作業の効率化によってスタッフの業務負担を軽減できるだけでなく、常に顧客のニーズに合わせた商品ラインナップを用意できるため、売上の向上にも繋がります。

オンラインでの服薬指導

デジタル化によって、オンラインで処方箋の送信、服薬指導が可能となります。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用することで、保険証の資格情報の確認を窓口で簡単に完了できるようになりました。

これらによって、保険証の資格情報の入力や保険証の切り替えといった業務負担を減らすことができます。また、利用者の同意を得て過去の服薬情報を取得すれば、これを服薬指導や服薬期間中のフォローに活用することも可能です。

薬局DXの実現に役立つツール

薬局DXツールイメージ画像
ここからは、薬局DXに役立つツールをいくつがご紹介します。これからDXの導入を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。

会社名 特色
株式会社カケハシ 電子薬歴・服薬指導システム「Musubi」を提供
メドピア株式会社 薬局と患者を繋ぐかかりつけ薬局支援サービス「kakari」を提供
株式会社ファーマシフト 患者とのコミュニケーションをサポートするLINEサービス「つながる薬局」を提供

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薬歴システム「Musubi」(株式会社カケハシ)

musubi
画像引用元:Musubi公式サイト(https://musubi.kakehashi.life/)

「Musubi」の特徴

株式会社カケハシが提供している「Musubi」は、薬剤師の作業効率化をサポートする電子薬歴・服薬指導システムです。Musubiでは、電子薬歴での業務効率化をはじめ、アプリを通して服薬のフォローや薬局経営に必要なデータの分析など、薬局DXを一括でサポート。

Musubiでは、タブレットなどで患者に画面を見せながら服薬指導が可能で、画面タッチで簡単に薬歴作成を行えます。処方時だけでなく、LINEから自動で質問を配信するなど、服薬期間中のフォロー機能も充実。

クラウド型の経営データ管理機能やAIの来局予測に基づいた在庫管理機能など、豊富な機能で薬局運営に必要なバックオフィス業務までしっかりサポートします。

「Musubi」の料金プラン

Musubiの料金プランは公開されていません。詳細な料金は公式サイトよりお問い合わせください。

「Musubi」導入企業の口コミ

Musubiを導入している薬局の口コミは以下の通りとなります。

「患者さんとつながることができた」と心から思った事例もあります。吸入薬使用後に発作と吸入後の気分不快感が現れた患者さんがいらっしゃって、Musubiを通じてコミュニケーションをとり、詳しく症状の確認をしました。その後、すぐにトレーシングレポートで医師に次回処方の変更を提案しました。すると、医師からも提案の受諾とともに患者さんへのケアについて指示を受けて、患者さんに最善の対応をすることができたんです。Musubiがなければこのような事例はうまれなかったでしょうし、本当に患者さんとつながれた、と感じました。引用元:https://musubi.kakehashi.life/case/221007_motomiya

クラウド型の電子薬歴が増えてきたということも耳にしていて、いくつかのシステムを検討しましたが、最終的に『Musubi』に決めたのは「健康アドバイス」の充実度にありました。一人薬剤師の体制は知識のアップデートも大変ですし、小児の分野に対する知見が不足しているという課題もあったんです。服薬指導をしながら学べる状態はありがたいですね。引用元:https://musubi.kakehashi.life/case/220902-kogumayakkyoku

企業概要

  • 会社名:株式会社カケハシ
  • 所在地:東京都中央区築地4丁目1-17 銀座大野ビル9F
  • 電話番号:03-5357-7853
  • URL:https://www.kakehashi.life/

薬局コミュニケーションサポートアプリ「kakari」(メドピア株式会社)

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画像引用元:kakari公式サイト(https://kakari.medpeer.jp/)

「kakari」の特徴

メドピア株式会社が提供する「kakari」は、薬局と患者を繋ぐかかりつけ薬局支援サービスです。kakariアプリを通して、患者は薬局情報や服用中の薬情報の確認ができて、自薬局専用アプリとして活用が可能。

アプリから処方箋の送信もできて、患者は薬局での待ち時間を減らすことができます。薬局側では、kakariで自動メッセージを設定しておくことで、服用期間中も適切なタイミングで患者にフォローを入れることができるため、個別対応の負担を軽減します。

「kakari」の料金プラン

kakariの料金プランは公開されていません。詳細な料金は公式サイトよりお問い合わせください。

「kakari」導入企業の口コミ

kakariを導入している薬局の口コミは以下の通りとなります。

kakariは入れておけば処方せんが勝手に増えるとか、患者さまの効率化とか、そういった待ちのツールでは全然無く、いわば薬局の方から積極的にアプローチして、働きかけて、関係性を築くきっかけになってもらうようなツールです。その結果、患者さまとコミュニケーションできる方法が1つでも増えていくので、薬局にとってありがたいなと思っています。引用元:https://kakari.medpeer.jp/cases/wakaba.html

kakariがアトム薬局にとって欠かせないのは、地域住民の「かかりつけ」として元々存在してきた薬局と同じ目線で作られているからです。一つ一つの機能の良し悪しではなく、かかりつけ薬局として必要なサポートが一通りそろっているのが、kakariのメリットだと思います。引用元:https://kakari.medpeer.jp/cases/ph-yamato.html

企業概要

  • 会社名:メドピア株式会社
  • 所在地:東京都中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア9階
  • 電話番号:03-4405-4905
  • URL:https://medpeer.co.jp/

患者とのコミュニケーションをサポートするLINEサービス「つながる薬局」(株式会社ファーマシフト)

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画像引用元:つながる薬局公式サイト(https://psft.co.jp/pharmacy/)

「つながる薬局」の特徴

株式会社ファーマシフトが提供する「つながる薬局」は、薬局と患者のやり取りを簡単にLINE上で行うことができるサービスです。

患者は、つながる薬局をLINEでお友達追加して、いつも利用している薬局を選択後、LINEから処方箋を送信することができます。薬の用意が完了すると通知が届くため、患者は待ち時間なしで薬を受け取ることができます。

さらに、利用薬局を登録しておくことで、処方箋送信以外にも、オンライン服薬指導や決済機能などを、すべてLINE上で使用が可能です。薬局側は、気軽にLINEから患者とコミュニケーションが取れるため、薬局のかかりつけ化を促進できます。

「つながる薬局」の料金プラン

つながる薬局の料金プランは公開されていません。詳細な料金は公式サイトよりお問い合わせください。

「つながる薬局」導入企業の口コミ

つながる薬局を導入している薬局の口コミは以下の通りとなります。

メッセージテンプレートの活用で、患者さんへの説明時間を削減、 患者さん発信のメッセージも増えたことで技術料の加算にもつながりました。引用元:https://psft.co.jp/pharmacy/interview/paruonesuto.php

調剤完了の時間の目安や、来局される前に欠品の連絡などがしやすくなり助かっています。FAXと違い、双方向のやり取りができる点が大きなメリットと感じています。引用元:https://psft.co.jp/pharmacy/interview/haiyaku-nagomi.php

企業概要

  • 会社名:株式会社ファーマシフト
  • 所在地:東京都港区虎ノ門1丁目1番18号 ヒューリック虎ノ門ビル8階
  • URL:https://psft.co.jp/

薬局DXまとめ

薬局DXまとめイメージ画像
今回は、薬局DX導入のメリットを事例と合わせて解説してきました。薬局業界は急速な高齢化の影響により、求められる役割が増える一方で、薬剤師不足などの課題も抱えています。

薬局の業務効率化と人材不足の解決に、DXの導入は必要不可欠です。紙の処方箋など、アナログ業務を少しずつデジタル化することで、患者の利便性が上がるだけでなく、薬剤師の業務負担軽減も実現できます。

薬剤師と患者間のコミュニケーションをサポートするDXツールも多く提供されているため、自局の課題を明確にした上で、最適なツールの導入を検討してみましょう。

薬局DXと親和性の高いコンテンツマーケティング施策

かかりつけ薬局として地域包括ケアを支える存在になっていくためには、医療機関との連携はもちろんのこと、「この地域で相談できる薬局といえばここ」と利用者たちに認識してもらう必要があります。

大手ドラッグストアやスーパー、コンビニなどにも薬局が入り、ついにはあのAmazonが薬局分野に進出する、というニュースも出ています。

大手や外資系に顧客を持っていかれないようにするには、利用者と医療機関をつなぐ「ハブ」としての役割を果たすしかありません。

薬局内だけでこのような認知を広めることはなかなか難しいため、スマホ時代にマッチしたインターネット上で地域住民にリーチしていく必要があります。

Zenkenではクライアントの強みに則したWebマーケティング戦略の提案を得意とし、いままでに120業種・8,000サイトを超えるメディアの制作・運用を行ってまいりました。

その中には、医療機関も多く含まれます。

Webマーケティングの知識がなくどこから着手すればいいかわからない、という場合は、一度弊社までご相談ください。

業務効率化のDX導入検討と並行して、薬局と地域住民をつなげる情報発信のお手伝いをさせていただきます。

下記フォームに必要事項をご記入いただき、お送りください。

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