ターゲティングとポジショニングの違いとは?STP分析の基本と実践手順を解説

ターゲティングとポジショニングの違いとは?STP分析の基本と実践手順を解説

STPは研修や書籍で学んだのに、ターゲティングとポジショニングの違いが実務でぼんやりしている方は少なくありません。「誰に売るかを決める」のがターゲティングで「どう差別化するかを決める」のがポジショニング——と覚えていても、具体的にどちらから始め、何を決めれば次のステップに進めるのかがわからないと、せっかくのフレームワークが机上の理論で終わってしまいます。

ターゲティングとポジショニングの違いをひと目で確認

2つを3軸で比較する

ターゲティングとポジショニングは、どちらも「誰に・どう売るか」というマーケティング戦略の核心部分を担います。しかし目的・対象・使う手法がそれぞれ異なります。下表で3つの軸から比較してみましょう。

比較軸 ターゲティング ポジショニング
目的 誰に売るかを決める 競合に対してどう差別化するかを決める
対象 市場内の顧客セグメント 自社の市場における立ち位置
代表的な手法 6R分析・無差別型・差別型・集中型の選択 購買決定要因の抽出・ポジショニングマップの作成
STP内の順番 セグメンテーション(S)の後 ターゲティング(T)の後

定義から整理します。ターゲティングとは、自社の商品・サービスを販売したい顧客を決める活動です。セグメンテーションで分割した市場全体の中から「どのグループに集中するか」を選択します。一方、ポジショニングとは、選んだターゲットに対して「自社をどう位置づけるか」を決める活動です。競合他社と比較したときの優位点や独自の価値を明確にし、ターゲットの頭の中に自社の立ち位置を刻み込みます。

2つは目的も対象も異なりますが、「ターゲティングで誰に売るかを決め、ポジショニングでどう見せるかを決める」という一連の思考の流れでつながっています。どちらか一方だけでは、マーケティング戦略の精度は上がりません。

STP分析の中でどの位置にあるか

ターゲティングはSTPの「T」、ポジショニングは「P」にあたります。必ずS(セグメンテーション)→T(ターゲティング)→P(ポジショニング)の順番で進めることが鉄則です。

セグメンテーションで市場をグループに分割し、ターゲティングでその中から注力するグループを選び、ポジショニングで選んだグループへの自社の差別化ポイントを決める——この順番が崩れると、どんな手法を使っても戦略が機能しません。「よくある失敗パターン」の章でその具体的なリスクを解説しますので、ここでは順番の重要性だけを先に押さえておいてください。

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マーケティングのフレームワークであるSTP分析

STP分析は、「近代マーケティングの父」と呼ばれる経営学者フィリップ・コトラーが体系化したマーケティングプロセスの核心部分です。マーケティング戦略・活動は、一般的に次のプロセスを経て展開されます。

STP分析の全体像

マーケティングプロセス 意 味
① R―Research (リサーチ) 市場・競合・自社の分析
② S―Segmentation (セグメンテーション) 分析結果に基づいて市場をセグメント(顧客層)に分割
③ T―Targeting (ターゲティング) 顧客層から自社のターゲットを選択
④ P―Positioning (ポジショニング) 市場における独自の立ち位置(ポジション)を確立
⑤ MM―Marketing Mix (マーケティングミックス) マーケティング戦略の立案
⑥ I―Implementation (インプリメンテーション) 立案したマーケティング戦略の実行
⑦ C―Control (コントロール) マーケティング活動の管理(評価・改善)

このプロセスは「R・STP・MM・I・C」と略されます。STPはプロセスの②〜④にあたり、リサーチ(R)で市場・競合・自社の状況を把握した後に実施します。そしてSTPの結果がマーケティングミックス(MM)すなわち4P戦略の土台となります。STPの精度が高まるほど、広告・コンテンツ・営業施策のすべてに一貫性が生まれ、マーケティング全体の効率が上がります。

S→T→Pを順番に進める理由

セグメンテーションなしにターゲティングはできません。市場をどう分割するかが決まらなければ、「どのグループを選ぶか」の判断基準が存在しないからです。同様に、ターゲットなしにポジショニングは意味を持ちません。「誰に対して」自社を差別化するかが確定して初めて、競合との比較が意味を持ちます。

セグメンテーションとは?市場を分割する4つの変数

セグメンテーションとは、あらゆる消費者・顧客が含まれる市場全体を、共通のニーズや特性を持つグループ(セグメント)に分割する活動です。「誰でも買ってくれるはず」という前提でマーケティングを行うと、リソースが分散し、誰にも刺さらない訴求になりがちです。セグメンテーションは、そのリスクを防ぐための最初の仕分け作業です。

4変数(地理的・人口動態・心理的・行動)の具体的な使い方

セグメンテーションにはニーズに従って全消費者・顧客を分割するための4つの指標が用いられます。

指 標 セグメントの例
人口統計 年齢・性別・家族構成・職業(BtoBでは業種・企業規模・役職)
地理 地域・人口密度・住まい・文化・行動範囲(BtoBでは拠点エリア・営業対応範囲)
社会心理 ライフスタイル・価値観・パーソナリティ・購買動機(BtoBでは経営方針・リスク感度)
行動 購買活動・購買心理・購買契機(BtoBでは情報収集経路・購買サイクル・稟議フロー)

6R分析でセグメントの優先順位を決める

市場を分割した後、すべてのセグメントに同等に注力する必要はありません。6R分析の6つの指標でスコアリングすることで、自社にとって最も参入価値の高いセグメントを客観的に評価できます。

6R分析 意 味
Realistic Scale 現実の市場規模 利益を獲得できる大きさの顧客層か
Rival 競合他社 競争相手が少ない顧客層か
Rate of Growth 成長規模 今後の需要が見込まれる顧客層か
Rank / Ripple Effect 波及効果 周囲への影響力が高い顧客層か
Reach 到達可能性 商品・サービスの営業・販売ができる顧客層か
Response 測定可能性 営業・販売の効果測定ができる顧客層か

中小企業やスタートアップが6Rを活用する際の現実的なポイントは、「Rival(競合が少ないか)」と「Realistic Scale(利益を出せる規模か)」の2軸から絞り込むことです。競合が少なく、自社リソースで十分に対応できる規模のセグメントを見つけることが、次のターゲティングステップへの橋渡しになります。

ターゲティングとは?3つの手法と選び方

セグメンテーションで市場を分割した後、次のステップが「どのセグメントに注力するか」を決めるターゲティングです。ターゲティングとは自社の商品・サービスを販売したい顧客を選択するマーケティング活動であり、コトラーはその方法を3つのパターンに分類しています。

無差別型・差別型・集中型の使い分け基準

選択パターン 意 味 向いている企業・場面
無差別型ターゲティング 特定のターゲットを定めずに画一的な販売戦略を展開する 市場全体をカバーできる予算・体力がある大手企業
差別型ターゲティング セグメントごとに適した販売戦略を展開する 複数ラインナップを持ち、各セグメントに対応できる企業
集中型ターゲティング 特定のセグメントをターゲットとして販売戦略を展開する リソースが限られる中小企業・ニッチ市場を狙うBtoB企業

3つの手法の使い分けは、自社のリソース規模と市場の競争環境によって決まります。集中型は特定の一セグメントに経営資源を集中する戦略であり、リソースが限られる中小企業やBtoB企業にとって最も現実的な選択肢です。「特定業種・特定規模に特化している」という専門性が差別化の武器になります。

BtoB企業のターゲティング事例

BtoBマーケティングにおいて集中型ターゲティングが効果を発揮しやすいケースとして、次のような活用が考えられます。

部品製造業の場合、全業種への一般的な提案をやめて「従業員100名以下の自動車部品メーカー」に注力する集中型を採用することで、営業トークやカタログを業種固有の課題(品質管理・短納期対応)に特化できます。ターゲットの解像度が上がることで提案の説得力が高まり、商談効率の改善につながる可能性があります。

重要なのは「全員に売ろうとすること」をやめることです。ターゲットを絞ることで訴求の精度が上がり、限られたリソースを有効に使えます。

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ポジショニングとは?競合との差別化で独自の立ち位置を確立

ポジショニングとは?

ターゲティングで「誰に売るか」が決まったら、次は「そのターゲットに対して、競合と比べて自社をどう差別化するか」を決めるポジショニングです。ポジショニングとは、市場における独自の立ち位置(ポジション)を確立するマーケティング活動です。独自のポジションとは商品・サービスが提供する付加価値や強み、ユニークさとも言えます。

ポジショニングマップの3ステップ作成手順

ポジショニングの中心的なツールが「ポジショニングマップ」です。闇雲に作成しても差別化の根拠が弱くなるため、次の3ステップで進めます。

ステップ1:購買決定要因の洗い出し
ターゲット顧客が商品・サービスを選ぶ際に重視する要因(購買決定要因:Key Buying Factor)を洗い出します。顧客インタビュー・既存顧客アンケート・競合のレビュー分析などが主な情報源です。BtoBでは「導入コスト」「サポート体制」「カスタマイズ対応」「納期」などが購買決定要因になるケースが多いです。

ステップ2:自社が優位な2軸を選定
洗い出した購買決定要因の中から、競合と比較して自社が優位性を持てる要因を2つ選び、X軸・Y軸とします。「自社が強いと思う軸」ではなく、「ターゲット顧客が重視している」かつ「競合が弱い」軸を選ぶことが重要です。

ステップ3:競合含めてマッピングし、空白地帯を探す
作成したX軸・Y軸のマップ上に自社と主要競合をマッピングします。競合が密集していない空白地帯(ホワイトスペース)を見つけることができれば、そこが自社のポジションの候補です。空白地帯が見つからない場合は購買決定要因の選定を見直しましょう。

BtoB・中小企業のポジショニング事例

BtoBや中小企業においても、ポジショニングは有効な差別化手段です。次のような活用が考えられます。

士業事務所の場合、「業種特化の専門性」と「料金の透明性」を2軸にポジショニングマップを作成すると、「IT・スタートアップ専門で月額顧問料を明示している税理士事務所」というポジションが浮かび上がることがあります。大手事務所との価格競争を避けながら、特定の顧客にとって深刻な課題解決を提供するポジションを確立できます。

Webマーケティング支援の場合、「比較検討段階の見込み客への接触精度」を主軸に置くことで、他社とは異なる集客の立ち位置を確立できます。キャククルのポジショニングメディア戦略は、サービスを比較・検討するユーザーが自然に集まる仕組みを設計することで、見込み客の質と量を同時に改善するアプローチです。

ポジショニングの重要性とメリット

ポジショニングが明確になると、「〇〇といえば自社」という認知が顧客の中に形成されます。ファストファッション業界では、ユニクロは「低価格×シンプルデザイン」、ZARAは「トレンド感×手軽な価格帯」、しまむらは「多品種×低価格」というようにポジションが明確で、消費者は用途に応じて使い分けています。

ポジションが明確であれば、自社の価値を求める顧客が自然に集まり、長期的なリピート関係やファン化につながります。また競合と同じ土俵で争う必要がなくなり、独自の価格設定ができるようになります。これはブランディングの基盤でもあります。

STP分析の実践手順:5ステップで進める

ターゲティングとポジショニングの違い

理論を理解した後、実際にSTP分析を進めるにはどのような順番で何を決めればよいのでしょうか。ここでは5ステップで整理します。各ステップで「何を問い、何を決めるか」を明確にしておくことで、途中で思考が止まることを防げます。

ステップ1〜3:市場調査・変数整理・6Rでセグメント評価

ステップ1:市場調査でデータを集める
顧客インタビュー・Web検索データ・業界レポート・競合の訴求内容などを収集し、「この市場にはどんな課題を持った人・企業がいるか」を把握します。

ステップ2:4変数でセグメントを整理する
収集したデータをもとに、地理的・人口動態・心理的・行動の4変数でセグメントを区切ります。BtoBであれば「業種×企業規模×役職(決裁権)」の組み合わせで定義するのが一般的です。

ステップ3:6R分析で参入セグメントを絞る
分類したセグメントを6R(市場規模・競合・成長性・波及効果・到達可能性・測定可能性)で評価し、最も自社にフィットするセグメントを1〜2つに絞り込みます。主観ではなく6つの指標で判断することが重要です。

ステップ4〜5:購買決定要因の抽出・ポジショニングマップ作成

ステップ4:購買決定要因を抽出してターゲットの判断基準を把握する
選定したセグメントの顧客が購買を決める際に何を重視しているかを洗い出します。顧客インタビューや競合レビューの分析が有効です。

ステップ5:ポジショニングマップで自社の立ち位置を視覚化する
抽出した購買決定要因から2軸を選び、競合含めてマッピングします。自社が優位に立てる空白地帯(ホワイトスペース)を発見し、そこを自社のポジションとして設定します。ポジションが決まったら、マーケティングミックス(4P)の設計に入ります。

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STP分析でよくある失敗パターン3選と回避策

STP分析は正しい順番と方法で行わなければ、精度の低い戦略につながります。ここでは実務でよく見られる3つの失敗パターンと回避策を解説します。「ターゲティングとポジショニングは理解した」と思っていても、これらのパターンに陥っていることは少なくありません。

失敗パターン① ターゲットを決める前にポジションを固定する

「自社の強みはこれだ」という思い込みからスタートし、セグメンテーションとターゲティングを省略してポジショニングを先に設定してしまうケースです。

ポジションは「ターゲット顧客がどう認識するか」で価値が決まるため、顧客ニーズなしに自社の強みを押し付けても購買につながりません。

回避策:必ずS→T→Pの順番を守ります。「自社の強みを最大化できるポジション」より先に「ターゲットが何を求めているか」を起点にしてください。

失敗パターン② セグメンテーションとターゲティングを混同する

「BtoB・製造業・中小企業・購買担当者・東京都内・コスト重視」という条件をすべて列挙し、それをそのままターゲットとして進めてしまうケースです。しかしこれはセグメンテーションの軸の羅列であり、ターゲティングではありません。

ターゲティングとは「複数のセグメントの中からどれを選ぶか」の意思決定です。条件を絞りきれないと複数セグメントに中途半端に対応することになり、「誰にも刺さらない訴求」になります。

回避策:セグメントの候補を複数作り、その中から注力セグメントを1〜2つに絞る意思決定を行います。6R分析を使ってスコアリングすることで、主観による選択ではなく評価軸を持った判断ができます。

失敗パターン③ 購買決定要因を感覚で決めてポジショニングマップが機能しない

「自社が強いと思う軸」でX軸・Y軸を設定し、ポジショニングマップを作成したものの、競合との差別化が見えてこない、あるいは自社が有利なポジションになっても顧客に響かない——というケースです。

根本原因は「購買決定要因が顧客視点ではなく自社視点で設定されている」ことです。顧客インタビューや競合分析なしに感覚で決めると、地図が間違った状態でナビを使うことになります。

回避策:購買決定要因は顧客の声から抽出します。最低でも数件の顧客インタビューか、競合製品・サービスのレビュー(SNS・口コミ・問い合わせ内容)を分析したうえで要因のリストを作り、重要度順に並べることが重要です。

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STP分析後の次のステップ:4Pマーケティングミックスへの接続

STPの3ステップが完了したら、次に取り組むべきはマーケティングミックス(4P)の設計です。STPとマーケティングミックスは別々のフレームワークではなく、STPの結果が4Pの設計を論理的に導く構造になっています。

ターゲットとポジションが決まると4Pが具体化する

4Pとは、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(プロモーション)の4要素です。ターゲットとポジションが決まると、それぞれの要素が以下のように具体化します。

Product(製品):ターゲットの課題解決に必要な機能・品質・仕様が明確になり、不要な機能を切り捨てる判断もしやすくなります。

Price(価格):ターゲットのコスト感度や競合との価格差をもとに、訴求力のある価格設定ができます。ポジションが「品質特化」であれば価格競争を避ける判断基準が生まれます。

Place(流通):ターゲットがどの経路で情報収集・購買を決定するかをもとに、営業チャネルや販売経路を設計します。

Promotion(プロモーション):ターゲットに刺さるメッセージ・媒体・タイミングが決まります。ポジションが明確なほど訴求メッセージの方向性がぶれません。

Webコンテンツ・広告戦略への落とし込み

STPの精度はデジタルマーケティングにも直結します。ターゲットの解像度が高いほど、コンテンツSEO・Web広告・ランディングページの設計精度が上がります。

特に「比較検討段階」のターゲットに対しては、その顧客が「競合と自社を比べている状況」で自社を有利に見せる情報設計が必要です。キャククルのポジショニングメディア戦略は、こうした「比較検討段階のターゲットに、自社の差別化ポイントを自然な形で届ける」ことを専門とするアプローチです。STPで設計した自社のポジションを、Webコンテンツを通じて実際に見込み客へ届けるための手段として活用できます。

まとめ:ターゲティングとポジショニングを正しく理解してマーケティング戦略に活かす

ターゲティングをポジショニングで効果的に集客・販売しよう

本記事では、ターゲティングとポジショニングの違いをSTP分析全体の流れの中で整理し、実践手順とよくある失敗パターンを解説しました。最後に3つのポイントを振り返ります。

STPはS→T→Pの順番が命
セグメンテーションなしにターゲティングはできず、ターゲティングなしにポジショニングは意味を持ちません。順番を守ることが、戦略の精度を保つ基盤です。どこかのステップをスキップすると、後から「刺さらない」「ぼんやりしている」という問題が表面化します。

購買決定要因は顧客から抽出する
ポジショニングマップの2軸は「自社が強い」と思う軸ではなく、「ターゲットが重視している」かつ「競合が弱い」軸でなければ機能しません。顧客インタビューや競合分析をもとに購買決定要因を設定してください。

STPの結果を4Pに接続する
ターゲットとポジションが決まれば、製品・価格・流通・プロモーションの方向性が自動的に絞られます。STPはゴールではなく、マーケティング戦略全体の起点です。STP分析を始めとしたマーケティング戦略全般でお困りの場合には、キャククル運営元のZenkenへご相談ください。

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