STP分析で任天堂の戦略を紐解く

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この記事では、世界三大のゲームメーカーの一つである「任天堂」をSTP分析の視点から解説していきます。貴社のマーケティング戦略の策定にお役立ていただければ幸いです。

なお、この記事に合わせて自社と競合の分析を通じてマーケティングを成果に繋げるためのワークシートも提供しています。自社でSTP分析を行う前、または行ったあときこちらも活用すれば、マーケティング戦略を更に強化させることができます。ご興味のある方はぜひダウンロードしてみてください。

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そもそもSTP分析とは?

STP分析は、マーケティング戦略のフレームワークです。経営学者であり“マーケティングの神様”とも称されたフィリップ・コトラー氏が提唱しました。顧客ターゲットや市場での自社の立ち位置を考える際に用いられています。

STPとは?

STPとは、市場の決定を指すTargething(ターゲティング)、立ち位置の明確化を指すPositioning(ポジショニング)の各単語の頭文字を取った名称です。戦略を練るためのフレームワークとして、業種問わず幅広く用いられています。

  • Segmentation(セグメンテーション:市場細分化)
  • Targeting(ターゲティング:市場の決定)
  • Positioning(ポジショニング:立ち位置の明確化)

セグメンテーションは市場細分化と呼ばれるもので、市場に散らばっている様々な顧客をニーズごとにグループ分けする作業を行います。文字通りニーズを細分化するのが目的です。

ターゲティングは市場の選択を意味し、セグメンテーションで細分化されたニーズの中から自社がアプローチするターゲット層の絞り込みを行います。

ポジショニングは、選択した市場における自社の立ち位置を決定することです。競合他社との差別化を図る目的で行われます。

STP分析の目的とは?

STP分析の目的は、顧客ターゲットと市場における自社の立ち位置を明確化することです。「誰を相手に」「どのような立ち位置」で事業を展開していくかについて、有効な戦略を練るためのフレームワークがSTP分析になります。

理想は全ての顧客ニーズを満たせる商品やサービスを提供し、全ての市場を席捲していきたいところですが、現実はそう簡単にはいきません。一つの商品やサービスで全ての顧客ニーズを満たすことはおろか、複数のニーズを満たすのも難しいのがビジネスの常識なのです。

その前提に立つと事業者はビジネスを継続して行うため、顧客ターゲットと市場での立ち位置を明確にしなければなりません。そうでなければ、限られた経営資源を無駄に投下してしまうことになりかねないからです。STP分析はそれを回避するために用いられます。

STP分析を行うと自社の特性と相性の良いターゲットを層を相手にビジネスを展開し、効率よく売り上げをアップさせることが可能です。

以下では、任天堂を取り上げてSTP分析を行いました。

任天堂における「Segmentation」

任天堂が事業展開しているゲーム市場は、様々な顧客ニーズに細分化できます。マクロな視点で見ると「価格の安いゲームソフトを求めるユーザー」「価格が高くても内容が充実していればOKのユーザー」「ソフトの種類の豊富さを求めるユーザー」「ソフトの種類よりこだわりの追及を求めるユーザー」「ソフト・ハードの販売量」を巡るニーズなどです。

ミクロな視点で見ると、本格的なゲームを週5時間以上楽しむ「ヘビーコアゲーマー」、本格的なゲームを週5時間未満で楽しむ「ライトコアゲーマー」、単純なゲームを週5時間以上楽しむ「ヘビーカジュアルゲーマー」、単純なゲームを週5時間未満で楽しむ「ライトカジュアルゲーマー」など、ゲーム内容とプレイ時間で概ね4グループに分けられます。

以上のように細分化されるゲーム市場における顧客ニーズ。任天堂はどのゲーマー層をターゲットに据えているでしょうか。

任天堂における「Targeting」

任天堂の歴史を振り返ってみると、同社は常に競合のいない市場・顧客をターゲットにしてきたことが分かります。「ファミリーコンピューター」(ファミコン)では家庭用ゲーム機という当時としては未開拓の市場を「ゲームボーイ」ではポータブルゲーム市場、「Wii」ではゲームビギナー層にアプローチして取り込みました。このように任天堂は、常に画期的なゲーム機(ハード)を開発することにより、競合のいない新たな市場を開拓してきたのです。

2017年3月3日に「Nintendo Switch」をリリースして以降は、前項で挙げた4つのゲーマー層、「ヘビーコアゲーマー」「ライトコアゲーマー」「ヘビーカジュアルゲーマー」「ライトカジュアルゲーマー」の全てをターゲットに据える戦略をとっています。もちろんこれは無謀な挑戦ではなく、戦略と勝算のある冷静な挑戦です。というのも、Nintendo Switchは4つのゲーマー層のニーズを全て満たせるオールマイティーなゲーム機だからです。

本格的なゲームが楽しめる点においては「ヘビーコアユーザー」、豊富なゲームタイトルを楽しめる点においては「ライトコアユーザー」、携帯モードが使える点では「ヘビーカジュアルユーザー」、ポケモンGOやスーパーマリオランなど人気ゲームを無料で楽しめる点においては「ライトカジュアルユーザー」、それぞれのニーズを満たせます。

任天堂のターゲティングは初心者・熟練者の壁を取り払い、市場の幅広い顧客をターゲットにしている点が特徴的です。

任天堂における「Positioning」

任天堂におけるPositioning(ポジショニング:立ち位置の明確化)は、常にユーザー目線で行われています。例えば、様々な種類のゲーム開発・リメイクへの取り組みは、ユーザーを飽きさせないようにするための施策でありますし、販売量を多くしていることも、全てのユーザーの手元に届くようにという消費者目線が働いています。

任天堂はハードウェア戦略の一環として、グラフィック処理を抑えるというリスキーな選択をしていますが、これも同社の差別化におけるシンボリックな施策の一つです。グラフィック処理を抑えることにより、任天堂は商品価値の向上とコスト削減を同時に達成する「バリューイノベーション」を実現し、ゲーム本来の楽しさにスポットを当てゲームに馴染みのなかったビギナー層の取り込みに成功しました。

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