SaaS企業のパートナーセールス戦略完全ガイド 直販の限界を超える構築・運用手順

SaaS企業のパートナーセールス戦略完全ガイド 直販の限界を超える構築・運用手順

国内のSaaS企業はまだまだ直販体制が根付いており、パートナーセールス戦略を導入している企業は少ないのが現状です。

しかし、SaaS企業はパートナーセールス戦略を導入することで、直販ではリーチできなかったユーザーまで販路を広げることができます。

ここでは、SaaS企業にパートナーセールス戦略が必要な理由について解説しています。これから自社製品の販路拡大のために、パートナーセールス戦略を検討しているSaaS企業の方は、ぜひ参考にしてください。

直販モデルだけで成長を続けてきたSaaS企業が、ある時点からアクセスできる顧客層に限界を感じはじめる——これはSaaSビジネスにおける典型的な成長の壁です。アーリーアダプター層への訴求には直販が有効ですが、中小企業を中心とするマジョリティ市場に本格参入しようとした瞬間、営業リソースの不足と地域カバレッジの問題が一気に顕在化します。

この壁を突破するために注目されているのが、パートナーセールス戦略です。代理店や協業企業というパートナーエコシステムを活用することで、直販では到達できなかった市場に効率よくアプローチでき、間接収益を積み上げることが可能になります。

本記事では、SaaS企業がパートナーセールス戦略を立ち上げるうえで必要な知識を体系的に解説します。パートナー類型の選び方から制度設計・インセンティブ設計、教育体制(イネーブルメント)の構築、PRMツールを活用したKPI管理、そして直販との競合(チャネルコンフリクト)を防ぐ運用ルールまで、実務に直結する内容をお伝えします。

SaaS企業にパートナーセールスが必要とされる市場背景

SaaS企業の直販モデルは、アーリーアダプター層への訴求には有効ですが、マジョリティ市場に展開する段階でリソース不足の壁に直面します。この壁を越えるために、パートナーエコシステムを活用した間接収益の積み上げが戦略的な選択肢となっています。日本でも外資IT大手が早くからパートナー制度を軸に成長してきた実績があり、国内SaaS企業もその有効性を再評価する動きが加速しています。

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直販モデルの限界とマジョリティ市場へのアプローチ

SaaS企業が直販で獲得しやすいのは、主に首都圏に拠点を置く先進的な企業や、新しいテクノロジーの導入に積極的なイノベーター・アーリーアダプター層です。こうした層は全体の市場の約16%程度に過ぎず、多数派を占めるマジョリティ市場(アーリーマジョリティ・レイトマジョリティ)に到達するためには、直販とは異なるアプローチが不可欠です。

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イノベーター理論では、市場を以下の5つの層に分類します。

  • イノベーター(2.5%):革新的なサービスに真っ先に飛びつく先駆者層。最先端技術への強い関心が購買を動かします。
  • アーリーアダプター(13.5%):流行に敏感で情報収集力が高く、費用対効果を冷静に判断しながら新サービスを採用します。
  • アーリーマジョリティ(34%):実績や口コミを重視し、他社の導入事例が揃ったタイミングで採用します。
  • レイトマジョリティ(34%):慎重派で、業界標準化した段階でようやく採用する層です。
  • ラガード(16%):変化に最も抵抗感が強く、旧来の慣習から離れにくい層です。

マジョリティ市場(アーリーマジョリティとレイトマジョリティで全体の約68%)にリーチするためには、直販よりも地域密着のリセラーや業界特化のSIerのほうが、既存の顧客関係と信頼ベースを持っているため、効率的に訴求できます。また、地方への展開や業種特化での深掘りをしようとすると、直販だけでは人員が足りなくなる問題も起きやすくなります。

BtoBマーケティング全体の観点からも、パートナーを通じた営業アプローチは購買決定者層への信頼醸成を加速させる効果があります。詳細はBtoBマーケティングとは?戦略の立て方や手法・成功事例を解説でも解説しています。

パートナーエコシステム構築による間接収益拡大の重要性

GoogleやMicrosoftなどの大手外資IT企業が早期からパートナーサクセス部門を設置してきたのは、直販の拡大に比べてパートナー経由の販売がはるかにスケールしやすいためです。パートナーエコシステムが機能すると、1人のパートナー担当者が複数のパートナー企業を管理しながら、並行して多くの案件を動かすことができます。

間接収益の積み上げという観点では、直販と比べてマージン分だけ1契約あたりの収益は低くなります。しかし、直販営業の採用・育成・維持にかかる固定費を考慮すると、パートナー経由のほうがコスト効率が高いケースが多いです。特にARR(年間経常収益)を積み上げるSaaSビジネスモデルでは、LTV(顧客生涯価値)が長くなるほど、間接手数料を払い続けても利益が出やすくなります。

パートナーエコシステムが本格的に機能し始めると、パートナー同士が互いの顧客を紹介し合うネットワーク効果も生まれます。この段階まで成熟すると、自社の営業活動なしにリードが生まれる「セルフサーブ型」の間接収益チャネルが確立されます。エコシステムを設計する際は、パートナー同士が競争ではなく補完関係になるよう、参加条件と報酬設計に一貫したポリシーを持つことが重要です。

SaaS向けのパートナー戦略立案や代理店網の構築にお悩みの方は、Zenkenへお気軽にご相談ください。

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パートナーセールス(代理店販売)の主要な類型と特徴

SaaS企業がパートナーセールスを始める際に最初に理解すべきは、代理店販売には複数の類型があり、それぞれ役割・商流・担当範囲が大きく異なるという点です。紹介パートナー・リセラー・ディストリビューター・SIer・OEM・ISVのどれを選ぶかで、制度設計の複雑さや収益への影響が変わります。自社プロダクトの特性と対象市場に合った類型を選ぶことが、パートナーセールス成功の第一歩となります。

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紹介パートナーとリセラー(販売代理店)の役割

パートナーセールスの中で最も基本的な形態が紹介パートナー(リファラルパートナー)リセラー(販売代理店)です。この2つは似て非なるものであり、自社のパートナー制度を設計する前に明確に区別しておく必要があります。

紹介パートナーは、見込み顧客を自社に紹介することを主な業務とします。紹介後の商談・クロージングは自社営業が担当するため、パートナーの責任範囲は顧客の引き合いを発生させるところまでです。報酬は成果報酬型(紹介フィー)が多く、パートナー側の初期投資が少ないため、Web制作会社・税理士法人・経営コンサルタントなど、副業的に取り組みやすい形態です。

リセラーは、営業から契約締結までを担い、エンドユーザーとの契約主体となる形態です。代理店販売の中核を担う類型であり、リセラーが顧客との一次リレーションを持ちます。自社はリセラーに対してサポートとマージンを提供する構造となるため、顧客対応の質の管理が重要な課題となります。

項目 紹介パートナー リセラー
担当範囲 リード紹介のみ 商談〜契約締結まで
契約主体 自社(ベンダー) リセラー
報酬形態 紹介フィー(成果報酬) 卸値マージン(継続含む)
向いているSaaS 単価が高く専門家が絡む商材 標準化された中価格帯商材

ディストリビューターとSIerによる導入支援型の協業

ディストリビューターは、自社SaaSを多数のリセラーに卸す「一次代理店」です。SaaS企業が全国展開を目指す際、各リセラーと個別に契約・管理する手間を省けるため、リソースが限られたフェーズでは特に有効です。ディストリビューターはリセラーへの教育・サポート・請求処理を代行することもあり、販路構築の効率を大幅に高める役割を果たします。

SIer(システムインテグレーター)は、顧客のシステム設計・構築・運用を担うパートナーです。顧客との深い関係性を持ち、ITシステムの包括的な導入支援を行う点が特徴です。SaaSとSIerの協業では、単なる販売代理にとどまらず、カスタマイズ・他システムとの連携・導入後の定着支援まで含めた付加価値の高いパッケージングが可能になります。

特に中堅・大手企業向けのSaaSでは、SIerとの協業が案件獲得の鍵となるケースが多いです。エンタープライズ向けの複雑な要件定義・カスタマイズ・セキュリティ審査対応など、SIerが持つプロジェクト管理能力と顧客信頼が、導入の壁を下げる機能を果たします。SaaS導入後の定着率を高めるうえでも、SIerが継続的な運用支援を担ってくれる体制は、顧客のLTV向上に直結します。

OEM・ISV連携によるプロダクト価値の拡張

OEM(Original Equipment Manufacturer)連携では、自社SaaSを他社のプロダクトやサービスに組み込み、他社ブランドで提供してもらう形態です。例えば、会計SaaSが給与計算SaaSに機能を組み込んでもらうケースや、業界特化のERPに自社の分析機能を統合してもらうケースが該当します。自社ブランドの露出は減りますが、相手のエコシステムに乗ることで大量のユーザーベースへ一気にリーチできる点が最大のメリットです。

ISV(Independent Software Vendor)連携は、APIを介して既存のSaaS同士が機能を補完し合う形態です。自社SaaSと相性の良いSaaSを探し、相互のマーケットプレイスやアプリストアで連携機能を公開することで、お互いの顧客ベースにリーチできます。大規模プラットフォームへのISV登録は、新規顧客獲得チャネルとして高い効果が見込めます。

OEMとISVはいずれも、プロダクトの価値をパートナーのエコシステムに乗せて拡張するアプローチです。直接の営業活動なしに顧客数を増やせる点が魅力ですが、技術的な連携コストや契約上の条件整理が必要になるため、プロダクトの成熟度が高まったフェーズで検討するのが適切です。

自社SaaS商材に合わせたパートナー戦略の自己診断

パートナーセールス(チャネルセールス)の有効性は、自社プロダクトの特性や企業の成長フェーズによって大きく変わります。パートナーにとって「売りやすい」商材には共通する条件があり、この条件を満たしているかどうかが、パートナー制度が機能するかどうかの分水嶺となります。また、ARR規模や市場成熟度に応じた戦略の切り替えを怠ると、パートナーに販売を依存しすぎてコントロールを失うリスクもあります。

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パートナー企業が優先的に販売しやすい商材の条件

チャネルセールスに適した商材には、パートナーが「積極的に売りたい」と思える共通の特性があります。以下の観点から自社商材を評価することで、パートナー制度の向き・不向きを事前に診断できます。

評価項目 向いている 向いていない
説明のしやすさ デモ30分以内で価値が伝わる 深い技術知識がないと説明できない
価格帯 月額5〜50万円程度(マージンが成立する) 月額数千円(手数料が薄すぎる)
競合との差別化 機能・価格・サポートで明確な優位性あり 同等品が複数あり価格競争になる
導入難易度 パートナーが独力で導入支援できる 毎回ベンダーのエンジニア支援が必要
サポート負荷 FAQや操作マニュアルで自己解決可能 カスタマーサポートの頻度が高い

上記の観点で多く「向いていない」に当てはまる商材でも、パートナーへの十分なトレーニング(イネーブルメント)や手厚い技術サポートを提供することで改善できるケースもあります。ただし、その場合は自社の運用コストが上昇するため、パートナー数を絞り込んで質の高いパートナーと深く連携する「少数精鋭」モデルが現実的です。

ニッチ市場やスペシャリティの高いSaaSを展開している場合は、業界特化の代理店やコンサルタントとの提携が特に効果的です。詳しくはニッチ戦略を成功させるマーケティングの考え方と企業事例集も参考にしてください。

SaaS事業の成長フェーズ別における最適なパートナー戦略

パートナー戦略はARR規模や市場開拓の段階によって最適な形が変わります。フェーズに合わない戦略を取ると、リソースを無駄に消費するか、成長機会を逃すことになります。

  • 【立ち上げ期 / ARR1億円未満】:まず直販で販売プロセスを磨きます。パートナーに任せる前に、自社が一気通貫で受注〜オンボーディングできる体制を確立することが先決です。この段階でのパートナー展開は時期尚早になりやすく、再現性のない成功体験をパートナーに伝えることになりかねません。
  • 【PMF後 / ARR1〜3億円】:紹介パートナー(リファラル)から始めます。対象は自社顧客の紹介経路として自然なコンサルタントや隣接SaaSの企業です。小規模の試験的なプログラムで再現性を確認してから本格展開します。
  • 【ARR拡大期 / ARR3〜10億円】:リセラーや業界特化SIerとの契約を広げ、地方・業種へのカバレッジを拡大します。パートナー管理専任の担当者(チャネルマネージャー)を置き、体系的なパートナープログラムを整備するタイミングです。
  • 【エンタープライズ攻略期 / ARR10億円以上】:大手SIerやディストリビューターとの戦略的アライアンスを展開します。OEM・ISV連携でプロダクトのエコシステムを広げ、競合が参入しにくい市場ポジションを確立します。

フェーズが上がるにつれ、パートナーへの依存度を高めながらも、直販チームとのバランスと住み分けルールを整備することが求められます。自社の成長段階を正確に把握し、パートナー戦略への投資タイミングを見誤らないことが重要です。

自社に最適なパートナー類型の選定や代理店網の設計については、Zenkenにご相談ください。

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パートナーセールス戦略の立ち上げ手順と制度設計

パートナーセールスの立ち上げは、インセンティブ設計とパートナープログラムの2つを正しく構築することが成否を分けます。粗利率を考慮した持続可能なマージン設定と、パートナーが参画・継続したくなるティア制度と支援体制を組み合わせることで、自走するパートナーエコシステムが生まれます。

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粗利率を考慮したインセンティブ設計と契約形態の決定

パートナーへのインセンティブ設計で最初に決めるべきは、マージン率の水準です。SaaSの粗利率は一般に高い(70〜85%程度)ため、パートナーへのマージン提供余力は比較的大きいです。ただし、マージンを高く設定しすぎると自社の収益を圧迫し、低すぎるとパートナーの動機づけに失敗します。

代理店販売における典型的なマージン設定は以下の通りです。

パートナー類型 マージン水準の目安 支払いタイミング
紹介パートナー 初年度MRRの10〜20%(一時金) 契約締結後1〜2ヶ月
リセラー 月額料金の15〜30%(継続手数料) 毎月末または四半期
ディストリビューター 卸値から10〜15%上乗せ 請求サイクルに依存
SIer(導入支援込み) 初期費用の20〜35% + 継続10〜20% フェーズ毎の検収払い

継続手数料(リカーリング型)は、パートナーに長期的なロイヤリティを生む一方で、自社の月次フリーキャッシュフローへの影響が積み上がります。一時金型は初期に費用が出ていくものの、長期的な管理がシンプルです。自社のARR目標と粗利率の見通しをもとに、どちらが持続可能かを検討してください。

また、契約形態も重要です。リセラーとの契約では、販売権(専属・非専属)、地域制限、最低販売目標、解除条件などを明記します。特に専属代理店契約を結ぶ場合は、競合他社との関係や商材の住み分けを慎重に確認する必要があります。

魅力的なパートナープログラムの構築と募集展開

パートナーに「このプログラムに参加したい」と思わせるためには、報酬だけでなく支援体制・情報・ブランドの3つを組み合わせたパッケージが重要です。成功しているパートナープログラムには共通して「パートナーが成功しやすい環境を整える」発想があります。

パートナープログラムにはティア(階層)制度を導入することが一般的です。ティア別に提供される特典や要件を明確化することで、パートナーの成長意欲を引き出せます。

  • ゴールド(最上位):年間ARR目標の達成、専任担当の配置、マーケティング共同投資(MDF)、優先的なディール登録権が付与されます。
  • シルバー(中位):四半期ARR目標への到達、定期的な勉強会参加権、マーケティング素材の提供が受けられます。
  • ブロンズ(エントリー):基本マージン、オンライン研修、製品デモ環境の提供が受けられます。新規参加パートナーが多く属するティアです。

パートナー募集の方法としては、自社Webサイトへの募集ページ設置が最も基本的です。募集ページには「なぜ自社商材を売るべきか(PAY)」「どんな支援が受けられるか(PLAY)」「どうやって始めるか(PROCESS)」の3点を明示し、興味を持った企業がスムーズにコンタクトできる導線を整えます。

また、既存の直販顧客の中から「パートナーになり得る企業」を探す方法も有効です。自社プロダクトを活用して成功している企業は、同業他社への紹介パートナーとして自然に機能することがあります。募集ページ設計の参考として、フランチャイズ募集サイトまとめ【オーナー募集掲載するなら要チェック】の考え方も活用できます。

パートナープログラムの設計や制度構築についてはZenkenにご相談ください。

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パートナーセールスを成功に導く運用管理とKPI測定

パートナーセールスは、契約締結後に本当の勝負が始まります。イネーブルメント(教育・支援)が不十分なパートナーは自走せず、せっかく構築したプログラムが形骸化します。ディール登録によるパイプライン可視化と、PRMツールを使った定量的なKPI管理を組み合わせることで、各パートナーの成果を継続的に改善できる体制を作れます。

方法

パートナー向けの教育(イネーブルメント)と確実なオンボーディング

パートナーが自走するために最も重要な投資がイネーブルメントです。イネーブルメントとは、パートナーが自社製品を正確に理解し、顧客に価値を伝え、案件をクロージングできるようにするための教育・支援活動全体を指します。

オンボーディング(初期教育)のフェーズでは、以下の要素を体系的に提供することが推奨されます。

  • 製品デモ環境の提供:パートナーが顧客に見せられる専用デモ環境を用意し、実際に操作できる環境を早期に整えます。
  • 営業資料・提案書テンプレートの整備:パートナーが独自に作成する手間を省き、提案品質の均一化を図ります。
  • 製品認定資格(サーティフィケーション):一定レベルの知識を習得した担当者に認定を付与し、モチベーションと品質管理を両立します。
  • 定期勉強会(ウェビナー):新機能リリースや成功事例の共有を定期的に行い、情報格差を防ぎます。

継続フェーズでは、パートナー担当者(チャネルマネージャー)が定期的な1on1でパイプラインのレビューや課題の解決を支援します。パートナーが感じる「サポートされている感」が、自社商材を優先的に販売してもらえるかどうかに直結します。オンボーディングの完成度が、その後のパートナーの自走率を大きく左右する点を念頭に置いて設計してください。

ディール登録と共同提案によるパイプラインの可視化

ディール登録とは、パートナーが進行中の商談情報をベンダーに登録する仕組みです。この制度を導入することで、複数のパートナーが同一顧客に営業をかける「ダブルセリング」を防ぎ、パートナー間の競合を最小化できます。

ディール登録を行ったパートナーには、競合パートナーの参入を防ぐ「保護期間」と、追加のマージンや技術サポートを付与することが一般的です。これにより、パートナーが積極的に商談情報を登録するインセンティブが生まれ、自社側でもパイプライン全体を把握しやすくなります

共同提案(コ・セリング)は、自社の営業担当とパートナーが協力してクロージングを進めるアプローチです。大型案件や新規開拓が難しい案件では、パートナーの顧客関係に自社の技術力や提案力を組み合わせることで成約率が向上します。共同提案の運用ルールとして、費用負担・報酬分配・情報管理の取り決めを事前に明確化しておくことが重要です。

PRM(パートナー関係管理)ツールを活用したKPI測定

PRM(Partner Relationship Management)ツールは、パートナーとのコミュニケーション・ディール登録・KPI管理・コンテンツ共有を一元化するプラットフォームです。代表的なツールとしては、Salesforce PRM、Impartner、Alliancelyなどがあります。

PRMを導入することで、以下のKPIをパートナーごとに定量的にトラッキングできます。

KPI 測定内容 改善への活用法
パイプライン登録数 期間中の新規商談登録件数 登録数が少ないパートナーにアウトリーチを強化
商談成約率 登録案件の成約率(%) 成約率が低いパートナーにトレーニングを追加
パートナー活動スコア 研修受講・資料DL・ミーティング参加頻度 エンゲージメントが低いパートナーを早期に把握
売上貢献ARR パートナー経由の月次・年次ARR合計 上位パートナーの特徴を抽出して水平展開

データを活用してパートナーを「育てる」文化を社内に根付かせることが、持続的なパートナーエコシステム運営の土台となります。パートナー経由のリード獲得やWeb集客については、BtoB(法人)・製造業向け!Webメディアの記事広告サイトや比較広告サイトを徹底解説も参照してください。

パートナー開拓に向けたリード獲得や代理店募集サイトの構築はZenkenにご相談ください。

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パートナーセールス導入における失敗要因と直販との競合回避

パートナーセールス戦略で最も多い失敗のパターンは、チャネルコンフリクト(直販との競合)の放置と、パートナー教育への投資不足です。LTV低下やCAC悪化につながる顧客獲得の質の問題も、パートナー依存が進む中で表面化しやすいリスクです。これらを事前に設計段階で組み込んでおくことで、エコシステムの崩壊を防ぐことができます。

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直販との競合(チャネルコンフリクト)を回避する住み分けルールの徹底

チャネルコンフリクトとは、自社の直販チームとパートナーが同一顧客を取り合う状態です。直販チームからすると「自分たちが開拓した顧客をパートナーに取られた」という感覚になり、社内のモチベーション低下や情報隠蔽といった問題が生じます。パートナー側も「直販と競合するなら旨味がない」と感じ、離脱につながります。

コンフリクトを防ぐ最も有効な方法は、担当エリアや企業規模による住み分けルールの明文化です。

  • 規模別住み分け:従業員300名以上は直販、300名未満はパートナー経由、など明確な基準を設けます。
  • エリア別住み分け:首都圏・大阪圏の主要顧客は直販、地方・海外はパートナー優先とします。
  • 業種別住み分け:特定の得意業種は直販が担当し、他業種はパートナーが担当する方針を定めます。

また、ディール登録システムを活用することで、パートナーが既にアプローチしている顧客に直販が重複してコンタクトすることを防げます。住み分けルールはパートナー契約書に明記し、例外処理の手順も定めておくことが重要です。

LTV低下やCAC悪化を招く顧客獲得の質の問題と対策

パートナーに販売を委ねると、パートナーが自社の利益(手数料)を優先するあまり、プロダクトに適合しない顧客への販売が起きやすくなります。成果報酬型のインセンティブ構造上、契約を取ることが目的化し、顧客が導入後に価値を感じられず解約するケースが増えると、LTVが低下しCAC(顧客獲得コスト)が悪化します。

この問題への対策は主に以下の2点です。

  • 適合基準(ICP)の共有:理想的な顧客プロファイル(Ideal Customer Profile)をパートナーに明確に伝え、ICP外の商談を追わないよう促します。ICPを文書化してパートナー向け研修に組み込むことが効果的です。
  • 継続手数料とカスタマーサクセス連動:初年度の継続率や解約率をパートナーのスコアに反映することで、「売り切り」ではなく「顧客成功」を重視した販売行動を促します。

カスタマーサクセスチームがパートナー経由の顧客を定期的にフォローアップし、パートナーと連携してオンボーディングを共同実施する体制を作ることが、LTV改善の根本的な解決策です。

販売優先順位の低下とパートナー教育の工数不足への対応

パートナー企業は自社だけのために働いているわけではありません。複数のベンダーの製品を取り扱っており、自社商材の販売優先順位は常に競合他社と争っている状態です。自社のプロダクトが「売りにくい」「サポートの返答が遅い」「マージンが低い」と感じられると、パートナーの担当者は他のベンダーの商材を優先的に売るようになります。

この問題を防ぐには、定期的なコミュニケーションの維持が不可欠です。月次または四半期のパートナーレビューミーティングで商談状況を確認し、パートナーが抱える問題を早期に解決します。また、ベンダーからの営業支援(MDF:マーケティング開発費の提供、展示会への共同出展など)を通じて、パートナーが自社商材を積極的に売りやすい状態を維持することが重要です。

パートナー教育の工数不足については、オンライン研修コンテンツの整備とセルフサーブ型の学習環境構築が有効です。動画研修・クイズ・資格認定制度を自動化したLMS(学習管理システム)を使うことで、限られた担当者リソースで多数のパートナーを効率的に教育できます。

SaaSパートナーセールス戦略の総括

まとめ

本記事では、SaaS企業がパートナーセールス戦略を立ち上げる際に必要な一連の知識を解説してきました。直販では届きにくいマジョリティ市場へのアプローチから始まり、類型選定・制度設計・イネーブルメント・KPI管理・チャネルコンフリクトの回避まで、体系的に取り組むことが成功のカギです。

パートナーセールス成功の核心は、パートナーが自発的に「売りたくなる」インセンティブ設計と、パートナーが自走できる手厚い教育・支援体制(イネーブルメント)の両立にあります。パートナーを単なる「販売の手」として使うのではなく、共に成長するパートナーエコシステムを構築する視点が、直販の限界を突破し持続的な間接収益を生む土台となります。

チャネルコンフリクトや顧客品質の問題は、設計段階で住み分けルールとインセンティブの方向性を正しく定めることで多くを防ぐことができます。パートナー戦略は一度構築したら終わりではなく、PRMによるデータ活用と定期的な関係性のアップデートによって継続的に育てていくものです。

SaaS事業のWebマーケティングやコンテンツ戦略については、オウンドメディア制作会社10選~費用感や選ぶ際のポイントについても併せて解説します~も参考にしてください。

なお、本記事はキャククル(shopowner-support.net)が提供するコンテンツです。キャククル(shopowner-support.net)は、Zenken株式会社が運営する成約特化型の比較メディアであり、BtoBマーケティング・集客・広告戦略に関する情報を発信しています。

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