競争優位性とは?競争力を高める戦略とフレームワークも紹介

競争優位性とは?競争力を高める戦略とフレームワークも紹介
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同じような商品やサービスが溢れ、飽和状態にある市場で生き残るためには、競合との差別化を図り、自社が市場で優位に立たなくてはなりません。

しかし実際には、数えきれないほど多くの企業が参入している市場で、優位なポジションを確立するのは、そう簡単ではありません。

この記事では、競合との競争を有利に進める「競争優位性」について、マーケティングの視点から見た戦略や優位性の獲得手法について解説していきます。

今すぐ取り組めるフレームワークも解説していますので、ぜひ戦略構築や実践にお役立てください。

また戦略立案などに活用するフレームワークに活用できる、自社と競合他社を分析し「成果に繋げる」ワークシートを無料でご提供しています。

自社の強みを活かしたマーケティング戦略を立てたい方は、今後の戦略策定にご活用ください。

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競争優位性とは?

競争優位性とは?
「競争優位性」とは、自社と競合他社を比較したときに、ビジネスにおいて圧倒的に有利となっている状況を指します。

また、競合他社が真似できない方法によって他社をしのぐ能力を持っており、高いレベルで事業を実行できる能力も競争優位性です。

競争優位性は時代や環境の変化に左右されやすいため、いかに環境の変化に対応しながら持続的に優位性を獲得していけるかが求められます。

そうはいっても自社の競争優位性を見いだすのは中々大変なものです。
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競争優位性を構築する3つの戦略

競争優位性を構築するための方法には、「3つの基本戦略」と呼ばれるフレームワークがあります。

  • スト・リーダーシップ戦略
  • 差別化戦略
  • 集中戦略

アメリカの経済学者マイケル・ポーターが提唱したもので、世界中で活用されている経営戦略方法です。

それぞれについてその概要を確認しておきましょう。

コスト・リーダーシップ戦略

コスト・リーダーシップ戦略
コスト・リーダーシップ戦略とは、その名の通り「コストでリーダーシップをとる」つまり、競合他社と比較して安い価格で商品・サービスを提供する、または原価を抑えて利益率を上げることで、競合他社よりも優位に立つ戦略です。

大量生産や直接仕入れによって単価を安くする、生産工程を効率化して人件費や管理費を削減するなど、さまざまなコスト削減によって、他社と同じ品質の商品・サービスをどこよりも安価で提供できるようにします。

ただし、コストを下げるためには生産規模を大きくしなくてはならないため、大企業など規模の大きな会社や予算が潤沢な企業でないと、なかなか実現できません。

小規模な企業や生産・管理にかけられるコストが限られている企業がコスト・リーダーシップ戦略を行うのは、難しいと考えられます。

コスト・リーダーシップ戦略の効果・メリット

競合他社よりも低価格で販売できるため顧客に購入してもらいやすく、利益を生み出しやすくなります。価格で商品・サービスを選ぶターゲットや顧客を大量に獲得したい際には、非常に有効な方法です。

また、以前と同じ価格で売り出すにしても、前よりも低コストで生産することができれば、それだけ優位性が反映されて利幅が拡大します。

さらに、生産規模が限られている場合でも、商品の製造開始から経験が蓄積される、つまり生産や管理に慣れてくると作業効率が向上します。

この「経験の累積」によって、さらに商品の生産コストを下げることも可能です。

コスト・リーダーシップ戦略のデメリット

競合他社もコスト・リーダーシップ戦略を取った場合、価格で争うことになりますから、過度な価格競争が起こる可能性があります。価格を安くした分、より多くの商品を売ることができないと利益を生み出せません。

このような「薄利多売」の状況で原材料費の高騰など外的な要因が重なると、生産コストが増大し、途端に赤字になってしまうリスクがあります。

差別化戦略

差別化戦略とは、自社の商品・サービスや事業運営に独自性を持たせて、他社とはちがう価値観を際立たせて売り出す戦略のことです。

ここで言う差別化は、他社とカブらない商品やサービスを開発するものではありません。

たとえ他社と似たような商品・サービスであっても、品質や機能・性能、デザイン、ブランドイメージ、アフターフォローなどで、消費者がより魅力的に感じる価値を持たせて差別化します。

つまり、「顧客が認知する価値」を向上させることが大切です。

差別化戦略の効果・メリット

競合他社と大きく差をつけることができるので、売上や事業の拡大につながります。競合他社と価格で争わなくても済むのも大きなメリットです。

商品・サービスの品質や性能は同じだったとしても、競合にはない価値は、顧客にとって「ユニークな商品」として位置づけられます。

顧客は価格以外の価値を魅力だと感じて購入するため、競合他社と歩調を合わせて価格を引き下げる必要がありません。

また、差別化戦略は、新しく参入しようとする競合の抑制にもつながります。参入する際に生産コストだけでなく、さらなる差別化にコストを費やさなくてはならないからです。

よって、差別化戦略は、特定の市場でいち早く差別化を実現できるかどうかが成否のカギを握ります。

差別化戦略のデメリット

商品・サービスの価格以外に価値を持たせてターゲットにアプローチする際、あまりにも市場と価格が乖離してしまうと、顧客が手に取らなくなってしまう恐れがあります。

差別化を理由に既存商品を値上げすると、これまでの顧客が離れてしまうリスクもあるでしょう。スムーズに差別化戦略へ移行できないと、大きな損失を被ってしまう可能性があります。

また、たとえ差別化戦略で成功しても、そのあとに続く競合他社がその商品・サービスを模倣してくると、同質化が起こり、差別化が図れなくなってしまいます。

せっかくの投資が時間の経過とともにムダになってしまう可能性もあるため、競合他社の動向に常に目を光らせておくことが大切です。

集中戦略

集中戦略とは、市場の中でも特定の顧客セグメントや製品の種類、地域などに経営資源を集中させて、特定のターゲットに絞って差別化をアピールする戦略です。

狭い市場でターゲットを絞ることで、市場で高い占有率を得たり経営資源を効率的に運用したりできるようになります。

「ニッチ戦略」「特化型戦略」とも呼ばれ、規模の小さな企業や中小企業などでもよく使われる手法です。

集中戦略の効果・メリット

集中戦略を行うと、商品・サービスの開発や広告にかけるコストを抑えつつ、独自性を持たせられます。特定の顧客やマーケット、販売経路(チャネル)で資源を最大限活用できるのもメリットです。

特定のセグメントに集中することで、自社のブランディングにもつながるでしょう。

また、狭い市場でポジションを取るため、競合他社の新規参入も防げます。

さらに、戦略を展開するのがニッチな市場であれば、競合他社のいない状態で事業を進めることもできます。

集中戦略のデメリット

集中戦略は、特定の市場で利益を生み出しやすい分、環境に左右されやすい特性があります。

ニッチな市場に事業を集中させている状況下で競合他社が参入してくると、シェアを奪われてしまうリスクが生じます。新規参入の競合が経営資源の豊かな大企業なら、なおさらシェアを奪われやすいです。

また、流行や顧客ニーズの変化、社会状況の変化など、環境が変わることで自社の商品・サービスが求められなくなる可能性があります。このような事態を防ぐためにも、集中戦略を行いながら自社のブランド力を高めておかなくてはなりません。

また、ニーズを常に把握して、顧客のニーズに合わせて柔軟に商品・サービスを変化させていく必要があります。

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自社の競争優位性を分析するフレームワーク

自社の競争優位性がどこかが分からない場合、見いだせていない場合に活用できるフレームワークがあります。

それがVRIO(ブリオ)分析です。

VRIO(ブリオ)分析とは

VRIO分析とは、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)それぞれのアルファベットの頭文字を組み合わせたもので、優位性のある経営資源を分析する際に用いるフレームワークです。

この4つの要素を客観的に評価すると、自社の経営資源が競合優位性を確保する上で強みになっているのか、弱みかがわかります。

ただこのVRIO分析に必要な要素を抽出するために、PEST分析やファイブフォース分析といったほかのフレームワークを活用した分析があらかじめ必要になるため、いきなりVRIO分析にチャレンジするのは得策ではありません。

以下では、VRIO分析のそれぞれの項目について、YesかNoで1つずつ回答していき、Noが出た時点で分析を終えて評価を確定します。

経済価値(Value)

VRIO分析の最初の質問は「経済価値を有しているか」です。経済価値とは、会社の時価総額などのお金に還元できる価値ではありません。

企業が市場機会に対してどれだけ付加価値を生み出せそうか、また、外部環境による脅威を想定したとき、どれだけ耐えられる資源があるかを意味しています。

希少性(Rarity)

つぎに希少性が高いかどうかを分析します。希少性とは、他社が持っていない経営資源のことで、希少性が高いほど競合他社による後発の新規参入を防げます。

提供しているサービスや顧客が「選んでいる理由」に対し、競合がどれだけ同じものを提供しているかを指標化します。

独自の生産技術を持っていて、それを理由に顧客から受注しているのであれば「希少性が高い」にあたります。

模倣困難性(Imitability)

自社のビジネスは他社が模倣できないか、模倣するのが難しいかどうかを分析します。仮に模倣するとしたら、どのくらいコストやリソースがかかるかという点で考えるとわかりやすいでしょう。

ここで「No」だった場合、「一時的な競争優位の状態」という評価になります。

とくに希少性が低い市場だと模倣されやすいため、現状の競争優位性がいつ均衡に戻るか、覆ってしまうかが分からない状況と言えるでしょう。

組織(Organization)

VRIO分析の最後の項目が「組織」です。

上述した「経済的な価値」「希少性」「模倣可能性」を守るために、組織が適切に構築されているか、運営がしっかりと行われているかを考えます。

ここの回答が「Yes」だった場合、持続的に競争優位な状態であり、なおかつ経営資源を最大に活かせている状態です。

反対に「No」だった場合でも、「持続的な競争優位の状態にある」とは評価されるため、長く競争優位を確保できることになります。

なお、このフレームワークは多少わかりにくい部分もあるため、ダイゾーコンサルティング株式会社「ビジネスの教科書」で解説されている画像を印象して紹介しておきます。

非常に細かく解説されていて勉強になりますので、ご興味があるかたはチェックしてみてください。

「ビジネスの教科書」VRIO分析フレームワーク
画像引用元:ダイゾーコンサルティング株式会社「ビジネスの教科書」(https://dyzo.consulting/618/)

上記のフレームワークをフローチャートに落とし込んだものが、下記の図です。

「ビジネスの教科書」VRIO分析フローチャート
画像引用元:ダイゾーコンサルティング株式会社「ビジネスの教科書」(https://dyzo.consulting/618/)

参照元:ビジネスの教科書「VRIO分析とは?経済価値・希少性・模倣困難性・組織の質問」(https://dyzo.consulting/618/)

競争優位の企業事例

競争優位の企業事例
ここでは、3つの基本戦略を活かして競争優位を獲得した企業事例を紹介します。

コスト・リーダーシップ戦略の企業事例

日本マクドナルド

世界的なハンバーガーチェーンと知られるマクドナルド。

物流システムやマニュアルを全店で統一し、競合他社と比較して圧倒的な低価格で商品を提供しています。

ニトリ

ニトリは、家具やインテリアなど、店舗で扱う商品の開発から製造、販売までを一貫して自社で行い、日本ではじめてSPA(製造小売業)を実現した企業として知られています。

「お、ねだん以上。」というキャッチフレーズで手ごろな価格設定やコスパの良さをPRし、一大企業へと成長しました。

ユニクロ

ニトリと同様、商品の開発、製造、販売までを自社で行うことで、低価格を実現しているユニクロ。すべての商品が自社管理で卸売業者を介さないため、マージンが発生しません。

浮いたコストを価格に反映させて、消費者に低価格で商品を提供し続けています。

差別化戦略の企業事例

モスバーガー

マクドナルドをはじめとした競合と差別化するため、メニューの数を多くすることで差別化に成功したモスバーガー。

店舗に自然な色合いを使用して、ナチュラルで健康的なブランドイメージの定着にも成功しています。

今治タオル

低価格なタオルとは異なり、品質にこだわる日本製のタオルとして差別化を図る今治タオル。

消費者がすぐに今治タオルと分かるよう、今治ブランドのマークをタグにして付ける、白の無地タオルで勝負するといった工夫も成功要因です。

ローソン

通常のローソンとは異なり、オーガニックや健康志向にこだわった商品ラインナップを徹底した「ナチュラルローソン」で、他のコンビニと差別化を図ったローソン。

普段コンビニにはあまり立ち寄らない女性の集客にも成功しています。

集中戦略の企業事例

スズキ

軽自動車の生産・販売に集中する戦略で、市場シェアの獲得に成功したスズキ。エリア選定でも集中戦略を取り入れています。

長年にわたりインドでの自動車製造・販売に集中して資源を投下し、インドでのシェア獲得にも成功しました。

しまむら

ターゲットを「20~50代の主婦」に絞り込み、ニーズに合わせた商品展開で女性の支持を集めたのがしまむらです。

多くの品種を少しずつ生産して余剰在庫を防ぎつつ、物流・店舗のオペレーションを本部に集中させる、マニュアルのブラッシュアップを行うといった資源の集中投下で成果を上げています。

ケンタッキー・フライド・チキン

自社のマーケットを「フライドチキン」という狭い市場に絞ることで高いシェアを獲得しています。

大手ハンバーガーチェーンに比べて、経営資源が少ない中でも競争優位性を維持し続けている代表事例と言えるでしょう。

ファイブフォース分析で競争優位性を設計する:外部環境の把握から始める戦略立案

競争優位性を構築するには、まず自社を取り巻く外部環境を正確に把握することが前提となる。そのための代表的な分析手法が、マイケル・ポーターが提唱したファイブフォース分析(5つの競争要因)だ。業界全体の収益性を規定する5つの力を可視化することで、どこで競争優位性を確立すれば持続的な利益が得られるかが明確になる。

5つの競争要因とは

競争要因 内容 優位性への示唆
①業界内競合の激しさ 既存競合他社間の競争激度 激しい業界ほど差別化戦略が有効
②新規参入の脅威 参入障壁の高低 参入障壁が低い市場ではスケールメリットや特許が優位源泉になる
③代替品の脅威 他カテゴリの商品への乗り換えリスク 代替されにくい独自価値の確立が重要
④買い手の交渉力 顧客の価格交渉・切り替えのしやすさ スイッチングコストを高める設計が競争優位につながる
⑤売り手の交渉力 原材料・仕入先との力関係 仕入構造の多元化や内製化でコスト優位性を守る

ファイブフォース分析→競争優位性設計の流れ

Step 1:5つの力を評価する(強・中・弱)
自社が属する業界において、5つの競争要因それぞれの強度を「強・中・弱」で評価する。強い圧力がかかっている力が、競争優位性を確立すべき優先領域となる。

Step 2:収益を圧迫している主因を特定する
5つの力の中で最も収益性を低下させている要因を絞り込む。たとえば「買い手の交渉力が強い」業界であれば、顧客が離れにくい仕組み(スイッチングコスト)の構築が競争優位の鍵となる。

Step 3:3つの基本戦略に落とし込む
特定した圧力に対抗するため、コスト・リーダーシップ戦略・差別化戦略・集中戦略のどれが最も有効かを選択する。VRIO分析と組み合わせることで、自社の経営資源と外部環境の両面から最適戦略を導ける。

ファイブフォース分析で外部環境を把握し、VRIOで内部資源を評価する。この外部×内部の二軸分析を組み合わせることで、「どこで・何を武器に・どのように戦うか」という競争優位性の青写真が描ける。

持続的競争優位性とは:一時的な優位で終わらせないための条件

競争優位性には「一時的なもの」と「持続的なもの」の2種類がある。多くの企業が陥りやすい罠は、一時的な優位性を獲得した時点で戦略立案を止めてしまうことだ。市場環境が変化し競合が追随してくると、いつの間にか優位性は消滅してしまう。

一時的競争優位と持続的競争優位の違い

一時的競争優位 持続的競争優位
定義 短期間は有効だが競合に模倣されやすい優位 長期にわたって他社に模倣・代替されにくい優位
典型例 価格キャンペーン、新機能の先行リリース ブランド資産、特許技術、顧客ロイヤリティ
持続期間 数ヶ月〜1〜2年 数年〜10年以上
VRIO判定 V・R◯ / I✕(模倣困難性が低い) V・R・I・O すべて◯
リスク 競合追随による価格競争・同質化 環境変化・技術革新による陳腐化

持続的競争優位性を維持するための3条件

Harvard Business Schoolのマイケル・ポーターは、持続的競争優位性を維持するために以下の3つの条件が必要だと論じている。

  • 模倣困難性の強化:競合が模倣するためのコストや時間が高い状態を維持する。独自のノウハウ・ブランド・特許・組織文化は模倣困難性が高い資源の代表例だ
  • 代替不可能性の確保:自社のサービスや製品が他のカテゴリの商品に置き換えられにくい状態を作る。顧客のスイッチングコストを高めることや、エコシステム型のサービス設計が有効だ
  • 継続的なイノベーション:既存の優位性が陳腐化する前に、次の競争優位源泉を開発・育成しておく。ある優位性に安住せず、常に「次の勝ちパターン」を追求する姿勢が不可欠だ

デジタル・AI時代に生まれた競争優位性の新形態

ポーターが3つの基本戦略を提唱したのは1980年代だ。デジタル化・AI化が急速に進む現代では、従来の競争優位性に加えて新たな優位性の源泉が生まれている。これらを理解し戦略に組み込むことが、現代の競争に勝ち残るための鍵となる。

デジタル時代の競争優位性4類型

優位性の種類 具体的な内容 代表的な企業例
データ優位性 競合にない規模・質の顧客データを保有し、精度の高い製品改善・マーケティングを実現する Amazon(購買データ)、Netflix(視聴データ)
プラットフォーム優位性 多数のユーザーが集まるプラットフォームを構築し、ネットワーク効果で参入障壁を高める 楽天市場、メルカリ
AI・自動化優位性 AIを活用したオペレーション自動化や需要予測で、コストと精度の両面で競合を上回る フリマアプリの価格AI、物流最適化AI
エコシステム優位性 複数のサービスを連携させて、ユーザーが他社に乗り換えにくい「囲い込み」環境を構築する Apple(iPhone+App Store+iCloud)

中小企業がデジタル優位性を構築するための現実的なアプローチ

大企業のようにAIやビッグデータを大規模に活用するのが難しくても、中小企業が実践できるデジタル優位性の構築アプローチは存在する。

  • 顧客データの一元管理(CRM導入):顧客情報・購買履歴・問い合わせ履歴を一元化し、個別最適化された提案ができる状態を作る。これが「大手にはない細やかな対応力」という差別化優位につながる
  • SEO・コンテンツマーケティングによる「情報優位性」:特定の専門領域でオウンドメディアを運営し、業界の第一想起として認知されることで、同業他社が真似しにくいブランド資産を構築する
  • 業務自動化による「コスト優位性」:AI・RPAを活用して事務処理・営業管理を自動化することで、人件費比率を下げながらサービス品質を維持する。浮いたリソースをコア事業に集中できる

競争優位性の源泉はどこにある?バリューチェーン分析で特定する方法

自社の競争優位性を「なんとなくある」で終わらせず、どの活動が価値を生み出しているかを可視化するのがバリューチェーン分析だ。マイケル・ポーターが提唱したこのフレームワークは、事業活動を「主活動」と「支援活動」に分解し、コストと価値創出の源泉を特定することを目的としている。

バリューチェーンの主活動・支援活動

区分 活動カテゴリ 内容と競争優位への示唆
主活動 購買物流 原材料・仕入れの調達・在庫管理。仕入先との交渉力やリードタイム短縮がコスト優位につながる
製造・オペレーション 商品・サービスの生産プロセス。効率化と品質管理が差別化優位を生む
出荷物流 完成品の保管・配送。リードタイムや配送品質が顧客満足に直結する
マーケティング・販売 顧客獲得のための活動。ブランド力やSEO・デジタルマーケティングが競争優位の源泉になる
サービス 販売後のサポート・アフターフォロー。スイッチングコストを高め、顧客ロイヤリティを育てる
支援活動 インフラ整備 経営管理・財務・法務。組織全体の意思決定の質が競争力を左右する
人事・労務管理 採用・育成・評価制度。人材の質が模倣困難な競争優位の源泉となる
技術開発 製品・プロセス開発、IT活用。独自技術や特許が強力な参入障壁を作る
調達 設備・サービスの調達活動。調達コストの最適化がコスト優位につながる

自社の競争優位源泉を特定する3ステップ

Step 1:各活動のコストと価値を棚卸しする
主活動・支援活動ごとに、自社がどれだけコストをかけているか・どれだけ価値(差別化・顧客満足)を生み出しているかを整理する。コストが高く価値創出が低い活動は改善対象、コストが低くても高い価値を生む活動が競争優位の核心だ。

Step 2:競合との比較で差異を見つける
同業他社と比較して「どの活動で勝っているか」を明確にする。競合が強い活動に資源を投入しても差がつかない。自社が上回っている活動・競合が苦手な活動に集中投資することで、優位性が拡大する。

Step 3:VRIO分析で持続性を検証する
特定した強み活動が「価値・希少性・模倣困難性・組織適合性」を満たしているかをVRIO分析で検証する。4要素すべてを満たす活動こそが、持続的競争優位の真の源泉となる。

トヨタとAmazonのバリューチェーン優位性

トヨタはトヨタ生産方式(TPS)というオペレーション活動でバリューチェーン優位を構築した。かんばん方式による在庫ゼロ・品質ロスゼロを実現し、製造コストと品質の両面で世界最高水準を達成している。このオペレーション優位は20年以上かけて積み上げた組織知であり、競合が短期間で模倣できない典型例だ。

Amazonはフルフィルメントセンター(物流拠点)とAWS(技術基盤)という複数の活動を同時に強化することで、出荷物流と技術開発の双方でバリューチェーン優位を獲得している。特にAWSは支援活動として自社事業を下支えするだけでなく、独立した収益源として競争優位を多層化させている。

ネットショップ・中小ECが競争優位性を構築するための実践戦略

大企業のブランド・資本力に対して中小ECが正面から競争しても勝ち目はない。しかし、特定の市場・顧客層・商品カテゴリに絞り込んで集中投資する戦略は、規模が小さいからこそ素早く実行できる強みだ。

中小ECが陥りやすいコモディティ化の罠

多くの中小ECがやってしまう誤りは「価格競争への参加」だ。Amazonや大手モールに価格で対抗しようとすると、仕入れコスト・物流コストの規模の経済で必ず負ける。コモディティ化の罠とは、価格以外の差別化軸を持てずに値下げを繰り返し、利益率が低下し続ける悪循環だ。

コモディティ化の罠 症状 競争優位で抜け出す方法
価格競争 値下げしても客が来ない、利益が出ない 専門性・品揃えの独自性で「価格以外の理由で選ばれる」状態を作る
商品のコモディティ化 競合と同じ商品を仕入れ、差別化できない OEM・PB商品開発、希少品・専門品の取り扱いで模倣困難性を高める
情報発信の欠如 検索で見つけてもらえない、リピートしない SEO・オウンドメディアで特定キーワードでの一番手ポジションを確立する
顧客関係の希薄化 一度購入したら再訪しない CRM・メルマガ・LINE公式アカウントでLTV最大化を図る

中小ECが実践できる差別化集中戦略4つ

  • 専門特化による「情報優位性」の構築:特定カテゴリ(例:ヴィンテージ食器、登山用品、職人手作り革製品)に特化したオウンドメディアを運営し、「このジャンルといえばこのEC」という認知を獲得する。SEOで特定のニッチキーワードを独占できれば、広告費ゼロで継続的な集客ができる
  • ストーリーによるブランド差別化:「誰が・どのような背景で作った商品か」「なぜこのECが存在するのか」を徹底的に発信することで、価格比較ではなく「価値観の共鳴」で選ばれるブランドを構築する。職人・生産者との直接取引や、社長・店長のキャラクターを前面に出すことが有効だ
  • カスタマーサービスのパーソナライゼーション:大手モールが提供できない「購入後の手書きメッセージ」「要望に応じたラッピング」「購入者向けの使い方メール」などの細やかな対応が、大手が構造的に真似できない優位性になる
  • リピーターをコミュニティ化する:購入者をLINE公式アカウントやFacebookグループ等で囲い込み、新商品の先行案内・会員限定セールなどで「このコミュニティに属するメリット」を提供する。顧客のスイッチングコストが上がり、価格競争に巻き込まれにくくなる

競争優位性の担保が中小企業には欠かせない

競争優位性の担保が中小企業には欠かせない
競争優位性が高いと、ビジネスにおいて数ある競合と争う際に有利に展開しやすいことがおわかりいただけたと思います。

自社の強みや市場環境をもとに、競争優位性がどういった点で確立できるか、ぜひこの機会に考えてみてください。

自社の競争優位性が見つからない、優位性が低い場合は、3つの基本戦略「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」について事業戦略を俯瞰で見つめなおし、どの市場でなら勝てるのかを再考することをお勧めします。

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