BtoBのSTP分析とは?進め方・具体例と集客施策への活かし方
最終更新日:2026年10月15日
同じ製造業でも、「試作品の加工方法を相談したい企業」と「仕様が決まった量産品の単価を下げたい企業」では、依頼先に求めることが異なります。業種と企業規模が一致していても、自社の強みが選定理由になるとは限りません。
BtoBのSTP分析では、市場を分け、優先して取り組む顧客群を選び、その顧客に何を理由に選ばれるかを整理します。分析後に、営業先、Webサイトの説明、集客するテーマまで具体化することが重要です。
ここでは、BtoBの購買特性を踏まえたSTP分析の進め方を解説します。仮想の金属加工会社の例を使い、分類から市場選定、ポジショニング、集客・営業への反映までをつなげて紹介します。
BtoBのSTP分析とは?企業の課題と選ばれる理由を整理する

STP分析は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つから、マーケティングの方向性を整理するフレームワークです。
- S:セグメンテーション――共通する課題や条件を持つ顧客群に市場を分ける
- T:ターゲティング――自社が優先して取り組む顧客群を選ぶ
- P:ポジショニング――その顧客が比較・選定するときに、自社を選ぶ理由を定める
BtoBでは、企業属性に加え、用途、業務上の課題、既存の設備・システム、購買に関わる人を確認します。分析結果は、優先する営業先や提供内容、訴求する強みを決めるために使います。
BtoCとの違いは、組織としての購買条件も確認すること
BtoBでは、利用する現場、選定を進める担当者、費用を承認する責任者など、複数の人が購買に関わる場合があります。こうした購買関与者のまとまりをDMU(意思決定単位)と呼びます。
同じ製品でも、現場は使いやすさ、管理部門は運用負担、経営層は投資の妥当性を確認するなど、立場によって必要な情報が異なります。
BtoBにも担当者の不安や信頼関係は影響します。また、BtoCでも高額な商品は慎重に比較されます。「法人は合理的、個人は感情的」と分けるより、自社の取引で誰が何を確認しているかを調べることが実務に役立ちます。
対象企業の条件と、その企業内で選定に関わる人の判断基準を合わせて整理することが、BtoBのSTP分析のポイントです。
BtoBのSTP分析を始める前に、受注・失注の理由を集める
分析の材料には、社内にある営業記録や問い合わせ履歴を使えます。既存顧客の共通点だけでなく、失注した案件、対応できなかった相談も確認しましょう。
顧客が必要としていたことと、選ばれた理由を確認する
受注した案件について、次の情報を集めます。
- 顧客の業種、規模、地域、担当部門
- 依頼前に困っていた業務や、導入を検討したきっかけ
- それまで利用していた製品・サービスや代替手段
- 比較された条件と、自社を選んだ理由
- 受注金額、対応工数、継続・追加依頼の状況
営業担当者の推測と、顧客から直接聞いた内容は分けて記録します。「品質が評価された」と考えていても、顧客が選んだ理由は、相談への回答の早さや対応できる範囲だった可能性があります。
失注・対象外の相談から、合わない条件も確認する
価格、納期、対応範囲、取引条件など、どの条件が合わなかったかを確認します。自社に適していても検討時期が先だった案件と、提供内容が合わない案件を区別してください。
受注した顧客だけを見ると、まだ接点を持てていない市場の需要は分かりません。業界情報や企業情報、競合の公開情報、顧客へのヒアリングを加え、確認できていない点を補います。
仮説と確認済みの情報を分ける
分類や市場選定に使う情報には、出典、確認日、未確認事項を残します。分からない項目を、根拠なく「需要が低い」「競合が弱い」と判断しないようにしましょう。
自社の強みを説明する言葉と、顧客が依頼先を選ぶときの言葉が一致しているかを確認すると、分類軸や訴求を考える材料になります。
以降は、「試作段階の加工相談と小ロット製作に対応できる金属加工会社」を仮の例として説明します。実在企業の実績や成果を示すものではありません。
BtoBのSTP分析①|企業属性と課題で市場を分ける
セグメンテーションでは、営業や情報発信の内容を変える必要がある顧客群を整理します。業種・規模を起点にしながら、自社の商材で必要となる分類軸を組み合わせます。
| 分類軸 | 確認する項目の例 | 分類を使う場面 |
|---|---|---|
| 企業属性 | 業種、企業規模、地域、事業内容、拠点数 | 営業できる範囲や、業務上の共通点を整理する |
| 設備・技術環境 | 使用する設備、システム、素材、既存製品、連携条件 | 自社の提供内容が使えるか、何を置き換えるかを確認する |
| 課題・用途 | 解決したい業務、必要な機能、依頼する目的、利用場面 | 提案する価値や、発信するテーマを分ける |
| 検討状況・行動 | 情報収集、比較検討、更新時期、相談内容、過去の接触 | 提供する情報と、連絡するタイミングを調整する |
| 購買体制・条件 | 関係部門、承認の流れ、調達条件、取引開始の要件 | 誰に、どの資料や説明が必要かを整理する |
企業属性による分類はファームグラフィック、導入している技術やシステムによる分類はテクノグラフィックとも呼ばれます。用語を増やすことより、分類した結果として提案や対応が変わるかを確認してください。
金属加工会社の例:製造業の中を依頼目的で分ける
仮の金属加工会社では、製造業の顧客を次のように整理できます。
- 開発・試作段階で、加工方法や素材から相談したい企業
- 仕様が確定した量産部品の調達単価を見直したい企業
- 保守用の交換部品を、必要な数量で継続調達したい企業
同じ業種でも、最初の顧客群には加工可否や相談への対応、次の顧客群には量産時の供給条件、最後の顧客群には継続的な調達方法など、確認したいことに違いがあります。
細かく分けた結果を、実際に使えるか確かめる
分類後は、対象企業を見つけられるか、課題の違いがあるか、営業やWebで接点を持てるか、対応するだけの需要と採算があるかを確認します。
分類によって提案内容や接点が変わるなら、施策に使う意味があります。区分だけが増えて運用が変わらない場合は、分類軸を見直しましょう。
BtoBのSTP分析②|需要・採算・提供力で狙う市場を選ぶ
ターゲティングでは、分類した顧客群のうち、どこへ営業・マーケティングの資源を優先して使うかを決めます。市場規模と、自社の提供内容との相性を合わせて検討します。
| 評価項目 | 判断するために確認すること |
|---|---|
| 需要 | 同じ課題を持つ企業がいるか。相談、調達、導入を具体的に検討しているか |
| 採算 | 受注単価だけでなく、獲得費用、提案・提供の工数、継続性を含めて成立するか |
| 提供力 | 求められる品質、数量、納期、支援範囲などに、自社の体制で対応できるか |
| 選ばれる理由 | 顧客が重視する条件に、自社の技術・体制・実績が合っているか |
| 接点 | 検索、広告、展示会、紹介、個別営業などで、対象企業や担当者へ接触できるか |
| 市場の広がりとリスク | 対象社数、関連用途への展開余地、特定顧客への依存、需要変動をどう見込むか |
評価には、確認できた事実と未確認事項を併記します。点数を付ける場合も、「なぜその評価なのか」を説明できる状態にしてください。
金属加工会社の例:提供できる価値が合う市場から検証する
試作段階の相談と小ロット製作が得意なら、「加工方法を相談しながら試作を進めたい企業」を優先候補にできます。
ただし、得意なだけでは市場として成立するか分かりません。対応できる素材や精度、相談にかかる工数、対象企業の数、依頼頻度を確認します。量産設備や価格条件が合わない市場は、当面の重点対象から外す判断もあります。
市場規模と、実際に獲得できる範囲を区別する
TAM・SAM・SOMを用いて市場規模を考える場合も、市場全体、自社の提供内容で対応できる範囲、期間を定めて獲得を見込む範囲を分けます。
規模を推定するときは、対象社数や想定する取引額などの根拠と、推定条件を残しましょう。市場全体の金額が大きくても、そのすべてが自社の営業対象になるわけではありません。
狭い市場を選ぶ場合も、需要・採算・提供力の確認が必要です。競合が少ないことや、ポジショニングマップに空白があることだけでは、顧客がいる根拠になりません。
市場・顧客・競合・自社の強みを整理する際は、キャククルで提供している3C・STP分析などのワークシートも活用できます。
BtoBのSTP分析③|顧客が比較する基準から強みを伝える
ポジショニングでは、優先する顧客が依頼先を比較するときに、自社を何で選んでもらうかを定めます。顧客の課題、比較される相手、自社が提供できる内容を照合して考えます。
競合には、別の会社に加えて代替手段も含める
顧客の選択肢は、同じサービスを提供する会社だけとは限りません。内製、既存取引先への継続依頼、別の技術や仕組みの利用、導入の見送りも比較対象になります。
受注・失注の記録や顧客への確認から、実際に何と比較されていたかを調べましょう。
ポジショニングマップの軸は、選定に使われる条件から決める
マップを作る場合は、顧客が依頼先を選ぶときに重視する条件から2つの軸を選びます。金属加工会社の仮の例なら、「試作段階の相談への対応範囲」「対応するロットの範囲」などが候補になります。
各社の位置は、公開されている対応内容や確認できた情報をもとに置きます。不明な項目を推測で低く評価せず、調査中として残してください。顧客がその違いを重視するかも確認します。
強みは、提供できることと根拠をセットで表す
「高品質」「柔軟に対応」といった言葉だけでは、対応範囲を判断しにくくなります。何に対応できるか、どの条件があるか、何を根拠に説明できるかを具体化します。
仮の金属加工会社であれば、次のような表現が考えられます。
「加工方法が決まっていない開発・試作段階の企業に向けて、素材・形状・加工方法の相談から小ロット製作まで対応する」
実際に発信する際は、対応素材、加工方法、相談の進め方、確認が必要な条件、公開できる製作例などで裏付けます。
STP分析の記入例:試作加工に対応する金属加工会社
ここまでの仮の例をまとめると、次のようになります。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| S:市場の分類 | 試作段階の加工相談、仕様確定後の量産調達、保守用部品の継続調達など、依頼目的で分ける |
| T:優先する顧客群 | 対応可能な素材・精度・数量の範囲で、加工方法を相談しながら試作を進めたい企業。需要と採算は別途確認する |
| P:選ばれる理由 | 試作段階の相談から小ロット製作まで対応できることを、対応範囲・進め方・製作例で示す |
誰の、どの課題に、何を提供できるのかを一続きで説明できる状態にすると、Webサイトや営業資料へ反映しやすくなります。
BtoBのSTP分析を、集客と営業の行動に変える

STP分析後は、集客する相手、伝える情報、営業の優先順位を具体化します。分析資料と実際の施策を照合し、変更する箇所を決めましょう。
| 施策 | STP分析から反映すること | 試作加工の仮の例 |
|---|---|---|
| サービスページ・LP | 対象顧客、対応する課題、提供範囲、選ばれる理由 | 試作相談への対応、加工可能な条件、相談から製作までの流れを示す |
| SEO・コンテンツ | 対象顧客が検討中に調べる課題や選定条件 | 試作加工の依頼方法、加工方法の選び方、相談時に必要な情報を扱う |
| 広告・展示会・紹介 | 対象企業との接点、訴求する用途、遷移先や案内資料 | 試作に関わる担当者へ、量産価格以外の対応価値を伝える |
| 営業・問い合わせ対応 | 優先する案件、確認する条件、提案する内容 | 素材、形状、数量、仕様の確定状況、相談したい点を確認する |
検索キーワードは、対象顧客が判断するための情報と結び付ける
検索数に加え、検索結果に並ぶ内容と、顧客が知りたいことを確認します。対象とする用途や課題に合ったページを用意し、自社で対応できる条件も説明してください。
公開後は、実際の検索クエリ、流入ページ、問い合わせ内容を確認します。検索されている言葉と、営業で使われる言葉の違いも見直す材料になります。
資料請求と相談を、検討状況に合わせて用意する
情報を集めたい段階には、対応範囲や依頼方法の資料が役立ちます。具体的な案件がある顧客には、相談や見積もりへ進める導線を用意します。
すべての情報をフォーム入力後に限定すると、比較に必要な内容を読めないことがあります。Web上で公開する情報と、詳しい資料として提供する情報を分けて考えましょう。
営業リストやABMにも、選定した条件を反映する
ABM(アカウントベースドマーケティング)に取り組む場合は、STP分析で決めた条件から重点企業を選び、その企業の関係部門や課題に合わせて接点をつくります。
営業リストには、企業名に加え、対象に選んだ理由、確認できた課題、次に必要な情報を残します。MAなどで行動履歴を使う場合も、資料を閲覧したことだけで購買意欲が高いと判断せず、自社との適合と検討状況を確認してください。
対象のずれと、説明不足を分けて検証する
対象外の相談が多ければ、媒体、キーワード、発信内容、対応条件の見せ方を確認します。対象に合う企業が来ているのに商談が進まない場合は、判断材料、初回対応、費用や納期などの条件を確認しましょう。
問い合わせ数だけでなく、狙った顧客からの相談か、商談・受注に進んだかを追うことで、分類・市場選定・訴求・対応のどこを見直すか判断しやすくなります。
市場や用途ごとに流入元、相談内容、受注・失注理由を記録し、自社の検討期間に合わせて確認してください。
BtoBのSTP分析に関するよくある質問
企業規模や業種だけでターゲットを決めてもよいですか?
最初の絞り込みには使えますが、同じ業種・規模でも課題や用途、取引条件は異なります。受注・失注の理由を確認し、提案内容や営業の優先順位が変わる条件を加えて整理しましょう。
STP分析とペルソナは、どちらを先に考えますか?
まず、対象とする市場や企業の課題を整理し、その企業内で購買に関わる人を具体化すると進めやすくなります。ただし、一度決めて終わりではありません。担当者へのヒアリングで分かったことを、市場の分類や訴求にも反映します。利用者、選定担当者、承認者を一人の人物像にまとめすぎないことも必要です。
中小企業でも、市場を一つに絞る必要がありますか?
必ず一つに限定する必要はありません。提供体制や予算に合わせて、重点的に取り組む市場と、既存の対応を続ける市場を分ける方法もあります。新しい市場へ集中する場合は、対象社数、採算、顧客への到達方法、特定顧客への依存を確認してください。
データが少ない場合は、STP分析をどう進めればよいですか?
少数の受注・失注記録、顧客の声、競合の公開情報などから仮説をつくれます。その段階では確定事項として扱わず、追加のヒアリングや小さな施策で検証します。調べた範囲、分からない点、次に確認することを残しましょう。
STP分析は、どのタイミングで見直しますか?
新製品・新サービスの投入、対象市場の変更、競合や顧客の条件の変化、対象外の相談や失注理由の増加などが見直しのきっかけになります。定例で確認する機会を設けつつ、重要な変化があればその都度、分類や優先市場、訴求が合っているかを確認してください。
BtoBのSTP分析で見つけた強みを、必要とする顧客に届ける

BtoBのSTP分析では、企業属性と課題で市場を分け、需要・採算・提供力から優先する顧客群を選びます。その顧客が比較する条件に合わせて、自社を選ぶ理由と根拠を整理しましょう。
分析後は、営業先、Webサイトの説明、集客テーマ、問い合わせ対応へ反映します。対象外の相談や失注の理由も確認し、必要に応じて分析と施策を修正してください。
強みを評価する顧客がいる領域を選び、情報発信する
試作段階の相談に対応できる加工会社なら、その対応を必要とする企業へ、相談できる範囲や進め方を伝える。専門的な運用支援が強みなら、その支援が必要になる業務や状況を示す。こうした具体化が、集客する相手と営業で提案する内容をそろえるために役立ちます。
自社の強みを必要とする顧客がいる領域を選び、その領域で選ばれる理由を伝えるのが、ニッチトップマーケティングの考え方です。需要や採算を確認しながら、重点的に取り組む市場と訴求を定めます。
ポジショニングをWeb上で伝える方法も検討する
選定した市場で、顧客が課題や依頼先を調べているなら、検索や比較検討の場で判断材料を届ける方法を検討できます。サービスサイト、コンテンツSEO、広告、専門メディアなどから、対象顧客との接点に合う施策を選びます。
キャククルを運営するZenkenでは、顧客・競合・自社の強みを調査し、対象市場と訴求を踏まえたWeb集客を支援しています。ポジショニングメディアは、その方針を実行する手段の一つです。
ポジショニングメディアでは、対象顧客が抱える課題、製品・サービスの選び方、各社の対応内容などを伝え、比較検討を支援します。サービス内容と導入事例はこちらで確認できます。
STP分析で決めた顧客像と、現在の問い合わせ内容が合っていない場合は、集客する場所と伝えている情報を一緒に見直すことが必要です。
「分類まではできたが優先市場を決められない」「自社の強みをどの顧客へ伝えるべきか分からない」「分析しても対象外の問い合わせが続く」といった場合は、現在の分析内容と集客方法をお聞かせください。











