製造業(メーカー)の営業戦略は「売り込む」から「選ばれる設計」へ

製造業(メーカー)の営業戦略は「売り込む」から「選ばれる設計」へ

製造業(メーカー)の営業現場では、展示会や紹介をきっかけに商談は生まれるものの、新規開拓が安定せず、営業成果が積み上がりにくいという状況が珍しくありません。
実際に、
・展示会後のフォローが属人化している
・問い合わせは来ても、比較検討の途中で失注する
・営業が毎回、同じ説明を繰り返している
といった状態に心当たりのある企業も多いのではないでしょうか。

こうした状況で見直すべきなのは営業のテクニックや人員体制ではなく、比較検討や稟議の段階で“選ばれる理由”を事前につくれているかという点です。

製造業の営業戦略は、売り込むことを前提とした進め方から検討段階で自然と選ばれる状態を設計する考え方
転換する必要があります。

本記事では、製造業(メーカー)の営業戦略を「売り込む」から「選ばれる設計」へ見直すための考え方と、その中でBtoBデジタルマーケティングが果たす役割を整理します。

製造業(メーカー)の今後の市場動向と見通し

製造業の今後の市場動向と見通し

製造業を取り巻く環境変化と営業戦略の前提が変わっている理由

製造業を取り巻く環境は、原材料や部品の調達が不安定になったり、海外に依存していた供給網が思うように機能しなくなったりと、これまで当たり前だった前提が崩れやすい状況になっています。

経済産業省が公表した「2025年版ものづくり白書(概要)」(※)でも、製造業の競争力強化に向けては、単なる技術力や安定供給に留まらず、脱炭素(GX)、経済安全保障、デジタル化(DX)を複合的に追求する必要が示されています。
※参照元:経済産業省「2025年版 ものづくり白書」(pdf)https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2025/pdf/gaiyo.pdf

これは、発注側が製造業を評価する際に、価格や技術力といった単一の軸だけでなく、事業継続性や対応力、将来リスクまで含めて比較・判断する前提に変わってきていることを意味します。

また、経済産業省の業況判断や営業利益の推移を見ると、製造業全体としては営業利益が回復傾向にある一方で、企業規模や業種によって業況感には差が生じています。

経済産業省「2025年版 ものづくり白書」
引用元:経済産業省「2025年版 ものづくり白書」(pdf)https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2025/pdf/gaiyo.pdf

製造業の営業利益は回復しているものの、業況判断では大企業を中心に足元で悪化の兆しも見られ、業績が改善している企業と、そうでない企業の二極化が進んでいる状況です。

このような局面では、発注側企業は「どこからでも調達する」という判断を取りにくくなり、調達リスクを抑えるために取引先をより慎重に比較・検討する必要が生じます。
結果として、製造業にとっては安定供給や価格競争力に加えて、なぜ自社を選ぶべきなのかを、第三者にも説明できる材料が、これまで以上に求められるようになっています。

一方で、製造業ではDXやデータ活用の遅れが課題として挙げられることも多く、自社の強みや体制、対応力が営業担当者の説明や経験に依存してしまっているケースも少なくありません。
このような状況では営業担当者が個別に頑張るだけでは限界があり、商談の場で説明することよりも前に、比較検討や稟議の段階で「選ばれる理由」が共有されている状態をつくれているかどうかが、現在の製造業における営業成果を大きく左右するようになっています。

なぜ製造業(メーカー)の営業は成果が出にくくなっているのか

製造業の営業戦略の課題

製造業では、発注側が品質や納期、取引実績を重視する傾向が強く、一度取引が始まると発注先が固定されやすい特徴があります。既存の取引先に大きな問題がなければ、あえて新しい発注先に切り替える判断が行われにくいため、結果として新規開拓が起きにくい構造になっています。
近年は、発注側が調達リスクを意識する場面が増え、取引先選定のハードルが高まっています。価格や納期だけでなく、事業継続性や対応力、将来リスクまで含めて比較される中で、新規で候補に入ること自体が難しくなっているのが実情です。
実際の営業現場では、比較検討の段階において「知名度がある会社」や「実績が分かりやすい会社」が有利になりやすく、ネームバリューで比較負けするケースが生まれています。

また、検討期間が長い取引ほど、社内稟議や関係部署への説明が必要になります。「なぜこの会社を選ぶのか」を第三者に説明できる材料が不足していると、価格や条件面で大きな差がない限り、最終的に選ばれにくくなってしまいます。
そのため、営業担当者が商談の場でどれだけ丁寧に説明しても、比較検討や稟議の段階で情報が十分に共有されておらず、営業が毎回ゼロから説明し直す状態に陥りがちです。

結果として、新規開拓が思うように進まない、価格競争に巻き込まれやすい、問い合わせがあっても成約につながらないといった課題が、個別の努力とは関係なく発生しやすくなっています。

つまり現在の製造業では、営業個人のスキルや行動量の問題というよりも、営業を頑張っても成果が積み上がらない構造そのものが、営業戦略上の大きな課題になっているのです。

製造業(メーカー)の営業戦略で見直すべきポイント

製造業の営業戦略というと、テレアポや訪問営業、展示会出展、あるいはWeb施策など、具体的な営業手法の話になりがちです。しかし、前章で見てきたように、営業成果が出にくくなっている背景は、個人の営業手法の良し悪しだけで片づけられるものではありません。

現在の製造業では、発注側企業が慎重に比較検討を行うことが前提となっており、商談の場に進む前から、発注側の社内で候補企業がある程度絞られているケースが少なくありません。そのため、営業担当者が発注側と接点を持った時点で、すでに「比較対象として残らない会社である」と判断されていることもあります。

発注側が比較検討を行う初期段階で重視されているのは、営業トークの巧さや訪問回数ではなく「なぜこの会社が候補に挙がっているのか」を説明できる情報が揃っているかどうかです。比較検討の材料が不足していれば、どれだけ丁寧な営業活動を行っても、検討の土俵に残ることは難しくなります。

つまり、いま見直すべきなのは営業手法そのものではなく、発注側からどのように比較され、どのような理由で候補に残るのかという「比較検討のされ方」です。商談の成否は、商談の場で決まるのではなく、その前段階でほぼ方向づけられていると捉える必要があります。

このように考えると、製造業における営業戦略とは、営業担当者の動き方を最適化することではなく、比較検討や稟議の中で「選ばれる状態」をあらかじめ設計しておくことだと言えます。営業戦略を「売り込むための手段」として捉えるのではなく、選ばれ方を設計する取り組みとして再定義することが、いま求められています。

製造業(メーカー)の営業戦略はどう設計すべきか

現在の製造業では、商談の場でどれだけ説明するかよりも、比較検討や稟議の段階でどのような情報が共有されているかが、営業成果を大きく左右します。そこで重要になるのが、営業活動を始める前に、発注側の判断に使われる情報をあらかじめ整えておくという考え方です。

多くの製造業では、自社の強みや価値が営業担当者の説明に強く依存しています。その結果、担当者が変わるたびに説明内容がブレたり、商談の場にいない関係者へ十分に伝わらなかったりするケースが少なくありません。強みが「営業トーク依存」になっている状態では、比較検討や稟議の場で判断材料として共有されにくく、結果として候補として選定されにくくなります。

また、多くの製造業では、Webサイトが会社案内や製品カタログの役割に留まり、比較検討や稟議の場で使われる営業資料として十分に機能していません。本来、公式Webサイトは発注側が比較検討を進める中で繰り返し参照され、社内説明や稟議資料の代わりとして使われる重要な情報源です。営業が説明しなくても、判断に必要な情報が整理されているかという視点で、公式Webサイトの役割を見直す必要があります。

さらに、稟議や社内検討の場では、「なぜこの会社なのか」を第三者に説明できる情報が求められます。実績、体制、対応力、考え方、リスクへの向き合い方などが断片的にしか示されていない場合、最終的な判断は価格や条件に引きずられやすくなります。稟議でそのまま使える形で情報が揃っているかどうかが、選ばれるかどうかの分かれ目になります。

つまり「選ばれる営業戦略」とは、営業担当者の動き方を工夫することではなく、比較検討や稟議の中で使われる情報を先に設計しておくことです。発注側が迷わず判断できる状態をつくれているかどうかが、営業成果を安定させる鍵になります。

こうした考え方を、製造業向けに体系的に整理したものが、製造業のブランディングです。ここでいうブランディングとは、認知を広げることではなく、比較検討や稟議の場で「そのまま選定理由として使える材料」を揃え、納得して選ばれる状態をつくることを指します。
製造業におけるブランディングの具体的な考え方や設計方法については、以下のページで詳しく解説しています。

製造業のブランディングとは?
比較検討・稟議で“納得して選ばれる状態”をつくる方法

製造業(メーカー)における営業成果につながるBtoBデジタルマーケティングの役割

製造業の営業戦略にBtoBデジタルマーケティングを取り入れる

製造業の営業成果を左右しているのは、比較検討や稟議の段階でどのような情報が共有されているかという点です。この前提に立つと、BtoBデジタルマーケティングの役割も、単なる集客手段として捉えるべきではありません。

製造業におけるBtoBデジタルマーケティングの本質的な役割は、営業担当者が行ってきた説明を、事前に肩代わりさせることにあります。発注側が検討を始めた段階で、自社の強みや考え方、体制、実績が整理された形で伝わっていれば、商談の場では「初めて説明する」必要がなくなります。営業は説得から確認へと役割を変えることができます。

また、デジタルを活用することで、発注側がどの情報に関心を持ち、どの段階まで検討が進んでいるのかを把握しやすくなります。すべての問い合わせを同じ温度感で扱うのではなく、検討度の高い顧客を見極めたうえで営業リソースを配分できる点も、営業成果を安定させるうえで重要です。

このように、BtoBデジタルマーケティングは、営業活動を効率化するための施策ではなく、比較検討や稟議のプロセスに営業が適切に介入できる状態をつくるための仕組みだと言えます。Webサイト、マーケティングオートメーション(MA)、広告などは、あくまでそのための手段に過ぎません。

重要なのは、どのツールを使うかではなく、発注側の判断に必要な情報が、適切なタイミングで共有される設計になっているかどうかです。営業成果につながるBtoBデジタルマーケティングとは、その設計を支える役割を担うものなのです。

この営業戦略が向いている製造業・向いていない製造業

ここまで紹介してきた「選ばれ方を設計する営業戦略」は、すべての製造業に当てはまる万能な手法ではありません。営業成果につなげるためには、自社の事業構造や商流に合っているかどうかを見極めたうえで取り入れることが重要です。

まず、この営業戦略が向いているのは、発注側の比較検討期間が長く、検討プロセスが複雑になりやすい製造業です。技術内容や製造体制、品質管理、対応力など、営業担当者の説明だけでは十分に伝えきれない要素が多い場合、比較検討や稟議の中で使われる情報を事前に整えておくことが大きな意味を持ちます。また、価格だけで判断される状況から脱し、技術力や対応力、考え方といった要素で選ばれたいと考えている企業にも適しています。

一方で、この営業戦略が向いていないケースもあります。たとえば、発注判断が非常に早く、価格や納期だけで即決される取引が中心の場合や、下請け構造が固定されており、直販や新規開拓を前提としていない事業モデルでは、比較検討や稟議向けの情報設計が成果に結びつきにくいこともあります。こうした場合は、別の営業戦略を検討したほうが合理的です。

重要なのは、このように向き・不向きを明確にすること自体が、営業戦略の一部だという点です。すべての企業に当てはまると言い切るのではなく、あらかじめ適した企業像を示すことで、自社に合った取り組みかどうかを冷静に判断できるようになります。この選別こそが、結果的に信頼につながり、成果につながる営業戦略を築く土台になります。

まとめ:製造業(メーカー)の営業戦略は「売り方」より「選ばれ方」で決まる

製造業の営業戦略まとめ

本記事では、製造業の営業成果が出にくくなっている背景として、営業手法そのものではなく、比較検討や稟議の中での「選ばれ方」に課題があることを整理してきました。商談の場で何を話すか以前に、発注側がどのような情報をもとに候補を絞り、判断しているのかを理解することが、営業戦略を見直す出発点になります。

営業成果を変えたい場合、まず営業のやり方を変えようとしがちですが、実際には営業を変える前に、マーケティングの設計を見直す必要があります。比較検討や稟議で使われる情報が整理されていなければ、どれだけ営業活動を工夫しても成果は安定しません。

そして、マーケティングを設計するとは、集客施策を増やすことではなく、どのように比較され、どの理由で選ばれるのかを明確にすることです。この考え方を突き詰めたものが、製造業におけるブランディング、つまり「選ばれ方の設計」です。

営業戦略を見直したいと考えたときは、営業施策から考えるのではなく、マーケティング、そしてブランディングへと立ち戻り、この順番で全体を捉え直すことが重要になります。

製造業のマーケティング全体像について整理したい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
また、比較検討や稟議で“納得して選ばれる状態”をつくるための具体的な考え方については、製造業ブランディングの記事で詳しく解説しています。

製造業マーケティングの全体像を整理する製造業のブランディングとは?
比較検討・稟議で“納得して選ばれる状態”をつくる方法

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