5P分析のやり方と4P分析との違い 業種別の活用事例でわかるマーケティング戦略
最終更新日:2026年05月08日
この記事では、自社のマーケティングミックスの明確化に役立つ「5P分析」の概要と、名前が似ている「4P分析」の違いを解説しています。自社のマーケティング戦略を改善して営業効率化を図りたい方は参考にしてみてください。
なお、5P分析はあくまでもマーケティング戦略を策定する流れの一部で、ターゲット顧客や競合環境などが把握できた後で行う作業です。自社のマーケティング戦略を全体的に見直したいという方には、自社・顧客・競合を整理していく「3C分析」から始めることをおすすめします。
競合にはない、自社だけの強みをどの顧客にアピールすべきかを明確にしてからマーケティングミックスを決める4P分析を行うことで、一貫性のある戦略ができやすくなります。
下記のページには3C分析が記入するだけで簡単に進められるワークシートを用意しておりますので、ぜひ活用してみてください。
5P分析とは、4P分析(Product・Price・Place・Promotion)に自社の課題に合った5つ目のPを加え、マーケティング戦略を設計するフレームワークです。People・Processなどのソフト面を戦略に組み込むことで、BtoBやサービス業での差別化と成約率の向上に力を発揮します。
本記事では、5P分析の定義から4Pとの違い、業種別に見た5つ目のPの選び方、さらに分析結果を4C分析で実行施策へ落とし込む手順までを解説します。
5P分析の定義と4P分析との基本的な違い
5P分析は、マーケティングミックスの基本である4P分析をベースに「自社にとって重要な5つ目のP」を追加したフレームワークです。分析対象を拡張することで、4Pだけでは見落としがちな要素を戦略に組み込めます。

4P分析に新要素をプラスした思考の枠組み
5P分析は、米国のマーケティング学者エドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱した4P分析の枠組みを拡張したものです。市場環境が複雑化するなかで、従来の4要素だけでは競合との差別化が難しくなったことから、5つ目の視点を加えるアプローチとして広まりました。
追加する5つ目のPにはPeople(人々)、Process(業務プロセス)、Physical evidence(物的証拠)などがあり、自社の業種や事業特性に応じて選択します。決まった1つの正解があるわけではなく、自社の強みと市場ニーズが合致する要素を選ぶことが重要です。
4P分析を構成する4つの基本的要素
5P分析の土台となる4Pは、以下の4要素で構成されるマーケティングミックスの基本です。
- Product(製品・サービス):顧客に提供する製品やサービスの特徴、品質、アフターサービスなどの要素
- Price(価格・料金):製品の価格設定、割引条件、支払い方法に関する要素
- Place(流通・チャネル):製品とターゲットが接点を持つ流通経路や販売チャネルに関する要素
- Promotion(販促・広告):ターゲットへのアプローチ方法や広告手段、営業戦略に関する要素
4P分析の各要素については、4P分析とは?事例から学ぶマーケティング戦略立案のヒントで詳しく解説しています。
5P分析を実施する前の準備とSTP分析との関係
5P分析の精度を高めるには、実施前に3C分析とSTP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)で市場環境と自社の立ち位置を明確にしておく必要があります。この事前準備を省くと、5つ目のPの選定が的外れになるリスクがあります。

3C分析による市場環境の把握
5P分析に入る前に、まず3C分析で市場全体を俯瞰します。自社(Company)の強みと弱み、競合(Competitor)の戦略と差別化ポイント、顧客(Customer)のニーズと購買行動を整理することで、どのような5Pの組み合わせが有効かの仮説を立てることができます。
特にBtoB企業の場合、顧客の意思決定プロセスが複雑であるため、顧客企業の課題や組織構造まで踏み込んだ分析が欠かせません。たとえば「競合がカバーしていない領域は何か」「顧客が最も重視する選定基準は何か」を明確にすることで、5P分析の方向性が定まります。
セグメンテーションとターゲティングによる市場の絞り込み
3C分析で市場を把握した後は、STP分析のセグメンテーションとターゲティングで「誰に売るか」を明確にします。ターゲットが定まらない状態で5P分析を行うと、どの顧客層にも響かないマーケティングミックスになりかねません。
中小企業においては、市場を細かく分割したうえで自社のリソースで勝てるセグメントに集中する戦略が有効です。
差別化の核となるポジショニングの確立
ターゲットを定めた後は、競合に対してどのような立ち位置で勝負するかを定義するポジショニングを設定します。価格、品質、サービスの手厚さ、専門性など、どの軸で差別化するかを決めることが5P分析の方向性を左右します。
ポジショニングが明確であれば、5つ目のPの選定もおのずと絞り込まれます。たとえば「専門性」で差別化する企業であれば、People(専門人材)やPhysical evidence(実績・資格)が自然な選択肢となります。
5P分析をマーケティング戦略に取り入れるメリット
5P分析を活用する最大のメリットは、4Pのマーケティングミックスだけではカバーしきれない「ソフト面」の要素を戦略に組み込める点です。分析対象が広がることで、競合との差別化ポイントを多角的に設計でき、成約率向上にもつながります。
サービス業やBtoBで重要視されるソフト面の補完
形のある製品(Product)と異なり、サービス業やBtoBビジネスでは「人の対応力」や「業務プロセスの透明性」が顧客の意思決定を大きく左右します。4P分析ではこうしたソフト面を体系的に扱いにくいですが、5P分析でPeopleやProcessを加えることで、見えにくい競争優位性を戦略の中心に据えることが可能です。
コンサルティング会社であればコンサルタントの専門知識、SaaS企業であればオンボーディングプロセスの質が、顧客の契約判断に直結する要素となります。
競合他社との差別化ポイントの多角化
Product(製品機能)やPrice(価格)だけで差別化を図ろうとすると、競合も同じ方向で対抗してくるため、やがて同質化が進みます。5P分析を導入すれば、「人材の質」「納品プロセスの速さ」「導入実績の見える化」など、競合が模倣しにくい領域で優位性を築くことが可能になります。
特に中小企業は大手と同じ土俵(価格やPromotion予算)で戦うよりも、5つ目のPで「選ばれる理由」を作るほうが成果につながりやすいです。
顧客体験(CX)の向上と成約率への寄与
5P分析は、顧客が商品やサービスに接触する各タッチポイントの質を高めることにもつながります。問い合わせ時の対応速度(Process)、担当者の専門性(People)、導入実績や認証の提示(Physical evidence)など、接点ごとの体験を設計することで、顧客の信頼を獲得し成約率の向上を実現します。
自社の課題に合わせて選択する5つ目のPの候補
5つ目のPには決まった正解はなく、自社の業種・ターゲット・差別化ポイントに応じて選択します。代表的な候補はPeople(人々)、Process(業務プロセス)、Physical evidence(物的証拠)、Package(包装・デザイン)の4つです。

人的リソースが鍵となるPeople(人々)
People(人々)は、製品やサービスに関わるすべての人を分析対象とする要素です。対象は顧客だけでなく、自社の従業員、販売パートナー、提携先の企業にまで及びます。
特にBtoBでは営業担当やカスタマーサポートの質が成約に直結するため、人材育成や採用方針そのものがマーケティング戦略の一部といえます。「誰が対応するか」で競合と差がつく業態には、Peopleが最適な5つ目のPとなります。
顧客の購買体験を左右するProcess(業務プロセス)
Process(業務プロセス)は、製品の製造から販売、顧客の手元に届くまでの一連の流れを分析する要素です。申し込みの簡便さ、見積もりの迅速さ、納品までのリードタイムなどが該当します。
顧客が「手間なくスムーズに取引できた」と感じれば、リピートや紹介につながります。プロセスの見直しは、顧客が感じる製品・サービスの価値を底上げする効果があります。
安心と信頼を可視化するPhysical evidence(物的証拠)
Physical evidence(物的証拠)は、自社の製品やサービスの品質を目に見える形で示す要素です。導入企業の実績一覧、第三者機関の認証、顧客の声、清潔感のある店舗やオフィスなどが該当します。
BtoBの取引では、導入事例や業界シェアの提示が決裁者の安心材料になります。信頼性を「見える化」する仕組みが整っているかどうかが、商談の成否を分けるケースは少なくありません。
視覚的な訴求力とブランドを象徴するPackage(包装・デザイン)
Package(包装・デザイン)は、製品の外観やパッケージ、さらにはBtoBにおける提案資料のデザインやWebサイトのUI/UXまでを含む要素です。
顧客が最初に目にするのは製品そのものよりも、資料やWebサイトであることが大半です。第一印象でブランドの信頼性を伝えるために、デザインの質を戦略的に管理することが求められます。営業戦略の立て方とは?役立つフレームワークや事例を紹介の記事もあわせてご参照ください。
業種別に見る5つ目のPの選び方と活用事例
5つ目のPは業種や事業モデルによって最適な選択肢が変わります。自社の「勝負どころ」を見極め、成約に直結するPを選ぶことが5P分析を実務に活かす鍵です。以下に具体例を挙げて解説します。
IT・コンサルティング等のBtoB企業はPeopleやProcessを重視
ITサービスやコンサルティングなど、形のないソリューションを提供するBtoB企業では、PeopleとProcessが成約率に大きく影響します。
たとえばIT企業が営業担当の専門資格取得を推進し、初回商談での技術的な回答精度を高めた結果、商談からの成約率が改善した事例があります。また、見積もりから契約までのプロセスを短縮し、顧客の検討期間中に競合に流れるリスクを抑える施策も有効です。専門性と対応スピードの両面で信頼を獲得することが、BtoB企業における5P戦略の核になります。
飲食店・サロン等の店舗ビジネスはPhysical evidenceを活用
飲食店や美容サロンなど、顧客が実際に足を運ぶ店舗ビジネスでは、Physical evidence(物的証拠)の活用が集客に直結します。
店内の清潔感、内装の雰囲気、食材の産地表示、衛生管理の掲示などが顧客の安心感と満足度に影響します。来店前にGoogleマップの口コミや店舗写真を確認する顧客が増えているため、オンライン上での「見える化」も重要なPhysical evidenceのひとつです。食材の産地情報や衛生管理の取り組みをWebサイトやSNSで発信し、来店前の信頼構築につなげる店舗も増えています。
製造業・メーカーはPackageやProcessで付加価値を向上
製造業においては、PackageとProcessを強化することで、製品そのものの競争力にとどまらない付加価値を生み出せます。
製品カタログや梱包のデザインを刷新して専門性と信頼感を訴求した具体例や、受注から納品までのリードタイムを短縮して顧客満足度を高めた事例があります。ある製造メーカーでは、自社の技術力を動画や写真でわかりやすく発信するプロセス改善により、新規問い合わせ件数を大幅に伸ばしています。
5P分析を成功させるための注意点と失敗パターン
5P分析は有用なフレームワークですが、各要素間の矛盾や顧客視点の欠如によって機能しなくなるリスクがあります。分析をただの机上の空論にしないために、陥りがちな失敗パターンとそのデメリットを押さえておきましょう。

各要素間における一貫性と矛盾の確認
5Pのなかに矛盾があると、顧客は違和感を抱きます。たとえば高品質を訴求する製品なのに価格が極端に安い、専門性をうたっているのに対応が不十分など、要素間の不整合はブランドの信頼を損ないます。
5つの要素を並べた際にひとつのメッセージとして一貫性があるかどうかを必ずチェックしましょう。矛盾が見つかった場合は、ポジショニングに立ち返って優先順位を再設定します。
売り手都合の分析に陥る「プロダクトアウト」のリスク
5P分析のすべての要素が「売り手目線」に偏ると、顧客が本当に求めている価値から乖離した施策になりがちです。分析結果を検証する際には、「この5Pの組み合わせは、顧客にとってどのような価値を生むか」という問いを常に持つことが重要です。
実際に売り出してみると想定外のターゲットからの反応がある場合もあります。市場の反応を見ながらPDCAを回す意識を忘れないようにしましょう。
デジタルマーケティング特有のリアルタイム性と予測の反映
デジタル領域では、CDPベンダーの米国Lytics社が提唱する新しい5Pの視点も参考になります。Personalized(パーソナライズ)、Pervasive(普遍性)、Present(リアルタイム性)、Proprietary(独自性)、Predictive(予測)という5つの要素です。
これらの視点を従来の5P分析に取り入れる際は、自社のデータ基盤やリソースの状況を踏まえて段階的に導入するのが現実的です。すべてを一度に導入しようとすると分析が複雑化し、かえって実行力が落ちるデメリットがあります。
※参照元:アンダーワークス株式会社「デジタルマーケティングにおける新しいフレームワーク”5P”とは」(https://www.underworks.co.jp/dmj/2019/09/26/cdp_lytics_five_p)
5P分析の結果を実行施策(4C分析)へ落とし込む手順
5P分析の成果を最大化するには、企業視点(5P)の分析結果を顧客視点(4C)に変換し、具体的な実行施策とKPIに落とし込むことが不可欠です。市場調査から得た知見を顧客価値へ再定義するプロセスを解説します。
5Pの各要素を顧客価値(4C)の視点で再定義
4C分析は、5Pの各要素を顧客の視点から捉え直すフレームワークです。Productは「Customer Value(顧客にとっての価値)」、Priceは「Cost(顧客が負担する総コスト)」、Placeは「Convenience(利便性)」、Promotionは「Communication(対話)」に変換します。
5つ目のPについても同様に顧客視点で再定義します。たとえばPeople(人々)は「信頼できる担当者がいるか」、Process(業務プロセス)は「手間なく取引できるか」という顧客の判断基準に置き換えて施策を設計します。
具体的なプロモーション施策とKPIの設定
4Cへの変換が完了したら、各項目に対する具体的な施策とKPIを設定します。たとえば「Communication(対話)」の強化策として、オウンドメディアでの情報発信やWeb広告の活用が挙げられます。
KPIはWebサイトへの流入数、問い合わせ件数、商談化率、成約率といった段階的な指標を設けると、施策の効果検証を正確に行えます。WEB広告戦略の立て方 基本的なマーケティングフレームワークも紹介の記事もあわせて参考にしてください。
5P分析を活用したマーケティング戦略立案のまとめ

5P分析の本質は、要素を増やすことではなく、自社の強みと市場ニーズが合致する「勝負どころのP」を特定し、一貫性のあるマーケティングミックスに昇華させることにあります。市場調査と3C分析で環境を把握し、STP分析で戦略の土台を固めた後に5P分析で実行戦略を設計し、さらに4C分析で顧客視点の打ち手に仕上げる——この一連のプロセスが、成約につながるマーケティング戦略を生み出します。
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