中小企業が事業拡大するべきタイミングと成功させるコツ
最終更新日:2025年07月18日

変化の激しい時代において、中小企業が成長を続けるには「事業拡大」が欠かせません。
しかし、どんな企業にも当てはまる正解はなく、戦略や資金計画、リスク管理など多角的な視点が求められます。
この記事では、事業拡大の考え方や代表的な手法、成功と失敗を分けるポイント、活用できる補助金や支援制度まで、幅広くわかりやすく解説します。
今の事業をさらに伸ばしたい方も、新しい分野にチャレンジしたい方も、まずは自社にとってベストな一歩を見つけてみませんか。
目次
事業拡大とは?中小企業にとっての意味と全体像

事業拡大は、多くの中小企業が持続的な成長を目指す中で欠かせないテーマです。ただ単に売上や規模を大きくするだけではなく、変化の激しい時代に生き残るための「攻めの経営戦略」とも言えます。国の指針でも、事業拡大は“前向きな挑戦”とされており、既存事業の枠を超えて新しい市場や価値に踏み出すことが重要だとされています。特に近年は補助金の申請要件としても、事業拡大が明確に定義されています。
たとえば「中小企業新事業進出補助金」では、今までにない製品や市場への進出、新規事業の売上が全体の10%以上になる計画など、明確な基準が求められています。
自社の成長に最適な戦略を考え、そのうえで国の政策や補助金要件にも合わせていく「二段構え」の発想が欠かせません。
また、中小企業の定義も制度によって異なります。たとえば中小企業基本法と、中小企業等経営強化法では、資本金や従業員数の基準が違う場合があります。自社がどの定義に当てはまるか、どんな支援策が使えるかも事前に確認しておくと安心です。
事業拡大の主な手法と選び方

事業拡大にはいくつかの進め方があります。大きく分けると、「既存事業の強化」と「新規事業への挑戦」です。
既存事業の強化
今の主力商品やサービスをさらに深掘りして売上・利益を伸ばす方法です。すでに持っている技術やノウハウ、販路を活用できるためリスクは比較的低くなります。ただし、大きな成長には市場のニーズや動向を見極める必要があります。
新規事業への挑戦(多角化)
今まで扱っていなかった分野に参入し、新しい収益源を作る手法です。新しい商品やサービス、販路、顧客層を開拓する必要があり、リスクは高まりますが、成功すれば大きな飛躍につながります。ゼロから始めるだけでなく、M&A(他社買収)でノウハウや顧客基盤を獲得するケースもあります。
また、海外展開も事業拡大の選択肢のひとつです。国内市場の伸び悩みや人口減少に対応するため、海外に活路を見出す中小企業も増えています。ですが、海外には法規制や商習慣の違い、言葉の壁などさまざまな課題があるため、支援制度の活用が欠かせません。
選び方のポイントとしては、
- 自社の強みやコア技術がどこにあるか
- 既存市場がまだ伸びるのか、新しい市場に進むべきか
- 投資できる資金・人材の余裕があるか
などを冷静に見極めることが大切です。
アンゾフの成長マトリクスで考える
成長戦略を考えるうえで役立つフレームワークが「アンゾフの成長マトリクス」です。これは「製品(既存/新規)」と「市場(既存/新規)」の2軸で成長の方向性を分類する考え方です。
戦略 | 概要 | リスク | 成功のポイント | 代表事例 |
---|---|---|---|---|
市場浸透戦略 | 既存市場で既存商品をさらに売る | 低 | 顧客の利用頻度・量アップ、新しい使い方の提案 | マクドナルド「朝マック」 |
新製品開発戦略 | 既存市場に新商品を投入 | 中 | 既存顧客のニーズに合った製品開発 | コカ・コーラ ゼロ |
新市場開拓戦略 | 新しい市場に既存商品を売る | 中 | 新しい市場ニーズの調査と販売戦略 | 資生堂「シーブリーズ」ターゲット転換 |
多角化戦略 | 新しい市場へ新しい商品で参入 | 高 | 既存事業とのシナジーや独自の強み活用 | 富士フイルムの化粧品・医薬品進出 |
このように、自社が今どこに立っていて、どの方向性を目指すのが最適かを整理するのに役立ちます。新しい挑戦を始める前に、一度このマトリクスで自社の現状と目標を可視化してみることをおすすめします。
中小企業が事業拡大する際の成功事例と失敗事例

事業拡大には多くの成功例もあれば、残念ながら失敗する例もあります。ここでは、実際の中小企業のケースを参考に、どんな共通点や教訓があるか紹介します。
【成功事例】
墓石加工会社の技術転用による新商品開発
岐阜県の石材加工業者は、もともと墓石を作る技術を活かし、家庭用の溶岩プレート(調理器具)を開発しました。きっかけはコロナ禍の“巣ごもり需要”の高まりでしたが、自社の強みを異分野に応用したことで、新たな売上の柱となりました。もともとあった技術と設備を有効活用できたことが成功のポイントです。
板金加工会社のDX化による新規顧客開拓
精密板金加工を手がける星製作所は、「図面が描けない」「発注方法が難しい」といったIT業界の新規顧客の声を受け、ウェブ上で簡単に板金ケースを発注できるサイトを立ち上げました。IT系ベンチャーなど従来アプローチできなかった層のニーズをキャッチでき、販路を大きく拡大できた事例です。
ニッチ市場への挑戦
金属加工を行う富士産業は、大手メーカーが手を出さない“小ロット・特注品”の注文に注目しました。大企業は効率を重視するため敬遠しがちですが、あえて手間のかかるニーズに対応することで、リピーターや新規顧客の獲得に成功しています。
【失敗事例と注意点】
市場調査不足による新規事業の撤退
ある大手アパレル企業が野菜の生産・販売ビジネスに参入しました。しかし、「ブランド力があれば売れる」と考え、十分な市場調査や顧客分析をしないまま事業化を進めてしまいました。結果、期待した売上が出ず、短期間で26億円の赤字を出して撤退を余儀なくされました。
社内コミュニケーション不足によるM&A失敗
ある中小企業では、経営者が事前に従業員へ買収の話を漏らしたことで、従業員が不安になり大量退職につながりました。結果、買収の話自体が流れ、会社も廃業することになりました。情報共有やコミュニケーションの重要性が問われた事例です。
デューデリジェンス(事前調査)の不十分さ
M&Aで買収先企業の財務状態や隠れたリスクをしっかり調べずに契約したことで、後から多額の簿外債務や取引先トラブルが発覚し、予期せぬ損失を被るケースもあります。
撤退の判断遅れによる損失拡大
韓国市場に進出した機械メーカーは、新聞需要のピークが過ぎた後で参入したため、ずっと赤字が続きました。最終的に早めに撤退を決断できたことで本社への影響は抑えられましたが、タイミングの見極めの難しさを示す事例です。
このように、成功も失敗も、事前の調査・準備・コミュニケーションといった「地道な作業」が大きな差を生みます。
事業拡大を支える政府・自治体の補助金・支援策
事業拡大には資金が必要です。国や自治体では、さまざまな補助金や助成金が用意されています。ここでは代表的な制度を紹介します。
補助金名 | 目的 | 補助額・率 | 主な対象経費 | 主な要件 |
---|---|---|---|---|
事業再構築補助金 | 新市場進出、事業転換など思い切った再構築 | 100万円~1億円超(1/2~2/3) | 建物、機械、システム、広告費など | 認定支援機関の確認、付加価値向上など |
ものづくり補助金 | 生産性向上に資する革新・設備投資 | 750万円~(1/2~2/3) | 機械、システム、専門家費用等 | 賃金アップや最低賃金要件など |
新事業進出補助金 | 新市場や高付加価値事業への進出 | 2,500万~9,000万円(1/2) | 機械、建物、広告宣伝など | 新規売上10%以上、賃上げ等 |
また、東京都や港区など自治体でも独自の支援制度があります。たとえば東京都の「躍進的な事業推進のための設備投資支援」や、港区の「産業見本市等出展支援補助金」などです。自社の所在地や事業内容に合わせて、各自治体の支援も積極的に調べてみてください。
事業拡大の課題とリスク管理
事業拡大は大きなチャンスがある一方で、リスクや課題も少なくありません。
【よくある課題】
- 設備や人材への多額の先行投資
- 複数事業のマネジメントが難しくなる
- 事業が軌道に乗るまでに時間がかかる
特に注意したいのが「資金ショート」です。たとえば工事の遅延や、入金のズレ、思った以上の投資が先行することで手元資金がなくなってしまうと、黒字倒産のリスクも高まります。
【リスク管理のポイント】
- 支払いの優先順位付け(手形や小切手は特に注意)
- 緊急資金の調達ルートを複数持つ
- キャッシュフロー計画の作成と残高の常時チェック
さらに、万が一の場合に備えて「いつまでに・どこまでやるか」といった撤退ライン(基準)も決めておきましょう。
これからの中小企業事業拡大に必要な視点
今後の中小企業の事業拡大では、次のような視点が大切になります。
- 人口減少により国内市場が縮小する中で、地方創生や海外展開の動きがますます重要です。
- デジタル技術(DX)を活用し、販路や業務を効率化することが生き残りのカギとなります。
- 各種補助金や公的支援制度を活用することで、限られた経営資源を有効に使うことができます。
- JETRO(日本貿易振興機構)などの支援サービスを活用して、海外展開の基礎を固めることも現実的な選択肢となります。
こうした潮流を意識しながら、自社にあった現実的な事業拡大プランを考え、チャレンジを続けることが求められています。
まとめ・今すぐできる一歩

事業拡大は、中小企業が未来を切り開くための大きなチャンスです。しかし、リスクも少なくありません。まずは自社の現状や強み、将来の目標をしっかり見つめ直すことから始めましょう。次に、戦略や計画を具体的に立て、必要に応じて補助金や専門家の力も活用してください。情報収集を怠らず、小さな一歩からでもすぐに行動を始めることが、成功への近道です。今すぐできることから着手してみてはいかがでしょうか。
「なぜ成長できないのか」が見えてくる──ニッチトップ戦略で市場の壁を突破
「がんばっているのに成果が出ない」「競合に埋もれて自社の価値が伝わらない」――
そんな中小企業に共通する“見えない課題”に、今注目されているのが業界特化型のニッチトップメディア戦略です。
- ・月間Web問い合わせ数が平均3倍以上に増加
- ・これまで縁のなかった業界からも反響獲得
- ・営業人員ゼロでも高品質なリードが自然と集まる仕組み
実際に、従来の広告では反応がなかった企業でも、狙いたいターゲットからの問い合わせが続出。
「市場に必要とされている会社」になるための第一歩を、資料でご確認ください。