サービスブランディングとはなにか?商品ブランディングとの違いを解説

サービスブランディングとはなにか?商品ブランディングとの違いを解説

本記事では、サービスブランディングの概要や商品ブランディングとの違いに加え、導入によるメリットや実践プロセスまで整理しています。
自社サービスの価値をより的確に伝え、競争優位性を高めたいとお考えの企業担当者の方は参考にしてみてください。

なお、サービスブランディングは、あくまでも企業全体の方向性を規定する「ブランド戦略」の一要素です。
個別のサービス像を固める前に、ブランド戦略の基本概念を押さえておくことで、社内での認識共有や打ち手の精度が高まります。

下記のページでは、ブランド戦略やブランディングの基礎情報をまとめた資料をご用意しています。サービスブランディングの検討と併せて、基礎固めの一助としてぜひご活用ください。

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サービスブランディングとは

サービスブランディングとは、個々のサービスの価値とイメージを市場に正しく伝え、顧客にとって選ぶ理由を明確にする取り組みを指します。BtoBの領域では、とくに無形要素が多いサービス特性上、ブランドの設計がそのまま商談化率や継続率に影響する重要な活動です。

そもそもブランディングの「ブランド」の定義ですが、一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会は以下のように定めています。

ある特定の商品やサービスが、消費者・顧客によって「識別されている」とき、その商品やサービスを「ブランド」と呼ぶ。

引用元:ブランド用語集|一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 (https://www.brand-mgr.org/knowledge/word/)

しかしBtoBの現場においては、「どう識別されたいか」 という視点だけでは十分とは言えません。
なぜなら、競合サービスが多数存在し、機能差が縮まりやすい今の市場では、「誰にとって最適なサービスなのか」 を定義できているかどうかが、選定段階における決定的な差になるからです。

こうした変化を受け、近年のサービスブランディングでは、「どのように見られたいか」を起点にする従来型の発想だけでなく、「どの顧客の課題を深く解決するサービスなのか」から逆算してブランドを設計するアプローチが注目されています。

これは、サービスの価値を提供側の都合で固めるのではなく、特定顧客のニーズや課題を起点に価値を再定義する手法であり、市場内での立ち位置や比較軸を明確にしやすい点が特徴です。

この顧客起点の視点を実践に落とし込む際に基盤となるのが、マーケティングのフレームワークである7Pです。

  • Product(サービス商品)
  • Price(価格)
  • Promotion(プロモーション)
  • Place(立地)
  • People(人材)
  • Physical evidence(物的環境)
  • Promise(ブランドの約束)

7Pを用いることで、整理すべき要素を抜け漏れなく把握でき「どの顧客にどんな価値を届けるのか」という方向性に沿って各要素を一貫性のある形にブランディングしていくことが可能になります。

具体的なサービスブランディングの実施方法については後述します。

商品ブランディングとの違い

商品ブランディングとの違い

サービスと商品の大きな違いは、目に見えるモノであるかどうか。サービスブランディングは目に見えない体験を扱うのに対し、商品ブランディングは物質的な価値を持つ商品を扱います。

サービスブランディングは、顧客や社員の深い関係構築がマーケティングとして力を入れる部分になりますが、商品の場合はそうではありません。広告や店頭での商品独自の存在感づくりが必要になります。

他の商品(サービス)との差別化に必要な部分も異なります。

技術力や商品デザイン・チャネル力などが求められるのが商品ブランディング、人材の質や空間演出・業務プロセスが求められるのがサービスブランディングです。

サービスブランディング 商品ブランディング
扱うもの 目に見えない体験 目に見えるモノ
マーケティングで力を入れる部分 顧客・社員の深い関係構築 広告・店頭での商品独自の存在感づくり
差別化に必要なこと 人材の質・空間演出・業務プロセス 技術力・商品デザイン・チャネル力

商品ブランディングの場合、ブランド力の大きさが売り上げに直結します。いかに商品を顧客に認知してもらうか、ブランド力をつけられるかがライバル商品と差をつけるポイントになります。

長期的に売れる商品にするためには、商品ブランディングが必要不可欠です。

サービスブランディングがもたらすメリット

サービスブランディングがもたらすメリット

サービスを顧客に認知させ、サービスのイメージや独自価値を一致させるサービスブランディングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。サービスブランディングのメリットには主に以下の4つが挙げられます。

  • 顧客との信頼関係の構築
  • 従業員の愛社精神の育み
  • 生産性の向上
  • 価格競争を避けられる

ひとつずつ解説していきましょう。

顧客との信頼関係が構築される

サービスブランディングにより、顧客との信頼関係を構築できます。

そのためにはまず、顧客に提供する価値をしっかりと決めて「ブランドが約束すること」としてアピールが必要です。

顧客の期待に応える、揺るがない情報の発信・体験を提供することによって、顧客とブランドの間に確かな絆・信頼関係を生み出せます。

サービスブランディングにより構築された顧客との信頼関係は、顧客のリピート率アップやプレミアム価格を実現。顧客との信頼関係は、サービスを長く提供し続けるために必要です。

従業員の愛社精神が生まれる

正しいサービスブランディングは、従業員の愛社精神を生みます。

ブランドが徐々に形成されていくと従業員の誇りや忠誠心が高まっていき、結果的にサービス品質の向上につながるのです。

サービス品質が向上すれば、顧客との信頼関係構築にもつながります。顧客との信頼関係が構築されることで、リピート率アップやプレミアム価格を可能なものに。

従業員の誇り・忠誠心が高まるようなサービスブランディングができているかも大切なポイントです。

生産性が向上する

サービスブランディングを行う中で従業員の行動に自律性を与えると、生産性の向上が期待できます。

生産性の向上は、従業員の残業時間減少・コストの削減・人手不足への対応を実現。

従業員の残業時間を減らせると、モチベーションやパフォーマンス向上にもつながります。削減できたコストは労働環境の改善や新商品開発の費用に充てられるように。

生産性が向上するとさまざまなメリットが得られます。

価格競争をしなくて済む

価格競争をしなくて済むようになるのもサービスブランディングの大きなメリット。

ブランディングが出来ていない(=顧客にサービスが認知されていない)場合、ライバルサービスと価格競争を強いられます。より安いほうが売れやすくなるため、価格競争により利益率が落ちてしまうのが難点です。

しかし、サービスブランディングが正しく出来ていれば、価格競争を強いられることはほとんどありません。サービスの強みや独自の価値をしっかりと顧客にアピールすることが大切です。

サービスブランディングの実施方法

サービスブランディングの実施方法

ここでは、サービスブランディングの実施方法を解説します。具体的なステップは以下の通り。

  1. サービスブランドの整理
  2. ネーミングやデザインの決定
  3. マーケティングミックスの展開

サービスブランドの特性をきちんと理解し、最適なブランディングを考えていくことが大切です。

①サービスブランドの整理

自社のサービスブランドの体系をカテゴライズで整理しましょう。

例えば、サービスの特性や切り口・価格・強み・顧客ベネフィットなどによってカテゴライズできます。サービスブランドを長期的な視点で考えたとき、どのような方向で展開していきたいのかを基準として考えると良いでしょう。

一つのブランドで成り立つこともありますが、複数のサービスブランドを立てたほうがよい場合もあります。

サービスブランドの整理はブランディングに必要なアピールポイントが明確になるため、とても重要なポイントです。

②ネーミングやデザインの決定

サービスブランドを整理できたら、次はネーミング・デザインの決定を行います。

顧客やサービス独自の強みに合わせて、どのような表現がよいかを考えましょう。サービスの魅力が伝わるようなネーミング・デザインを検討する必要があります。そのためにも、先ほど挙げたサービスブランドの整理が必要になってくるのです。

サービスブランドが整理されていれば、顧客がどのような気持ちでサービスを選ぶのかを考えられます。

ネーミング・ブランドロゴ・各種デザイン・広告PRなどで、一貫した表現を意識することが大切です。

③マーケティングミックスの展開

サービスブランディングの基本は7Pの視点。この視点を取り入れたマーケティングミックスの展開が必要です。

7Pとは、具体的に以下の要素で構成されます。

Product(サービス商品):サービスパッケージやスキル・ノウハウなど

Price(価格):標準価格・ディスカウント・支払期間・決済方法など

Promotion(プロモーション):広告やWebでの販売促進など

Place(立地):チャネル・店舗・配送など

People(人材):顧客接点人材・人的ネットワーク・顧客コミュニティなど

Physical evidence(物的環境):施設デザインや備品・従業員の服装・色・音など

顧客のブランド体験に対する理想像の設計などを、7Pに落とし込んでいきます。

サービスブランディングの成功事例

サービスブランディングの成功事例

サービスブランディングが機能した背景には共通するポイントがあります。

それは、「誰のどんな状態を幸せにしたいのか」が極めてクリアだったこと。

単に商品や機能を訴求するのではなく、明確に定義された“特定の顧客像”が求める体験や価値に照準を合わせ、そこからサービス設計・人材育成・ブランド体験の細部まで一貫性を持たせていた点が特徴です。

この構造は、BtoBのサービスブランディングでも通用する重要な原理といえます。
どんな企業を幸せにするのか、どんな課題をどれだけ深く解決するのかが明確になるほど、サービスの比較軸がはっきりし、競合が多い市場でも選ばれやすくなるためです。

これらを踏まえたうえで、2つの代表的な成功事例を紹介します。

事例①広告宣伝を使わずにブランドポジションを確立

全世界に店舗を構えるスターバックスのサービスブランディング成功事例です。

スターバックスのブランド・アイデンティティは「人々の心を豊かで活力のあるものにするためにーひとりのお客様、1杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」。

コーヒー(商品)が主役ではなく、人の心の豊かさを主役に引きたてたブランド・アイデンティティといえるでしょう。

ご存知の方もいるかもしれませんが、実はスターバックスは昔のロゴに「Coffee」が入っていました。しかし、あくまでも「人」がメインのビジネスであることをアピールするために、「Coffee」のロゴを取り払って今のロゴが出来たのです。

さらにバリスタの育成にも力を入れており、アルバイトであっても1人80時間の教育を施しています。コーヒーの入れ方や知識だけでなく、ブランド・アイデンティティの教育にも時間を割いているほどの徹底ぶりです。

こうした熱心な取り組みのおかげで、顧客は店内の居心地の良さやスタッフの対応の良さに、徐々にブランドへの愛着がわくようになります。

広告宣伝を使わずとも、ブランドポジションを確立できるというサービスブランディングの成功事例でした。

事例②ブランドの外側・内側両方から競争力を築き上げる

誰もが知っている東京ディズニーランドのサービスブランディング事例です。

東京ディズニーランドには、技術的に優れているようなアトラクションはありません。なぜ、それでも多くの人が魅了されてしまうのか。それは、東京ディズニーランドに心惹かれる物語があるからです。

東京ディズニーランドといえばアトラクションスタッフはもちろん、清掃スタッフにいたるまで、すべての人材がブランドらしさを体現しているのが特徴。

スタッフ一人ひとりがディズニーランドのファンであるために、自らディズニーランドの世界観に合ったふるまいが行えるのです。

たとえアルバイトスタッフであっても、ディズニーランドに対する貢献意欲が高く、顧客を満足させられるブランドらしい接客を生み出せます。

接客人材の愛社精神が、東京ディズニーランドのブランド力を底上げしているのでしょう。

外からの見栄えだけではない、組織的なブランド力が東京ディズニーランドのサービスブランディングの秘訣です。

サービスに合ったブランディングを推進しよう

サービスに合ったブランディングを推進しよう

サービスブランディングを進める際は、サービス特性やターゲットとなる顧客像に基づいて、必要な要素を整理しながら設計していくことが重要です。特にBtoB領域では、7Pを活用したマーケティングミックスを見直すことで、価格訴求に依存しない持続的な提供価値を構築しやすくなります。

そのための第一歩として、ブランド体系の整理や、サービスごとの役割・位置づけを明確にするプロセスが有効です。
自社サービスが市場の中でどの立ち位置にあり、どの顧客にとってどのような価値を発揮するのかを可視化することで、ブランディングの方向性が定まりやすくなります。

また、競合が多い市場では、サービスの比較軸や選ばれる理由を整理するために、自社サービスと競合サービスの関係性を構造的に把握するアプローチが取り入れられることもあります。
たとえば、特定の市場領域にフォーカスし、

  • 「どの課題を解決するサービスなのか」
  • 「どんなユーザーに価値が伝わりやすいのか」

を明確にすることで、訴求内容や集客施策の精度が高まり、成約率の向上につながるケースもあります。

このように、サービスブランディングは単にイメージを整えるだけでなく、市場理解・顧客理解・価値設計を含めた総合的な取り組み として捉えることが重要です。

サービスブランディングは、市場構造・顧客理解・価値設計など、多角的な視点を組み合わせて考える必要があります。

もし、

  • 競合との違いが伝わりにくい
  • 自社の強みをどの顧客に届けるべきか整理したい
  • 市場での立ち位置を明確にしたい

といった課題があれば、まずは自社サービスの立ち位置や比較軸を整理するところから取り組むのが有効です。

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