屋内位置情報サービスといっても、オフィスや工場、災害現場、医療現場、商業施設など、利用されるシーンと目的によって機能性はさまざま。また、求められるシステムへの精度やコストも大きく変わってきます。
この記事では利用シーンに合わせて屋内位置情報サービスの強みや費用、精度などの特徴や効果範囲などを比較してまとめてみました。
紹介している掲載企業のうち、一部の資料は下記よりダウンロードが可能です。比較検討の参考にご活用ください。
| 会社名 | サービスの特徴 | こんな企業におすすめ | 主な利用シーン | 制度の目安 |
|---|---|---|---|---|
Beacapp Here |
累積導入社数&ユーザー数1位(※1)!人とモノの所在地をリアルタイムで見える化
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大規模オフィスの在席管理
安全管理をしたい |
オフィスの出社状況の可視化
工場・病院の従業員や機器の所在管理 |
誤差数メートル程度の精度
※設置密度次第 |
Desk Mosaic |
リアルタイムでオフィスを可視化!社員の働きやすさと効率性を同時に実現
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オフィスでの所在把握に課題
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座席・会議室の予約と
利用状況管理 |
座席単位の精度
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B Catch Now(ビーキャッチナウ) |
火災発生時には火災の位置も「見える化」し避難をサポート |
工場・オフィスで防災対策をしたい
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在席確認、会議室利用把握
非常時の社員安否確認 |
屋外GPS+屋内BLEで数m程度
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GeoMation |
トンネル建設現場やフォークリフトの運転効率化向けの導入事例あり |
建設・プラント・工事現場の
安全管理が必要 |
作業員位置のリアルタイム監視
危険エリア警告 |
屋外GPS+屋内BLEで数m程度
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IoT for オフィス屋内位置情報サービス |
オフィスの他に病院や介護施設、老人ホームや建設現場にも対応 |
工事不要で安価に
屋内測位導入したい |
社員の居場所検索
会議室空き状況確認 |
フロア内の大まかな位置把握
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TagCast |
月額500円と低価格から始められるサービス |
屋内ナビやO2O施策を導入したい
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フロアガイド、自動案内
クーポン配信 |
エリア内への来訪検知
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iField |
改善に向けたデータ分析を自動で行うシステム |
物流・建設など現場のDX推進
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作業員の稼働管理
作業員安全確認 |
LE・Wi-Fiで数m
マルチGNSS+補正でサブメートル |
リコー屋内位置情報サービス |
病院の業務改善事例あり!医療関係者におすすめのサービス |
警備・運輸業など
チーム連携が重要な現場 |
スタッフの所在確認
作業員同士の連絡 |
屋外では数m
屋内ではWi-Fi/ビーコン併用で十数m |
ポジナビプラス |
工場倉庫オフィスに設置をする屋内位置情報サービス |
工場の動線改善や
店舗の顧客行動分析をしたい |
動線解析による業務改善
顧客の店内行動分析 |
アンカー天井設置時で
平均10cm精度 |
HERE |
自社アプリに組み込んで使える地図プラットフォーム |
屋内ナビやトラッキング機能を
自社アプリに組み込みたい |
商業施設の訪問者向け
屋内ナビゲーション |
数m程度の精度
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Linkit |
位置情報共有型とビジネスチャットを組み合わせたサービス |
営業チームの位置共有
外回り管理をしたい |
営業社員の現在地把握
訪問ルート管理 |
屋外GPSは数m精度
|
pinable |
交通インフラや商業施設向けのマーケティングプラットフォーム |
来店客の行動分析や
O2O集客を狙う |
館内での顧客動線分析
施設内広告、訪日客向け案内 |
GPSやWi-Fiより精密
数メートル以内 |
NaviCX |
スマホ×ビーコンで顧客行動をリアルタイムに可視化 |
大型店舗・テーマパークなど
自社アプリでナビや顧客分析したい |
店内ナビ、クーポン配信
回遊分析 |
1~3m程度の誤差と
利用者の向きまで取得 |
屋内測位とは?GPSとの違い
働き方改革やスマートファクトリー、防災対策など、今のビジネス現場で求められる「効率化」や「安全性」。この課題を解決する手段として屋内測位サービスが注目されています。ここではまず、屋内測位の基本的な考え方と、私たちが普段使うGPSとの違いについてご説明します。
屋内測位とは、ビルや商業施設、地下街などの建物の中で「人や物の場所を正確に特定できる技術」のことです。正式にはIPS(Indoor Positioning System)やRTLS(リアルタイム位置測位システム)と呼ばれています。
一方、カーナビやスマートフォンの地図アプリで使われているGPSは、人工衛星から送られる信号を利用していますが、電波が建物や地下には届きにくいため、屋内ではほとんど役に立ちません。
そこで、GPSが届かない屋内で使えるように開発されたのが、Wi-FiやBLEビーコン、UWBなどの「地上に設置する信号源」を使った屋内測位技術です。
屋内外をシームレスに移動しながらでも、正確な位置情報を取得できるようになりました。屋内測位は、GPSを補完しながら、施設や企業の新たな価値創出を後押しする技術といえるでしょう。
屋内位置情報サービスの使用事例
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに会社内で感染者や濃厚接触者を把握したい、リモートが増えたのでフリーアドレス制を導入したいという点から屋内位置情報サービスの導入が行われることも増えてきています。集客に活用する場合は、屋内位置情報サービスを活用してGoogle広告で来店を促進したり、位置情報をマーケティングに活用したりする事例も多く見られます。 そのため、
「社員の所在を把握しながらフリーアドレス制を導入したい」「作業工程の見える化を促進したい」「店舗の来店を促進したい」「位置情報を元に集客を行いたい」と考えている場合には、屋内位置情報サービスの得意な分野をよく比較した上で導入すると良いでしょう。
また、屋内位置情報サービスは各個人が持っているスマートフォンと工事不要で設置できる「ビーコン」で利用ができるため、簡単に導入が可能です。
屋内位置情報サービスの市場規模
屋内位置情報サービスの市場規模は年々増加傾向にあります。株式会社矢野経済研究所が発表した資料によると、市場規模は2018年に28億4,000万円であったのに対し、2024年には76億2,400万円に拡大する見通しです。
市場規模の拡大は、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに働き方改革やオフィス内での濃厚接触者の特定などを行いたいというニーズ拡大に起因しています。また、導入している業界・業種が多様化していることも大きな要因です。
今後もIoTの分野の推進やリモートワーク、フリーアドレスといった働き方改革がさらに推進されることが予想されるため、市場規模はさらに拡大が見込まれます。
また、取得した位置情報データをもとに人流データ分析を行うことで、フロアごとの混雑状況や導線のボトルネックを可視化し、レイアウト改善や販促施策の精度向上にもつなげることができます。
屋内位置情報サービスの費用相場
キャククルがインターネット上に明記されている情報をリサーチしたところでは、月額30,000円程度で使用する人数が指定できる位置情報サービスもありますが、ほとんどの企業は公式サイト上に費用を公開していません。
これは採用するシステムの仕様も関係しますが、サービスを受ける企業がなにを望んでいるか、社員数などの規模やどのような機能が必要かによって、都度見積もりを作成する必要があるからです。
場合によっては、企業の業務内容に沿った位置情報サービスにカスタマイズする必要もあるため、費用を相場で表すのは難しいというのが実情です。
実績などを見て「ここに依頼したい」という会社を絞り込み、見積もり依頼するのが確実です。
屋内での所在地測位方法
ビーコンをはじめ、屋内での所在地測位方法はいくつかの種類があります。
ビーコン測位
ビーコンとは、省電力の近距離無線通信規格BLE(Bluetooth Low Energy)を用いたデバイスで、これを用いる測位方法をビーコン測位といいます。
信号の有効半径は10~100メートルほどで、ビーコンが発したBLE電波を、スマートフォンなどのBluetoothを受信する端末で受信することで屋内位置情報を測位します。また、ビーコンは省電力に長けており、小型で持ち運びがしやすいのも特徴です。
Wi-Fi測位
複数のWi-Fiアクセスポイントを使って位置情報を特定します。各アクセスポイントからのWi-Fi信号の強さや到着時間の違いを利用して、位置を計算します。この方法では、既存のWi-Fiアクセスポイントを使うため、新たな設備を追加する必要がありません。
ただし、Wi-Fiアクセスポイントのカバーエリアは通常、数メートルから数十メートルまでと限られているため、アクセスポイントが密集していない場合、位置情報の精度に誤差が生じることがあるという制約があります。
RFID測位
RFID(Radio-Frequency Identification)タグという識別番号を備えたチップと、専用のリーダーを用いて位置情報を測位する方法です。
場所を特定したいものにRFIDタグをつけ、タグ内に情報を持たせることも可能なので、主に倉庫や工場などでのモノの所在管理・在庫管理などに使用されています。
超音測位
超音測位は、人の耳では検知できないレベルの超音波を使用して、物体やデバイスの位置を特定するための技術です。専用のセンサーやトランスミッターと受信器を使用して、音波の伝播時間や到達時間の差異を計測して位置情報を測定します。
地磁気測位
鋼材や鉄材など、建築物や地下構造に使用される鉄の磁気を利用した位置測位方法です。この方法では、磁気データやパターンをデータベースに保存し、スマートフォンの磁気センサーが読み取る瞬間と照合して位置情報を測定します。
新しい設備を導入する必要がないため、設備コストを削減できる利点がありますが、磁気が乱れやすい建物の近く(鉄道車両や大型車両が頻繁に通過する環境など)では、位置情報が正確に測定できない可能性があります。
UWB測位
UWB測位は、広帯域無線通信の周波数帯域を使って、センサーを約30メートルの間隔で配置し、少なくとも2つのセンサーから送信されたUWB信号の到達時間差と入射角度を利用して位置情報を決定します。
UWB信号はUWB受信用のタグでのみ受信できるため、コストはかかりますが精度が非常に高く、誤差わずか15センチメートル程度で対象の位置を特定することができます。
商業施設や大型オフィスなどでフロア案内やルート検索まで行いたい場合は、屋内測位とあわせて屋内マップ作成システムも活用することで、利用者の利便性向上につなげられます。
目的別チェックリスト
屋内測位の導入にあたり、自社に最適な方式や導入モデルを見つけるための簡単な診断をご用意しました。自社の課題や条件を整理し、最適な選択につなげてください。
自社の課題を5問で診断
- 解決したい課題は何ですか?(例:人や資産の「探し物」削減、動線分析、コミュニケーション円滑化、安全管理、顧客体験向上)
- どの程度の精度が必要ですか?(センチメートル単位、1m前後、数メートル単位)
- 導入コストに関する方針は?(高精度・高コストでも可、既存インフラ重視、まずは低コストから)
- 主に測位する対象は?(従業員、資産、来訪者など)
- 設置場所の特徴は?(工場、オフィス、大型施設など)
おすすめ方式&導入モデル例
| 課題タイプ | おすすめ方式 | 活用例 |
|---|---|---|
| 生産性向上・高精度型 | UWB | 工場や倉庫の動線管理、デジタルツイン構築 |
| コスパ重視・働き方改革 | BLE(RSSI)/ Wi-Fi | オフィスの在席管理や会議室予約の効率化 |
| 安全・リアルタイム重視 | BLE(AoA)/ UWB | 工場の安全管理、災害時の安否確認 |
| 顧客体験・販促 | BLE(RSSI)/ Wi-Fi | 商業施設のナビゲーションやクーポン配信 |
屋内位置情報サービスに関するよくある質問

Q1.位置情報の測位方法にはどのようなものがありますか?
大きく分けて4つの測位方法があります。まず、「Wi-Fi」経由でスマートフォンやタブレットなどのデバイスの位置情報を取得する方法。商業施設内での移動など、ユーザーの動きを細かく把握したいときに有効な測定方法です。
次にGPS衛星を使ってスマートフォンやカーナビゲーションといった端末の位置を測位する手法。長距離の移動など、粒度の大きな動きを把握する際に有効な技術です。
ビーコンは、屋内の人の動きやモノの動きを測定する際に導入しやすい位置情報サービスです。ビーコンという発信機を使って、デバイスの受信機に信号を送信し、受信信号を計測して位置情報を取得します。
あまり日本では普及していませんが、「IMES」という技術もあります。IMESはGPS同様発信器を屋内に設置してスマホのGPS受信機能を活用して、位置情報を測定します。
しかし、このサービスを展開している企業がほとんど海外企業であり、スマホそのものをIMES対応に更新する手間が発生することから、IMESは国内で普及していないというのが実情です。
Q2.位置情報サービスへのアクセス制限は可能でしょうか?
システムによって手法は異なりますが、ほとんどのシステムで可能です。IPアドレスごとにPCのアクセスを制限したり、証明書などの仕組みでPCやスマートフォンからのアクセスを制限することができます。
システム導入前に、こうした細かい仕様や気になる点を書き出しておき、見積もり前に確認することをおすすめします。
屋内位置情報サービス選ぶ際のポイント
今回ご紹介したしたように屋内位置情報サービスは業種業界、用途に応じて多岐にわたるサービスが展開されています。そのため、自社に合ったサービスを選ぶことが必要です。
自社に合ったサービスを選ぶためには屋内位置情報サービスを導入した先の目標を考えると良いでしょう。
例えば、「屋内位置情報サービスを利用して業務状況を把握し、効率化させたい」といった目的があります。このように実現したい目的を考えるとサービスが選びやすくなります。
業務効率化やワーキングスペース最適化に活かせるデータが得られるサービスもありますので、屋内位置情報サービスを選ぶ際にはどんな分析データが欲しいかも明確にしておくと良いでしょう。
来店履歴や購買データなどもあわせて分析したい場合は、位置情報と連携できる消費者データサービスを組み合わせることで、より精度の高いマーケティング施策に発展させることも可能です。
屋内位置情報サービスまとめ
個人情報保護やセキュリティ保護の観点や、社員への丁寧な導入主旨の説明なども必要な屋内位置情報サービスシステムですが、フリーアドレスの導入などが加速しているいま、検討する必要はありそうです。
屋内位置情報サービス導入をご検討される方は、自社に最適なサービス選びに本記事を、ぜひご活用ください。
- 免責事項
- 本記事は、2024年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載各社の情報・事例をはじめコンテンツ内容は、現時点で削除および変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。
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