OSやデータベースのサポート終了、保守を担う技術者の不足は、基幹システムの更新を検討するきっかけになります。長年の改修で仕様が複雑になり、残すべき機能や移行時の影響範囲を把握しきれないこともあります。
マイグレーションサービスは、既存のシステムやデータを新しい環境へ移すための調査・設計・変換・テストなどを支援するサービスです。現在の業務機能を引き継ぎながら、古い技術や稼働環境を見直す方法として検討できます。移行中の業務への影響や、更新後の保守体制まで含めて選ぶことが重要です。
マイグレーションサービスを比較する前に確認したいこと
対応する言語やデータベース、移行先、支援する工程は企業によって異なります。自社のシステムに対応しているかに加え、移行後にどのような状態を目指すのかを整理しておくことが大切です。
残す業務機能と更新する範囲
システムの更新には、OSやデータベースのバージョンアップ、プログラム言語の変換など、さまざまな方法があります。引き継ぎたい業務機能と、変更・改善したい部分を分けて考えると、必要な移行方法を検討しやすくなります。
再開発も含めて更新方法を検討している段階なら、現行資産の調査や移行方式の比較から相談できるかを確認しましょう。
移行後の保守・改修のしやすさ
COBOLからJavaへ言語を変換しても、それだけで保守の課題が解消するとは限りません。変換後に古い言語や専用基盤の知識がどの程度必要になるか、保守を担当する技術者がコードや仕様を理解できるかも確認したい点です。
移行先の言語だけでなく、設計書や運用手順の整備、担当者への引き継ぎまで含めて、移行後も継続して保守・改修できる体制を検討しましょう。
業務機能を引き継ぐための検証と支援範囲
移行後も業務を続けるには、現行システムの処理が新しい環境で正しく引き継がれるかを検証する必要があります。現行・新システムの処理結果を比較するテストや、応答時間・バッチ処理時間などの性能を、どの範囲で確認するかが判断材料になります。
AIや自動変換ツールの活用に加え、変換後のテスト、不具合の修正、本番切り替えまで、支援企業と自社がそれぞれ何を担うかを確認しましょう。
費用や工期を比べる際も、調査・変換・テスト・本番移行のどこまで含まれているかをそろえます。移行後のライセンスや運用・保守費も含め、自社の要件に合う依頼先を比較することが大切です。
| 会社名 | サービスの特徴 |
|---|---|
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移行後も保守・改修しやすいシステムへ。Pure Java化と現新一致で品質を追求
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複雑・大規模なシステム移行を計画的に推進。グローバル人材と独自ツールで支援
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キヤノンITソリューションズ |
計画から運用まで一気通貫で、レガシーシステムの“資産継承”を支える |
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TISI(旧TIS) |
業務ロジックの自動変換で旧環境からJava環境へ安全迅速にリライト |
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日立製作所 |
長年の実績と体系化されたプロセスで、大規模システムを確実に移行 |
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SCSK |
AWSデータベース移行のスペシャリストとして、コスト削減とデータ活用を実現 |
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NTTデータビジネスシステムズ |
既存資産を最大限に活用し、短期間・低コストでシステム刷新 |
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TOKAIコミュニケーションズ |
AWSプレミアティアパートナーが、移行から365日運用まで支援 |
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CIJ |
専用ツールで複雑なシステム資産の移行に対応 |
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サイバーコム |
サポート終了したVB6資産を、安全かつ短期・低コストで.NETへ |
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日本ティーマックスソフト |
メインフレーム脱却を多彩な選択肢で実現 |
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シーイーシー(CEC) |
独立系ならではの対応力で幅広くモダナイズ |
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IBM Japan |
他社クラウドも視野に入れた柔軟な移行支援 |
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NECソリューションイノベータ |
クラウド時代に合わせた柔軟なインテグレーション力が強み |
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富士通 |
安心と信頼性を軸にした移行をトータルサポート |
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システムズ |
難易度の高い移行も、分析とPoCで実現可能に |
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アクセンチュア |
世界規模の知見と人材でIT移行を事業変革に変える |
マイグレーションサービスおすすめ17選の詳細情報
マイグレーションサービスとは?
マイグレーションサービスは、既存のシステムやデータを別の環境へ移すための調査、設計、変換、テスト、本番移行などを支援するサービスです。移行後の保守・運用まで対応する企業もあります。
対象は、メインフレーム上の基幹システム、部門ごとの業務アプリケーション、データベースなど様々です。まずは自社が移したい資産と、移行によって解決したい課題を整理すると、サービスを比較しやすくなります。
マイグレーションの定義
マイグレーションとは、IT分野で既存のシステムやデータなどを新しい環境へ移行することを指します。稼働基盤だけを変更する場合もあれば、プログラムの変換やデータ形式の変更を伴う場合もあります。
「リプレース」はシステムや製品の置き換えを指す言葉で、必ずしもゼロからの再開発を意味しません。製品を置き換える際にもデータ移行が必要になる場合があるため、名称だけで区別せず、既存資産をどこまで引き継ぎ、何を変更するのかを確認します。
移行する対象や移行先によって、次のような呼び方があります。
- データマイグレーション:ストレージやデータベースなどの間でデータを移すこと
- アプリケーションマイグレーション:アプリケーションを別の実行環境へ移すこと
- クラウドマイグレーション:システムやデータの一部または全体をクラウドへ移すこと
例えば、業務アプリケーションをクラウドへ移す際には、データ移行も伴うことがあります。それぞれの呼び方は重なるため、別々の選択肢として一つに絞る必要はありません。
2025年の崖を踏まえた2026年の移行検討
経済産業省が2018年に公表したDXレポートは、既存システムの問題がDXの妨げとなる状況を「2025年の崖」と表現しました。2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるという、当時の試算です。2026年現在の損失実績を示す数値ではありません。
2025年を過ぎても、システムの複雑化や保守人材の不足といった課題が一律に解消されたわけではありません。2025年のレガシーシステムモダン化委員会総括レポートは、IT資産の可視化、現行業務の見直し、標準化、人材育成などを対策として示しています。
2026年3月のIPA報告書でも、レガシーシステムの残存や、AI・データ活用への適応が課題として整理されています。現在の業務を支える機能を把握し、残す資産と見直す業務を分けながら、移行計画を検討することが大切です。
例えば、SAP ERP 6.0の対象バージョンでは、標準保守は2027年末まで、追加費用が必要な延長保守は2030年末まで提供されます。利用中のバージョンと保守契約に照らして適用条件を確認し、調査やテストを含めた工程を逆算する必要があります。
レガシーシステムが抱える課題
レガシーシステムの課題は、導入からの年数だけでは判断できません。保守の状況、担当者への依存、変更のしやすさなどを、実際の資産に照らして確認します。
利用中のハードウェア、OS、ミドルウェアなどのサポート期限を確認します。保守が終了すると、修正パッチや障害対応を従来どおりに受けられない場合があります。延長保守の有無や費用も含め、対応が必要な時期を把握することが重要です。
技術者不足(Talent Shortage)の深刻化特定の担当者だけが仕様や運用手順を把握している場合、退職や異動が保守の継続に影響します。移行先の技術者を確保するとともに、現行システムの知識を持つ人材がいる間に調査と引き継ぎを進める必要があります。
複雑化・ブラックボックス化の進行機能追加や改修を重ねたシステムでは、仕様書と実際の動作が一致しないことや、システム間の依存関係が見えにくくなることがあります。ソースコード、データ、ジョブ、外部との連携を調べ、移行対象と影響範囲を明らかにします。
構造を把握しないまま移行すると、必要な機能や連携の見落としにつながります。まず資産を棚卸しし、継続利用する機能、廃止できる機能、改修が必要な箇所を整理することが出発点です。
業務への影響や対応期限は、情報システム部門だけでは決められません。経営層や利用部門と、許容できる停止時間、予算、移行後に実現したい業務を共有し、優先順位を決めます。
*参照元:経済産業省|DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html)*参照元:経済産業省|レガシーシステムモダン化委員会総括レポート(2025年5月)(https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html)
*参照元:IPA|2025年度ソフトウェアモダナイゼーション委員会報告書(2026年3月)(https://www.ipa.go.jp/disc/committee/eid2eo00000036bq-att/software-modernization-committee-20260324-report.pdf)
*参照元:SAP|SAP Business Suite 7の保守方針(https://support.sap.com/en/release-upgrade-maintenance/maintenance-information/maintenance-strategy/s4hana-business-suite7.html)
マイグレーションの方式・対象と選択方法
サービスを比較するときは、「どう移すか」という方式、「何を移すか」という対象、「どこへ移すか」という移行先を分けて考えると整理できます。以下の項目は比較する観点が異なり、一つのプロジェクトで組み合わせる場合があります。
リホスト・リプラットフォーム型マイグレーション
リホストとリプラットフォームは、既存アプリケーションの大きな構造を維持しながら移行する方式です。リホストは主に稼働基盤を移し、リプラットフォームはデータベースなどの一部を変更・最適化します。
ストレートコンバージョンによる資産活用
リホストは「リフト&シフト」とも呼ばれ、アプリケーションを大きく変更せずに新しい基盤へ移す方式です。ただし、利用中のOS、ミドルウェア、外部連携などが移行先で動くかを確認する必要があります。
既存の業務ロジックを引き継ぐために、自動変換ツールを使うサービスもあります。「ストレートコンバージョン」と呼ばれる方法では、COBOLやJCLなどの資産を変換します。対応する資産や変換範囲はサービスによって異なり、リホストのすべてで同じ変換を行うわけではありません。
既存ロジックを維持する利点と制約
業務ロジックの変更を抑えられれば、再開発に比べて改修やテストの範囲を絞れる場合があります。一方、移行だけでは既存の複雑な構造や業務上の課題が残ることもあるため、移行後に何を改善するかも検討します。
リプラットフォームでは、アプリケーションの主要な構造を維持しつつ、データベースをマネージドサービスに置き換えるなどの変更を加えます。変更箇所の互換性や性能を検証し、運用負荷の軽減などの効果と対応工数を比較します。
データ・アプリケーションマイグレーション
データマイグレーションとアプリケーションマイグレーションは、移行対象による分類です。システム全体を移す場合にも、一部の機能を段階的に移す場合にも含まれます。
データマイグレーションの特徴と適用場面
データマイグレーションは、特定のデータをあるストレージやデータベースから別のものへ移動させるプロセスです。例えば、メインフレーム上のデータベースからオープン系のSQLデータベースへデータを移行するといったケースが該当します。
移行先で正しく使えるよう、データ形式の変換、整合性の確認、移行中のセキュリティ対策を計画します。移行件数だけでなく、内容の一致や、切り替え直前までに更新されたデータの扱いも確認します。
アプリケーションマイグレーションの実施方法
アプリケーションマイグレーションは、既存のプログラムを新しい実行環境へ移すことです。基盤を移すリホストに加え、言語を書き換えるリライトや、内部構造を整えるリファクタリングなどを検討する場合があります。
- リライト:プログラム言語自体を書き換える(例:COBOLからJavaへ)
- リファクタリング:外部から見える動作を保ちながら、コードの内部構造を改善する。クラウド移行の戦略では、再設計を含めた意味で用いられることもある
クラウドマイグレーション
クラウドマイグレーションは、システムやデータをクラウド環境へ移すことです。必要な資源を調整しやすくなる一方、利用料金や運用設計は構成によって変わるため、移行後の使い方まで含めて判断します。
オンプレミスからクラウドへの移行パターン
AWSは、クラウドへの移行戦略を「7つのR」で整理しています。移す方法に加え、現状を維持する「リテイン」や、不要なシステムを廃止する「リタイア」も含まれます。すべての資産を同じ方法で移す前提にはなっていません。
| 移行パターン | 内容 | 適用場面 |
|---|---|---|
| リホスト(Rehost) | そのままクラウドへ移行 | 迅速な移行が必要な場合 |
| リプラットフォーム(Replatform) | 部分的に最適化して移行 | クラウドメリットを活用したい場合 |
| リパーチェス(Repurchase) | SaaS製品を新たに導入 | 既存システムを廃止して刷新する場合 |
| リファクタリング(Refactor) | クラウドネイティブに再構築 | 構造の変更を伴う最適化が必要な場合 |
| リロケート(Relocate) | 仮想化基盤などを同等の環境へ移す | 既存環境の構成を維持して移行したい場合 |
| リテイン(Retain) | 現状のまま維持 | 移行の必要性が低い、または将来移行予定の場合 |
| リタイア(Retire) | システムを廃止 | 不要になったシステムを削除する場合 |
AWSやAzureへの移行サービス活用
主要なクラウドプロバイダーは、サーバーやデータベースの移行を支援するサービスを提供しています。利用できる機能や対応環境は異なるため、自社の移行元・移行先との適合を確認します。
サーバーの移行やデータベースの移行を自動化するサービスを活用しても、対象資産の把握、互換性の確認、テスト、本番切り替えの判断は必要です。サービスの機能と、導入を支援する企業の担当範囲を分けて確認すると、作業の抜けを防ぎやすくなります。
レガシーマイグレーション
レガシーマイグレーションは、既存システムの資産を引き継ぎながら、新しい環境へ移す取り組みです。メインフレームからオープン系システムへの移行も、その一つに含まれます。
メインフレームからオープンシステムへの移行
移行先では、ハードウェアやソフトウェアの選択肢が広がる場合があります。ただし、ライセンスや運用費が必ず下がるとは限らず、新たな製品・サービスへの依存も生じます。保守性、費用、将来の変更のしやすさを比較して選ぶ必要があります。
COBOLなど旧言語資産の変換と活用
長年使われているプログラムには、業務のルールや処理手順が組み込まれています。言語を変換する際も、何を維持する必要があるかを確認し、処理結果を検証します。
資産の引き継ぎ方には、COBOLを利用できる環境へ移す方法や、Javaなどへ言語を変換する方法があります。使い続けたい業務ロジックと、移行後に保守する人材・体制を踏まえて選びます。
保守期限への対応を先に行い、その後に業務やアプリケーションを見直す段階的な進め方もあります。現行資産を残す範囲と改修する範囲を決め、各段階の目的を明確にしておくことが大切です。
*参照元:Martin Fowler|Refactoring(https://refactoring.com/)*参照元:AWS|移行戦略(7つのR)(https://docs.aws.amazon.com/prescriptive-guidance/latest/large-migration-guide/migration-strategies.html)
マイグレーションサービスに期待できる5つの効果
マイグレーションで期待できる効果には、コストの適正化、保守性の改善、セキュリティ対策の見直しなどがあります。効果は移行方式や設計によって変わるため、導入前に評価項目を決めておきます。
コスト削減効果
費用を比較するときは、移行にかかる初期費用と、移行後の運用費を合わせた総コストで考えます。移行前と同じ機能・性能・可用性の条件をそろえて試算することが重要です。
ランニングコストの削減
ハードウェア保守、ソフトウェアのライセンス、運用作業などの見直しによって、継続的な費用を抑えられる場合があります。クラウドでは利用資源や通信などの料金も確認し、想定する利用量で比較します。
ハードウェア更新費用の抑制
クラウドを利用する範囲では、自社でサーバーを購入・更新する負担を減らせます。一方、利用料金は継続して発生するため、機器購入費だけを比べて削減効果を判断しないことが大切です。
業務効率とシステム品質の向上
既存機能を引き継ぎながら、保守や運用のしやすさを見直せます。業務変更も行う場合は、システムの移行と業務改善の範囲を分けて計画します。
既存資産を活かした機能維持
使い慣れた画面や業務ロジックを継承できる場合は、利用者への影響を抑えられます。ただし、操作や運用手順が変わる箇所は残るため、変更点の周知や教育が必要かを確認します。
移行後の処理性能と品質の確認
新しい基盤で処理性能が改善する場合もありますが、構成やデータ量、プログラムの特性によって結果は変わります。新旧の処理結果の比較に加え、応答時間、バッチ処理時間、負荷が高いときの動作をテストし、要求を満たすかを評価します。
セキュリティリスクの低減
サポートが続く環境への移行は、セキュリティ対策を見直す機会になります。移行後も、パッチの適用、アクセス権限の管理、監視などを継続する必要があります。
サポートが続く環境への移行
保守が終了したOSやミドルウェアを使っている場合、移行先で修正パッチの提供を受けられる状態にすることが対策の一つです。ただし、アプリケーション自体の脆弱性や設定の問題まで、自動的に解消されるわけではありません。
移行後のセキュリティ運用
クラウドでは、基盤を提供する事業者と利用企業でセキュリティの責任を分担します。利用するサービスに応じて、自社が担当するOSやアプリケーションの更新、権限設定、データ保護などの範囲を確認します。
保守を担う人材・体制の見直し
移行先の技術を見直すことで、保守を担当できる人材の選択肢を広げられる場合があります。言語や基盤の変更に加え、業務知識の引き継ぎも必要です。
レガシー技術者の高齢化対策
技術者の確保に課題がある場合は、現行環境と移行先の両方について、社内外で確保できる人材や育成の負担を調べます。新しい言語へ変換するだけで、保守人材の不足が解消するとは限りません。
仕様と運用知識の引き継ぎ
仕様、データの流れ、障害対応などを文書化し、担当者以外でも参照できるようにすると、属人化の改善につながります。現行システムの調査結果を、移行後の設計書や運用手順に引き継ぐことが重要です。
ビジネス変化への柔軟な対応
移行後に追加したい機能や外部サービスとの連携がある場合は、必要な変更を事前に整理します。既存環境をそのまま移すだけでは、業務や開発の進め方まで変わるとは限りません。
DX推進による競争力強化
API連携やデータ活用を進めたい場合は、その目的を移行先の設計や業務要件に反映させます。既存機能の維持と、新たな機能の開発を同時に行うか、段階を分けるかも検討します。
外部との連携や分析に使うデータは、形式や意味が分かるように整理する必要があります。移行で得られる調査結果を活用し、データを継続して管理する担当や運用方法も検討します。
システムの拡張性・柔軟性の向上
クラウドでは、需要に応じて資源を増減できるサービスを選べます。ただし、アプリケーション側の対応や監視・制御の設定が必要になる場合があるため、拡張方法と費用を含めて設計します。
*参照元:AWS|移行費を含めた総コストの比較(https://docs.aws.amazon.com/prescriptive-guidance/latest/application-portfolio-assessment-guide/directional-business-case.html)*参照元:AWS|責任共有モデル(https://aws.amazon.com/compliance/shared-responsibility-model/)
マイグレーション実施の4ステップと必要期間
必要な期間は、資産の量、仕様の把握状況、テスト範囲、停止できる時間などで変わります。小規模な移行と大規模な基幹システムの刷新では条件が異なるため、以下の工程をもとに、自社の対象範囲に応じた日程を確認します。
アセスメント・移行性診断フェーズ
最初に、現行システムの資産と制約を調査します。資料の有無や資産の量によって調査に必要な期間が変わるため、診断の対象と成果物を確認します。
現状システムの調査と評価
まず、移行対象となる現行システムの詳細な調査から始めます。以下の項目について網羅的に洗い出し、資産として棚卸しを行います。
- アプリケーションのソースコード
- データ構造
- システム間の依存関係
- 利用されているミドルウェア
- システムが支えている業務プロセス
仕様書だけで把握できない箇所は、ソースコードや稼働状況、担当者への確認などで補います。利用部門とも照合し、廃止できる機能や残すべき業務を整理します。
移行可能性とリスク分析
調査結果に基づき、技術的な移行の実現可能性を評価します。サポート対象外のソフトウェアの有無、複雑なデータ連携、品質の低いデータなど、移行の障壁となりうる課題を特定し、潜在的なリスクを分析します。
多くの専門ベンダーは、このフェーズに特化した「移行性診断サービス」や「アセスメントサービス」を提供しており、客観的な評価を得るために活用することが有効です。
設計・移行方式決定フェーズ
調査で判明した課題と、業務上の目標や制約を踏まえ、移行方式と移行先を決めます。
移行方式の設計と選定
予算、保守期限、停止可能な時間、必要な性能を踏まえて方式を比較します。互換性や性能に不確実な点があれば、方式を確定する前に検証する範囲も決めます。
移行計画とロードマップ策定
対象資産、工程、人員、テスト、利用部門への周知、運用引き継ぎを計画に含めます。本番への切り替え条件と、問題が発生した場合に旧環境へ戻す条件・判断者も決めておきます。
段階的に移せるかは、システム間の依存関係やデータ連携によって変わります。分割する場合は各段階の接続や運用を確認し、一括で移す必要がある場合は本番前の検証を計画します。
パイロット移行・検証フェーズ
選定した方式や変換ツールが自社の資産に適合するか、代表的な機能やデータを使って試験します。
小規模での試験移行実施
システム全体を移行するリスクを避けるため、まず代表的な機能やデータの一部を抽出し、PoC(Proof of Concept:概念実証)やパイロットテストとして試験的に移行を実施します。
移行方式の検証と調整
機能や処理結果だけでなく、性能、外部連携、運用手順も確認します。検証に使うデータや負荷が本番と異なる場合は、結果をどこまで適用できるかも整理します。
見つかった問題を計画や変換ツールに反映し、修正後に再検証します。本番移行へ進むための判定基準を決め、未解決の課題と対応方針を共有しておきます。
本番移行・運用開始フェーズ
本番への切り替えと、切り替え後の稼働確認、運用引き継ぎを行います。切り替え作業の時間と、移行全体に必要な期間は分けて確認します。
本番切り替えとデータ同期
切り替え前にデータをバックアップし、更新停止や最終同期などの手順を実施します。停止時間は業務への影響と技術上の制約を踏まえて設定し、作業のリハーサルで所要時間を確認します。
並行稼働と運用引き継ぎ
移行方式によっては新旧システムを並行稼働させ、処理結果を比較します。データの更新先や同期方法を定め、双方の内容に不整合が起きないようにする必要があります。
利用部門による確認や性能・監視の評価を経て、安定稼働を判断します。運用手順と担当範囲を引き継ぎ、旧システムの停止時期やデータの保管方法を決めます。
工程ごとの期間は、診断結果と必要な検証量に基づいて見積もります。保守期限だけでなく、決算などの業務日程や利用部門の確認時間も含め、無理のない計画を立てることが大切です。
移行リスクを抑える3つの対策方法
移行中の停止やデータの不整合、性能の低下などに備え、予防策と問題が発生した場合の対応を計画します。
自動化ツールの活用と出力の検証
コード変換や繰り返しのテストなど、自動化に適した作業があります。ツールが対応できる範囲と、人が確認する範囲を分けて設計します。
手作業削減による人的ミスの防止
大量のコードやデータを扱う場合、手作業を減らすことで作業負担や転記ミスを抑えられます。ただし、変換ルール自体が誤っていれば結果にも影響するため、ツールの出力を検証する必要があります。
自動変換ツールは、移行元の言語や独自仕様、移行先の環境によって対応範囲が変わります。自動化率を見る際は、対象となる資産や工程、手修正・テストを含むかを確認します。
再変換可能な環境構築
変換ルールを修正して再変換できる場合は、個別に修正する作業を減らせます。元の資産、変換ルール、生成物のバージョンを管理し、同じ条件で変換や検証をやり直せるようにします。
生成AIを使い、コードの解析、文書の生成、業務ロジックの抽出などを支援するサービスもあります。例えばAWS Transformは、メインフレームのモダナイゼーションにこうした機能を提供しています。対応言語や利用できる機能を確認し、出力の正しさは業務を把握した担当者やテストで検証します。
段階的移行とテスト戦略
一括切り替えと段階的な切り替えのどちらが適するかは、システムの構造と業務上の条件によって変わります。分割できる場合は影響範囲を抑えて検証できる一方、分割に伴うデータ連携や並行運用の設計が必要です。
パイロット移行による検証
代表的な資産を選んで試験移行し、変換の精度や性能、作業時間を確認します。簡単な機能だけを選ばず、重要な処理や独自仕様を含めて評価することが大切です。
並行稼働期間の設定
並行稼働は、新旧の処理結果を比較するための方法の一つです。必ず最も安全な方式になるわけではなく、データ同期や運用負担、両方の環境を維持する費用を考慮して選びます。
旧システムへ切り戻す場合は、切り替え後に新システムで更新したデータをどう扱うかが課題になります。判断基準、判断者、データの戻し方、必要な時間を計画し、停止可能な時間内に実行できるかを確認します。
専門家による移行支援の活用
現行環境と移行先の両方に詳しい支援企業を選ぶと、調査や方式選定、検証を進めやすくなります。自社と支援企業それぞれの役割を明確にして依頼します。
経験豊富なマイグレーション専門チームの起用
移行元の技術、業務要件、移行先の設計や運用に関する経験を確認します。社内でも仕様の確認や受け入れ判断を担う担当者を決め、利用部門と連携できる体制を整えます。
総実績数だけで判断せず、自社と同じ移行元・移行先、資産の規模、制約条件に近い案件の経験を確認します。調査やテストでどのような課題が生じ、どう対応したかを聞くと、支援内容を具体的に比較できます。
必要な時間帯のサポート体制
本番切り替えの日時に合わせ、障害の連絡先、対応担当者、判断を行う責任者を決めます。利用部門や関連システムの担当者も含め、必要な人員が対応できる日程を設定します。
24時間365日の対応が必要かは、システムの利用時間や停止時の影響に応じて判断します。移行中の支援と移行後の保守を分け、対応時間、初動、復旧支援、追加費用を契約前に確認します。
ツール、検証工程、担当者の役割を一緒に確認すると、対応の抜けを見つけやすくなります。特に、本番へ進む判断と問題発生時の切り戻し判断を、誰が何に基づいて行うかを明確にしておきます。
*参照元:AWS|AWS Transformによるメインフレームのモダナイゼーション(https://docs.aws.amazon.com/transform/latest/userguide/transform-app-mainframe.html)*参照元:AWS|本番切り替えとロールバック(https://docs.aws.amazon.com/prescriptive-guidance/latest/best-practices-migration-cutover/cutover-stage.html)
マイグレーションサービスの費用の考え方と選び方
見積もりを比較するときは、金額に加え、調査・変換・テスト・切り替え・運用支援のどこまで含まれているかを確認します。同じ移行先でも、依頼する範囲によって費用は変わります。
費用を左右する要因と見積もりの確認事項
移行費用は、資産量、仕様の把握状況、移行方式、データ量、テストや停止時間の条件によって変わります。システム開発全体の相場をそのまま当てはめず、対象資産と作業範囲を整理して見積もりを依頼します。
部門単位のシステムで確認する範囲
部門単位のアプリケーションでも、連携先が多い場合や仕様が不明な場合は、調査やテストの工数が増えます。画面数だけでなく、プログラム、データ、連携、運用の変更範囲を伝えます。
全社の基幹システムで確認する範囲
全社の基幹システムでは、データの整合性、性能、権限、業務を継続するための検証が必要です。移行作業に加え、利用部門の確認や教育、新旧環境の並行運用を含むかを確認します。
見積もりには、診断、設計、変換・改修、データ移行、テスト、本番切り替え、運用引き継ぎなどの内訳を求めます。ライセンスやクラウド利用料、保守費、二重稼働の費用が別料金かも確認しておきます。
複数社に同じ対象範囲と要件を提示し、前提条件と除外事項をそろえて比較します。調査後の増額条件や仕様変更時の費用も確認すると、当初の見積もりとの差を把握しやすくなります。
サービス提供企業を選ぶ際のポイント
支援企業を選ぶ際は、自社の移行対象への対応力、調査・テストの内容、体制、見積もりの前提を比較します。
移行対象に近い実績と専門性
自社と同じ業界の経験に加え、移行対象の言語、データベース、ジョブ、帳票などへの対応を確認します。対応可能という説明だけでなく、どの部分をツールで処理し、どの部分を改修・検証するのかを聞きます。
実績数は経験を知る参考になりますが、一定の件数だけで品質を判断することはできません。類似案件の範囲、担当チームの経験、テストでの確認事項、移行後の支援内容を合わせて比較することが大切です。
サポート体制(24時間365日対応の有無)
移行後の運用を誰が担当するか、障害の切り分けや改修をどこまで依頼できるかを確認します。移行を担当する企業と保守する企業が異なる場合は、引き継ぐ資料や責任範囲も決めておきます。
必要な対応時間に加え、SLA(サービスレベルアグリーメント)の内容、連絡経路、初動の目安、復旧支援の範囲を確認します。24時間受付と24時間の復旧対応は、同じ意味とは限りません。
見積もりの比較では、価格とともに、実施する作業や受け入れ条件を確認します。テストや運用支援を含む提案と含まない提案を、同じ条件として比較しないことが重要です。
仕様が不明な箇所や対応範囲を確定できない箇所は、診断後に判断する条件として整理します。想定外の改修が生じた際の協議方法や、追加費用の扱いも契約前に確認しておきます。
保守期限までに必要な調査と検証ができるか、移行後に維持・改善できる体制があるかを見極め、自社の要件と予算に合う企業を選びます。
マイグレーション成功事例から学ぶ導入効果
導入事例を読む際は、移行元・移行先、採用した方式、事前検証の内容を確認します。過去の成功事例を参考にしつつ、自社にも同じ効果が得られるかは個別に検証する必要があります。
基幹システムの移行事例
以下は、ソフトロードが公開している社名非公開の事例です。過去の移行実績として、対象資産や対応工程を比較する参考になります。
ソフトロード:COBOL/SからJavaへの移行と基盤の更新
基幹系システムで、COBOL/SからJava、ADABASからOracle10g、ACOS4からHP Unixへ移行した事例です。
棚卸や移行設計に加え、仕様書再生、ソース移行・移行テスト、総合・運用テスト支援を実施しています。開発期間は12か月と紹介されています。
ソフトロード:言語・データベース・稼働環境をまとめて更新
基幹システムで、VB6からVB.NET2015、Oracle10からOracle12c、Solaris9からWindows Server 2012へ移行した事例です。
棚卸・移行設計からソース移行・総合テスト、運用テスト支援、本番支援までを対象とし、開発期間は7か月と紹介されています。
マイグレーションサービスのまとめ
マイグレーションを検討するときは、まず利用中の資産、保守期限、担当者への依存、業務への影響を整理します。残す機能と見直す機能を分けることで、移行方式や依頼する範囲を決めやすくなります。
コスト削減、性能改善、セキュリティ強化などの効果は、移行先の設計や運用次第です。移行前に評価基準を決め、調査とテストで確認しながら進めることが重要です。
支援企業は、総実績数や自動化率だけでなく、自社に近い案件の経験、検証の方法、見積もりの範囲、移行後の体制で比較します。保守期限から逆算し、資産の棚卸しや移行性診断から相談すると、必要な工程を検討しやすくなります。
この記事でご紹介した選定ポイントを参考に、貴社に最適なマイグレーションサービス選びにお役立てください。
- 免責事項
- 本記事は、2026年10月にリード文・基礎解説および掲載企業情報の一部を確認・更新しています。実績数や事例は、それぞれに記載した集計時点・公表時点の情報です。サービス内容、料金、保守期限や適用条件は変更される場合があるため、検討・契約の際は各提供元の最新情報をご確認ください。
公式サイトで詳しく見る→
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