製造業マーケティングとは?戦略・手法・優先順位を全体設計で解説

製造業マーケティングとは?戦略・手法・優先順位を全体設計で解説
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製造業のマーケティングは、Web施策や展示会といった単発の打ち手を選ぶことではありません。展示会、Web、代理店、営業活動などを含めて、受注につながる導線と、比較検討で選ばれるための判断材料をどう整えるかという全体設計です。

展示会や紹介に依存して新規が伸びない、Webを活用したいが何から始めればいいか分からない、問い合わせはあるのに単価が合わない・稟議で落ちる。
こうした悩みは、施策以前にマーケティング全体が整理できていないことから起きているケースが少なくありません。

この記事では、製造業マーケティングを手段ごとに俯瞰し、まず整理すべきポイントと優先順位を解説します。自社の課題に近いテーマから、次に検討すべき打ち手を考えるヒントにしてください。

製造業マーケティングとは(定義)

製造業マーケティングとは(定義)

製造業マーケティングとは、展示会・Web・代理店(商社)・営業活動などの手段を組み合わせて、「受注につながる出会い方(導線)」と「比較検討で選ばれるための判断材料」を整える取り組みです。
単発の施策を増やすことではなく、検討初期〜稟議〜発注までの“選ばれるプロセス”を前提に全体を設計することが目的になります。

製造業の場合、次のような状態が起きやすいのが特徴です。

  • 問い合わせはあるが、単価が合わない/条件で折り合わず失注する
  • 競合と比較されるが、決め手が伝わらず「結局、知名度・価格」で負ける
  • 稟議(社内説明)で止まり、次に進まない

これらは「流入が少ない」のではなく、比較検討で使われる情報が不足し、選定理由として整理できないことで起きているケースが多いです。

製造業マーケのゴールは「受注につながる導線」と「比較検討で使われる判断材料」を整えること

製造業の購買は、営業が接触する前に「比較・検討」が進みやすく、問い合わせがあっても受注に至らないことがあります。そのためマーケのゴールは、単に問い合わせを増やすことではなく、受注までのプロセスで“必要な情報が揃っている状態”をつくることです。

具体的には、次の2つを同時に整えます。

  • 受注につながる導線:どこで出会い、何を読んで理解し、どこで相談・比較に進むか(入口→比較→問い合わせ→商談)
  • 判断材料:比較・稟議で「選定理由」としてそのまま使える情報(強み、対応範囲、品質・体制、実績、事例、条件、FAQ など)

導線だけ増やしても、判断材料が不足していれば比較で落ちます。逆に、判断材料が揃っていても、出会いの導線がなければ検討に入ってもらえません。
だからこそ、製造業マーケティングは「集客」ではなく「受注までの全体設計」として捉える必要があります。

BtoBマーケとの共通点/製造業ならではの特徴

製造業マーケティングはBtoBマーケティングと共通する部分が多い一方で、特有の前提があります。

  • 検討期間が長く、比較・稟議を経て意思決定されやすい
  • 購買の関与者が複数(現場・技術・購買・管理職・経営層)になりやすい
  • 技術や品質の優位性が「選定理由として説明できる言葉」になっていないと比較で不利になりやすい

つまり製造業では、強みがあるかどうか以前に、強みが“比較可能な形”で提示されているかが結果を左右します。この前提を押さえたうえで、次章から「なぜ今重要なのか」「どんな手段があり、どう優先順位をつけるか」を全体像で整理していきます。

なぜ今、製造業でマーケが重要なのか

製造業の新規開拓や受注の進め方は、ここ数年で大きく変化しています。背景にあるのは、情報収集の手段が営業中心からWeb・業界メディア・比較情報中心へと移っていることです。

「営業に会う前に比較が終わっている」前提

製造業の購買プロセスは、以前と比べて大きく変わっています。多くのケースで、営業に問い合わせをする前に、すでに複数社を比較・検討した状態で情報収集が進んでいます。

検討初期の段階では、
・検索
・業界サイト
・比較情報
・事例
といった営業が介在しない接点で判断材料が集められています。
その結果、営業が接触した時点で「候補に入っているか/すでに除外されているか」が、ある程度決まっていることも珍しくありません。営業活動の前段階で、マーケティングによる選別が始まっているとも言えます。

展示会・紹介依存だけだと伸びが鈍化する理由

展示会や既存顧客からの紹介は、製造業にとって今も有効な手段です。しかし、それだけに依存していると、新規開拓の伸びが鈍化しやすくなります。

理由のひとつは、接点を持てる母数が限られることです。出会える相手やタイミングが固定化されると、事業規模に比例した成長が難しくなります。

もうひとつは、検討初期の層と接点を持てないことです。すでに比較が進んだ段階でしか出会えない場合、価格や条件での比較になりやすく、選ばれにくくなります。

技術力があっても“伝わらない”と比較で負ける

製造業では、技術力や品質、実績といった強みを持つ企業が多く存在します。それでも比較で選ばれないのは、強みが弱いからではなく、比較の場で伝わる形になっていないことが原因であるケースが少なくありません。

特にBtoBでは、
・技術をどう評価すればいいのか
・他社と何が違うのか
・社内でどう説明すればいいのか
といった視点で情報が見られます。

こうした前提を踏まえると、単に露出を増やすだけでなく、比較・検討のプロセスを意識したマーケティング設計が重要になります。
次章では、そのために必要な製造業マーケティングの手段と役割の全体像を整理していきます。

製造業マーケの全体像(主な手段と役割)

製造業マーケティングは、いきなり施策を選ぶのではなく、どんな手段があり、それぞれがどの役割を担っているのかを把握することから始まります。
ここでは代表的な手段を役割ごとに整理します。

オフライン:展示会/既存ルート/代理店・商社

製造業では、今もなおオフラインの接点が重要な役割を果たしています。展示会や既存顧客からの紹介、代理店・商社経由の商流は、信頼を前提にした接点として機能します。

一方で、出会える相手やタイミングが限定されやすいため、これらだけに依存すると新規開拓の広がりには限界が出てきます。
製造業向け展示会の選び方や出展検討のポイントについては、製造業の展示会一覧で整理しています。
展示会以外の選択肢も含めて全体像から検討したい場合は、製造業の集客課題とは?競合に差をつけるWeb活用法が5分で分かるもあわせてご覧ください。

オンライン:SEO/広告/比較サイト/動画・SNS/ホワイトペーパー

オンライン施策は、検討初期の段階で接点を持てる点が特徴です。
検索(SEO)や広告、比較サイト、動画・SNS、ホワイトペーパーなどを通じて、営業が関与する前に情報提供が可能になります。

ただし、単に流入や問い合わせを増やすだけでは、受注につながらないケースも多く、どの段階で何を伝えるかという設計が重要になります。
Web施策を軸に、集客から受注までの流れを整理したい方は、製造業のWebマーケティング戦略!サイトや広告の活用法とはをご覧ください。

広報PR:第三者露出・業界メディア

業界メディアへの掲載や第三者からの評価は、信頼性を補強する役割を担います。自社発信だけでは伝わりにくい価値を、第三者の視点で伝えられる点が特徴です。

特に比較検討や稟議の場では、「どこに取り上げられているか」が判断材料のひとつになることもあります。

営業連携:インサイドセールス/ナーチャリング/商談設計

マーケティングは、営業と切り離して考えるものではありません。インサイドセールスやナーチャリング、商談設計と連携することで、問い合わせ後の歩留まりが大きく変わります。
どれだけ接点を作っても、営業プロセスと噛み合っていなければ受注にはつながりません
そのため、手段ごとの役割を整理したうえで、全体としてどう連動させるかが重要になります。

これらの手段を踏まえて、まず何から着手すべきかという優先順位は以下でご紹介します。

まず何から?成果が出る優先順位(設計の順番)

製造業マーケティングでは、施策を検討する前に「どの順番で考えるか」を整理しておくことが重要です。順番を誤ると、手段を増やしても受注につながらない状態に陥りやすくなります。

ステップ 考えるポイント 整理の視点
① ターゲットと商流の棚卸し 誰に・どの商流で売っているか 直販/代理店、購買関与者、検討期間
② 強みの言語化 技術を顧客価値に翻訳できているか 比較で使われる説明になっているか
③ 導線設計 入口から商談までの流れ 比較・判断の段階で情報が足りているか
④ 改善 成果の出ている部分と詰まり 数ではなく受注につながる質

①ターゲットと商流の棚卸し(誰に・どう売っているか)

最初に整理すべきなのは、誰に、どの商流で、どのように売っているのかという前提です。直販か代理店・商社経由か、購買に関わるのは現場・管理職・経営層のどこか、検討から受注までにどれくらい時間がかかるか。ここが曖昧なままでは、集客やWeb施策を選んでも噛み合いません。営業起点や商流起点で整理したい場合は、新規開拓に特化した記事で詳しく扱っています。

②強みの言語化(技術を顧客価値に翻訳)

次に重要なのが、自社の強みを比較検討で使われる形に変換できているかです。製造業では、技術力や品質といった強みを持っていても、そのままでは選定理由として伝わらないことが多くあります。どの課題に向いているのか、他社と何が違うのかを、顧客や社内で説明できる言葉に落とし込めているかが、結果を大きく左右します。

③導線設計(入口→比較→問い合わせ→商談)

導線設計(入口→比較→問い合わせ→商談)

強みが整理できたら、次は導線です。展示会やWebといった入口から、比較、問い合わせ、商談まで、顧客がどう進むかを一連の流れで設計します。入口だけを増やしても、比較や判断の段階で情報が不足していれば受注にはつながりません。どの段階で、どんな情報が必要かを整理することが重要です。

④改善(入口だけでなく“質”まで見る)

最後は改善の視点です。流入数や問い合わせ数といった入口指標だけでなく、商談化や受注につながっているかという質まで確認します。どの入口が成果につながっているのか、どこで比較が止まっているのかを把握することで、次に手を入れるべきポイントが見えてきます。では、この成果をどう測るかを次で整理していきます。

KPI設計:入口+受注につながる質で見る

製造業マーケティングでは、表示数や問い合わせ数といった入口指標だけを追っていても、成果につながらないケースが少なくありません。重要なのは、比較検討や稟議の場で選ばれる状態になっているかをKPIで確認することです。

入口KPI(表示・流入・問い合わせ)

まず確認すべきなのは、どれくらい接点を持てているかという入口のKPIです。検索結果での表示やWebサイトへの流入、問い合わせ件数などが該当します。これらは施策の立ち上がりを確認する指標として重要ですが、入口KPIだけでは受注の良し悪しは判断できません。

指標 見るポイント 注意点
表示・流入 検討初期層と接点を持てているか 数が増えても質は分からない
問い合わせ数 興味関心を持たれているか 情報収集目的が多い場合もある

中間KPI(資料DL・指名検索・比較ページ閲覧)

次に重要になるのが、比較検討の段階で見られる中間KPIです。資料ダウンロードや指名検索、比較ページの閲覧といった行動は、単なる情報収集から一歩進んだサインといえます。元記事の調査でも、「競合と比較しているだけのリードが多い」「アポにならない」といった課題が多く挙がっていましたが、これは中間KPIが弱い状態で入口だけが増えている典型例です。

指標 意味 見極めたい点
資料ダウンロード 具体的な検討に入っている兆し 内容が比較・稟議で使えるか
指名検索 候補として認識されている状態 競合名と並んで検索されているか
比較ページ閲覧 選定フェーズに入っている 強みが伝わる構成になっているか

※製造業のWeb集客におけるリードの課題については、過去のアンケート調査でも確認されています。詳細はこちら→【調査結果】約6割の製造業者がWebマーケティングの導入で「商談・問い合わせが増加した」と回答

商談KPI(商談化率・受注率・案件単価の適合)

最終的に確認すべきなのが、商談以降のKPIです。商談化率や受注率だけでなく、案件単価や顧客の条件が自社と合っているかを見ることが重要です。問い合わせはあるが受注しない、単価が合わないといった場合、入口ではなく比較・判断材料の設計に課題がある可能性があります。

指標 確認ポイント つまずきやすい原因
商談化率 問い合わせが商談に進んでいるか 検討度合いが低い
受注率 比較で選ばれているか 判断材料・説明不足
案件単価の適合 狙った顧客が来ているか 入口とターゲットのズレ

このようにKPIを入口から商談まで一貫して見ることで、単なる集客ではなく、比較や稟議でどこが詰まっているのかを判断できます。では、自社の状況に近いテーマから、次に考えるべき打ち手を整理していきましょう。

読者タイプ別:次に読むべき記事

このページでは、製造業マーケティングの全体像と、設計の順番、KPIの考え方を整理してきました。ここからは、自社の状況に近いテーマから読み進められるように、次に読むべき記事をタイプ別にまとめます。

こんな状況なら 次に読む記事 ここで分かること
展示会・紹介以外で新規を増やしたい/集客手段を比較したい 製造業の集客の考え方 展示会以外も含めた集客の打ち手と、選び方の整理
営業起点で新規開拓を整理したい/商流やアプローチを見直したい 営業・商流から考える新規開拓 案件の作り方、商流整理、営業の打ち手の考え方
Webで集客したい/SEOや広告などWeb施策に絞って整理したい Web施策を軸にした集客設計 Web施策の全体像と、受注につなげる設計の考え方
問い合わせはあるのに受注しない/比較・稟議で落ちる 比較・稟議で落ちる理由と改善の考え方 検討長期・稟議前提で、比較に勝つための設計と詰まりどころ
何が課題か分からない/施策の前に整理したい/社内説明の材料が欲しい よくあるマーケティング課題の整理 よくある詰まりのパターンと言語化、優先順位の付け方
最終的に比較で勝つ“信用材料”を整えたい/ネーム負けを減らしたい 比較検討で選ばれる状態を作るブランディング 「認知」ではなく、比較検討で納得して選ばれる状態を作る考え方
製造業マーケティングは「手段の選択」ではない

ここまでを踏まえると、製造業マーケティングは「手段の選択」ではなく、受注につながる導線と判断材料を整える全体設計だと分かります。まずは自社の状況に近いテーマから読み進め、次に取るべき打ち手を具体化してみてください。

よくある質問(FAQ)

製造業マーケティングは何から始めるべきですか?

製造業マーケティングで最初に取り組むべきなのは、施策選びではなく、誰に・どの商流で・どんな条件で受注したいのかを整理することです。商流や営業の前提が曖昧なまま展示会やWeb施策に着手すると、問い合わせは増えても受注につながらないケースが多くなります。

展示会とWebは、どちらを優先すべきでしょうか?

展示会とWebのどちらが正解というものではなく、自社の商流や検討プロセスに合っているかで判断する必要があります。対面での信頼構築が重要な商材では展示会が有効ですし、検討初期から比較されやすい商材ではWebでの情報提供が欠かせません。手段ではなく役割から考えることが重要です。

BtoBで問い合わせはあるのに、受注につながらない原因は何ですか?

多くの場合、原因は集客量ではなく、比較検討や稟議の場で使われる判断材料が不足していることにあります。強みの違いが説明しづらい、社内で選定理由を説明できないといった状態では、問い合わせがあっても受注に至りにくくなります。

製造業マーケティングで重視すべきKPIは何ですか?

表示数や流入数といった入口指標だけでなく、比較検討が進んでいるか、商談や受注につながっているかといった質のKPIを見ることが重要です。資料ダウンロードや指名検索、商談化率などを通じて、受注につながる状態を確認する必要があります。

製造業マーケティングを外注する場合の見極めポイントは何ですか?

施策単体の実績よりも、商流・検討プロセス・営業との連携まで含めて設計できるかを確認することが重要です。広告やSEOなど部分的な提案だけでなく、なぜその施策が必要なのか、受注までどうつながるのかを説明できるかが判断基準になります。

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