近年、温室効果ガス(GHG)排出量の削減に向けた取り組みが、日本国内の企業にも広がっています。2022年の東京証券取引所による市場区分の再編以降、「プライム市場」上場企業には、気候変動リスクへの対応状況を開示することが事実上の義務となりました。加えて、「スタンダード市場」や「グロース市場」の企業にも、同様の情報開示が推奨されています。
こうした背景の中、「環境データの収集やCO2排出量の算出・管理までを担える人材が社内にいない…」という課題を抱える企業も少なくありません。
そこで本記事では、企業活動におけるCO2排出量の見える化をサポートする、管理ツール・可視化ツールをご紹介します。脱炭素経営に向けた第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
CO2排出量管理ツール一覧表
会社名 | サービスの特徴 |
---|---|
LCA Plus |
製品単位でCO2排出量を可視化! |
ScopeX |
GHG数値算出・排出量の削減施策の提案で、脱炭素経営の悩みを解決 |
アスゼロ |
レポートの自動生成で、知見がない従業員も簡単に操作できる |
商品炭素簿 |
業務プロセスや仕様に合わせたカスタマイズを提案 |
ReNomシリーズ |
AIによるCO2削減最適化のシミュレーションが可能 |
Ond |
データ自動収集とシステムにより、算出量を一目で把握できる |
zeroboard |
企業全体のGHG排出量データを一元管理 |
C-Turtle |
複数社の排出量を把握し、整合的な算定が可能 |
booost GX |
スマホ対応でどこからでもCO2排出量を管理 |
ClassNK ZETA |
船舶のGHG排出管理に役立つ4つの機能を搭載 |
Net Zero Cloud |
複数のデータをダッシュボードで簡単に確認 |
グローバルSCMシミュレーションサービス |
消費者向けの資料にも活用できるCO2排出量シミュレーション機能 |
EcoNiPass |
各社のCO2排出量を自動連携!業務効率を改善 |
カーボンオフセットクラウド |
コードを書くだけ!リアルタイムでGHGを算出 |
e-dash |
企業の目標や取り組み内容まで手厚くサポート |
CO2排出量管理ツールの定義と役割
気候変動への対応が企業に求められる今、CO2排出量の把握と削減は経営に欠かせない課題となってきました。こうした背景の中で注目されているのが、CO2排出量管理ツールです。
CO2排出量管理ツールは、企業活動によって排出されるCO2量を自動的に集計・可視化し、削減計画や報告書の作成までを支援するシステムです。単なる数値管理だけでなく、環境対策を経営の中に組み込むためのデジタルインフラとして、重要な役割を果たします。
Scope1~3をカバー
CO2排出量は、国際基準であるGHGプロトコルに基づき、「Scope1(直接排出)」「Scope2(間接排出)」「Scope3(サプライチェーン排出)」の3つに分類されます。多くの管理ツールは、これらすべての範囲を一元管理でき、特にScope3のサプライチェーン全体まで把握できる機能が評価されています。
Scope3は企業によっては排出量の大半を占めるため、全15カテゴリへの対応ができるかどうかが、ツール選定の大きなポイントです。
- Scope1:自社が直接排出するCO2(自社工場、社用車など)
- Scope2:購入した電力や熱などの間接排出
- Scope3:原材料調達から製品の廃棄までの間接排出(全15カテゴリ)
CO2排出管理・見える化が注目されている背景

近年、多くの企業でCO2削減、脱炭素経営が注目されています。温室効果ガスの排出を抑えるために、企業は石油・石炭といった化石燃料への依存を防ぐ取り組みが世界各国で行われています。
温室効果ガスが増えると地球表面の温度が上がり、多くの生物にとって住みにくい環境となり、持続可能な企業を目指すことが難しくなる恐れも。持続的な経営を目指すためにも、世界各国が一丸となって取り組む必要があるのです。
脱炭素の取り組みが活発化した背景には、2015年12月に採択されたパリ協定が挙げられます。パリ協定では、産業革命前からの平均気温上昇を1.5~2℃未満への抑制が目標として掲げられました。日本も例外ではなく、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」の達成を目標に掲げています。
2015に国連に採択され、近年ビジネス界隈で注目されているSDGsにも「脱炭素化」も含まれていることから、今後もCO2排出削減に取り組む企業は増えると予想されます。
CO2排出量管理ツールの開発や導入が進んでいる
脱炭素に向けた取り組みが活発になり、CO2排出量管理ツールの開発や導入が急ピッチで進められています。CO2排出量の削減と一口に言っても、削減した量を数値化しないと取り組みの是非がハッキリと分かりません。
そこで、具体的な削減量・削減率を設定できる「CO2排出量管理ツール」に注目が集まっています。企業でCO2排出量を算出するには手間も時間もかかるため、知見がなくとも直ぐに算出できるCO2排出量管理ツールを導入したいところです。
CO2排出量管理システムのメリット
業務効率化による時間短縮
CO2排出量管理システムを利用することで、数値をExcel入力するなどの煩雑な作業から解放され、CO2排出量を自動計算することができます。また、データを自動収集し、活動量と排出単位をマッチングしてCO2排出量をリアルタイムで自動算定するシステムもあります。これにより、業務効率を改善することができます。
サプライチェーン全体の可視化による効果的な削減
CO2排出量管理システムによって、企業のサプライチェーン全体のCO2排出量を可視化できるようになります。そのため、企業は自社だけでなく、サプライチェーン全体を通したCO2削減に取り組むことができ、より効果的な削減が可能となります。
全員参加型の脱炭素活動による社会的貢献
CO2排出量管理システムの導入によって、企業は従業員や関連企業、顧客など、広範なステークホルダーを巻き込んだ脱炭素活動の展開が可能になります。
このような全員参加型のアプローチは、単なる経済合理性だけではなく、企業が社会的責任を果たすことにつながるでしょう。また、顧客にもCO2削減の取り組みをPRすることで、企業イメージ向上につながることも期待できます。
削減目標設定・進捗管理による施策実行の支援
CO2排出量管理システムで算出したデータをもとに、システム上で削減目標を設定し、進捗管理ができるようになります。CO2排出量と生産指標を分析することで、より効率的にCO2の削減につながる施策を打ち出すことも可能です。
また、削減目標の設定や、削減に向けた具体的なアクションプランを提案してもらえるサービスもあります。これにより、CO2削減に向けた取り組みを具体化することができるでしょう。
専門的なコンサルティングによる現実的な目標設定
CO2排出量管理システムの中には、専門的なコンサルタントが、現実的で実現可能な削減目標設定を支援してくれるサービスもあります。業界トレンドや最新技術を把握し、組織の状況に合わせた最適な戦略提供から目標設定のプロセス、実行までのサポートが期待できます。
CO2排出削減に注目した経営のメリット

ここからは、企業がCO2排出削減に取り組むメリットとを紹介します。導入後のイメージを掴んだうえで、「CO2排出量管理ツール」を比較検討してみてください。
企業がCO2排出削減に取り組むメリット
CO2排出削減に企業が取り組むメリットは、大きく分けて3つあります。
- 取り組みを通して、企業の認知度や好感度が上げられる
- エネルギーコストが削減できる
- 補助金などの支援を受けやすくなる
脱炭素を含むSDGsに取り組むことで、社会への責任を果たす企業として好意的に受け止めてもらえます。また、CO2排出量を削減する取り組みは、エネルギー消費を抑えられるのでコスト削減にも繋がります。
さらに、脱炭素経営を促進するために、日本政府が毎年様々な施策を実施しているため、タイミングによっては補助金が受けられる可能性があります。
エネルギーコスト削減に繋がる機器の購入費用・設置費用の一部を補助してもらえるので、脱炭素経営に取り組む際のハードルを下げられます。2022年度は「エネルギー対策特別会計予算 補助金・委託費等事業」が実施されており、設備費用の一部を補助しています。CO2排出量削減に取り組む企業は、ぜひ各種補助金をご活用ください。
※参照元:環境省|令和4年度(2022年度)エネルギー対策特別会計予算 補助金・委託費等事業(事業概要)(https://www.env.go.jp/earth/42021.html)選び方のポイント
CO2排出量管理ツールは単なるソフトではなく、企業の環境経営を支える重要な基盤です。導入前にはいくつかの視点からしっかりと比較検討することが欠かせません。ここでは、選定時に特に重要となる3つのポイントを紹介します。
1. 対応Scopeの範囲
まず確認したいのは、ツールがカバーしているScopeの範囲です。
多くの企業ではScope1(直接排出)とScope2(購入エネルギーによる排出)の把握は比較的行いやすい一方で、Scope3(サプライチェーン全体にわたる間接排出)は対象が広く、管理が難しいとされています。
Scope3は、原材料の調達から製品の使用・廃棄まで、全部で15のカテゴリに分類されます。この領域まで正確に算定できるツールを選ぶことで、より実態に近い排出量の把握が可能になります。
さらに、業界平均などの推計値に頼るのではなく、サプライヤーからの実測データ(一次データ)を取り込める機能を備えたツールであれば、信頼性の高い算定が行えるでしょう。
2. 自動化・連携機能
次に注目したいのが、自動化と他システムとの連携機能です。
従来の手作業によるExcel集計では、データ入力や計算ミスが起こりやすく、担当者の負担も大きくなりがちです。
最近のCO2管理ツールには、以下のような自動化機能が備わっています。
- 紙やPDFの請求書をスキャンして数値を読み取る「AI-OCR」
- ERP(統合基幹業務システム)や会計システムとの「API連携」
- 購買データや経費データを自動で取り込む仕組み
こうした機能により、担当者の手入力を最小限に抑えつつ、一貫性と再現性のあるデータ管理が実現できます。特に監査対応やESG報告で信頼性が求められる場面では、こうした仕組みが重要になります。
3. 開示支援機能
CO2排出量を管理する目的のひとつに、投資家や顧客などのステークホルダーへの情報開示があります。そこで、開示支援機能の充実度も、ツール選びの大きなポイントとなります。
以下のような開示に対応しているかを確認しましょう。
- TCFD(気候関連財務情報開示)に沿ったレポート出力
- CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の質問書対応
- 温対法、省エネ法など、国内法定フォーマットへのデータ出力
ツールによっては、レポートを自動生成する機能があり、フォーマットに沿った内容を手間なくまとめることができます。これは単なるコンプライアンス対応にとどまらず、企業の取り組みを分かりやすく社内外に伝えるための戦略的な情報発信ツールとしても活用できます。
CO2排出量管理ツール導入でよくある質問

Q1.CO2排出量管理するにはどのようなツールがありますか?
CO2排出量管理ツールは、基本的に企業活動における排出量を見える化(数値化)しますが、中にはどのように削減すべきか施策も提案してくれるツールもあります。 どのようなツールがあるのか早く知りたい方は「CO2排出量管理見える化ツール早見表」をご一読ください。
Q2.CO2排出量管理ツールの導入メリットは何ですか?
脱炭素を含むSDGsに取り組むことで、社会への責任を果たす企業として好意的に受け止めてもらえます。また、CO2排出量を削減する取り組みは、エネルギー消費を抑えられるのでコスト削減にも繋がります。
さらに、脱炭素経営を促進するために、日本政府が毎年様々な施策を実施しているため、タイミングによっては補助金が受けられる可能性があります。さらに詳しく知りたい方は、「企業がCO2排出削減に取り組むメリット」をご覧ください。
本記事のまとめ
脱炭素で、会社のエネルギーコスト削減のほか、「SDGsを推進する企業」として自社のブランディングも図れます。
その近道として、CO2排出量の算出や管理があるのですが、知識や技術ゼロの状態からスタートするのはなかなか現実的とは言えません。ツールを開発し、カーボンオフセットについてのノウハウをもっている企業に頼るのも有効な手段です。本記事でピックアップした企業を参考にいただき、ツール導入にお役立てください。
- 免責事項
- 本記事は、2024年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載各社の情報・事例をはじめコンテンツ内容は、現時点で削除および変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。