サントリー「オールフリー」のマーケティング戦略 ― 健康訴求から自由・開放感への転換
最終更新日:2026年05月10日
健康意識の高まりから、近年ますます注目を集めている「ノンアルコール飲料」。需要が高い分、競合も多い市場において、サントリーの「オールフリー」は、なぜ選ばれているのでしょうか。
オールフリーが選ばれる背景には「ノンアルコール飲料を飲まない人」をターゲットとした、マーケティング戦略が存在します。
この記事では、サントリー「オールフリー」のマーケティング戦略について解説しています。自社のマーケティング戦略を検討する際に、ぜひ参考にしてください。
なお、この記事に合わせて自社と競合の分析を通じてマーケティングを成果に繋げるためのワークシートも提供しています。シートに記入するだけで3C分析が進められる内容になっていますので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。
サントリーの「オールフリー」は、健康訴求から「自由・開放感」へ訴求軸を転換し、成熟市場で新たな顧客層の開拓に成功しています。広告・商品設計・体験施策の連動を解説し、競合との消耗戦を抜け出すヒントを提供します。
オールフリーを取り巻くノンアルコール飲料市場の拡大と需要変化
ノンアルコール飲料市場は拡大を続けており、消費者のニーズは「代替品」から「積極的に選ぶ飲料」へシフトしています。この需要変化がオールフリーの戦略転換の起点です。
代替品から積極選択へシフトするノンアルコールビール需要
かつてはアルコールを飲めない場面での代替品だったノンアルコールビールですが、健康意識の高まりやライフスタイルの多様化により、あえて選ぶ消費者が増加しています。市場拡大の背景には、代替需要を超えた積極的な選択行動があります。
飲酒シーン以外の利用拡大と新たな顧客層の登場
若年層を中心に「ソーバーキュリアス」(飲めるがあえて飲まない)という価値観が広がっています。リフレッシュや気分転換を目的にノンアルコール飲料を取り入れる層が登場し、従来の飲酒シーンを超えた需要が拡大しています。
健康志向から気分価値へ移行するオールフリーの戦略転換
オールフリーは健康訴求で築いた基盤をもとに、市場の成熟に合わせて「自由・開放感」という気分価値へ訴求軸をリニューアルしました。この転換が、競合との差別化の原動力です。
休肝日プロモーションと健康機能による基盤構築
オールフリーは当初、休肝日や健康志向の消費者をメインターゲットとしていました。2019年にはブランド初の機能性表示食品「からだを想うオールフリー」を発売し、内臓脂肪低減機能を訴求。健康機能を武器にノンアルコールビール市場での地位を確立してきました。
市場成熟に伴う「自由」と「開放感」へのメッセージ変更
しかし健康訴求だけでは競合との差別化に限界があります。サントリーは消費者の飲用動機を「気分を上げたい」「開放感に浸りたい」という気分価値へ再定義し、ブランドメッセージを「心のふたを開けよう」へリニューアルしました。機能的価値の競争から脱却し、ターゲットの感情に訴えかける方向へ転換したのです。
ブランド刷新を支えるオールフリーの広告・コミュニケーション施策
新しいブランドメッセージを浸透させるために、オールフリーはTVCM・SNS・サンプリングを連動させた複合的な広告戦略を展開しています。
メッセージを視覚的に伝えるTVCMの展開
ブランド刷新に合わせ、松山ケンイチを新メッセンジャーに起用したTVCMを展開しています。缶のふたを開けた瞬間にソファーごと空を浮遊する映像演出で「自由・開放感」を体現し、山下達郎の書き下ろし楽曲がブランドメッセージを音で補強しています。
SNSキャンペーンと体験接点・サンプリングの連動
デジタル領域ではSNSでのフォロー&リポストキャンペーンやKing Gnuとのコラボレーションなど話題性のある施策を展開。同時に延べ100万人規模の全国サンプリングツアーを実施し、試飲による体験価値とデジタルでの拡散を組み合わせた複合的なアプローチを取っています。
自由と開放感を実現するオールフリーの商品設計
オールフリーの戦略転換は広告だけでなくプロダクト設計にも一貫しています。商品体験と訴求メッセージの連動がブランドの説得力を高めています。
独自の「4つのゼロ」と機能性表示食品としての進化
オールフリーはアルコール0.00%・カロリーゼロ・糖質ゼロ・プリン体ゼロの「4つのゼロ」を実現しています。機能性表示食品「からだを想うオールフリー」では内臓脂肪低減機能を付加し、健康軸のベースを盤石にしました。
エールテイストの追加と香り・飲みごたえの追求
新たに追加された「オールフリー エールテイスト」は、二条大麦麦芽の一番麦汁とアロマホップを贅沢に使用。爽やかなホップの香りと飲みごたえを4つのゼロで両立し、すっきりした後味が自由と開放感という気分価値を商品体験として具現化しています。
オールフリーの新規ユーザー開拓に学ぶマーケティング戦略の示唆
オールフリーの戦略転換は、BtoB企業にとっても成熟市場で新規ユーザーを開拓するための実践的なモデルケースです。
既存市場の奪い合いを避ける新しい文脈の創造
オールフリーは「ビールの代替品」という文脈から脱却し、「気分転換のための積極的な選択肢」という新しい利用シーンを創出しました。競合とのシェア争いではなく、ノンアルコールに関心がなかった新規ユーザーにアプローチし市場そのものを広げています。BtoBマーケティングでも機能面の横並び比較から抜け出し新たな訴求文脈を作ることが差別化の鍵であり、ニッチ戦略の視点からも競合不在のポジションを狙う重要性が裏付けられます。
商品・広告・体験を一気通貫させる設計の重要性
オールフリーの成功は、商品設計から広告、体験接点までを「自由・開放感」で一貫させた点にあります。訴求と体験にギャップがあればブランドの信頼は築けません。自社の強みを再定義する際には、製品体験そのものを含めた一気通貫の設計が不可欠です。
自社の市場ポジションを確立するマーケティング戦略の進め方
オールフリーの事例が示すように、成熟市場での差別化には「誰に・どんな価値を・どう届けるか」の再定義が不可欠です。
自社独自の強みとターゲットを再定義するステップ
市場環境と競合を分析し、機能的価値と情緒的価値の両面から自社の勝ち筋を見極めます。既存顧客の奪い合いに終始していないか、未開拓の顧客層がないかを棚卸しすることが、効果的なマーケティング戦略策定の第一歩です。
専門ノウハウを活用した効率的な戦略策定
自社での分析に限界を感じる場合は、プロの視点で最短距離の戦略構築が可能です。キャククル(shopowner-support.net)を運営するZenken株式会社は、成約特化型の比較メディア運営で培った実績をもとに、強み抽出から訴求設計まで一貫して支援しています。












