SaaSのリード獲得の成果につなげる戦略と実践ポイント
最終更新日:2025年06月09日

まず押さえておきたい「SaaSリード獲得」とは
SaaSビジネスで事業成長を目指すには、見込み顧客の情報=リードをしっかり集めることが最重要となります。 サブスクリプションモデルで安定した売上を伸ばすためには、常に新しい顧客を獲得し続ける仕組みづくりが不可欠です。
この章では「SaaSリード獲得」の基本的な意味と、そのプロセスについて解説します。
MQLとSQL、それぞれの役割を理解
リードには段階があり、適切に管理することで営業の効率が大きく変わります。
- MQL(Marketing Qualified Lead)
マーケティング活動で獲得し、将来的に顧客になりそうな見込み顧客。たとえばウェブサイトでの資料ダウンロードや、ウェビナー参加者がこれに該当します。MQLは主にオウンドメディアやホワイトペーパー、SEO経由の問い合わせ、Web広告、SNSキャンペーン、展示会のアンケート回答などで獲得できます。 - SQL(Sales Qualified Lead)
MQLの中から、営業担当者が「今まさに商談できそうだ」と判断した“ホットな”リードです。具体的な課題や導入時期が明確な場合が多く、インサイドセールスのヒアリングやスコアリング、製品デモを経てSQLに移行します。
部門ごとにMQL・SQLの定義や基準を明確にし、マーケティングと営業が連携してリード管理を進めることが、リード獲得効率向上のカギとなります。
特徴 | MQL | SQL |
---|---|---|
定義 | マーケティング施策で創出され、今後顧客になる可能性が高いリード | MQLから選別された、営業が本格アプローチすべきリード |
主な獲得チャネル | オウンドメディア、ホワイトペーパー、Web広告、ウェビナー | MQLナーチャリング後のセールス活動 |
目的 | 関心を喚起・育成の対象 | 商談化・成約を目指す |
主担当 | マーケティング部門 | 営業部門 |
リード獲得の流れを可視化
リード獲得は単発ではなく、一連の流れとして設計しましょう。
認知から契約まで、各段階で目的と施策を明確にすることで、スムーズなリード獲得・商談化が可能になります。
- リード獲得(見込み顧客情報を集める)
- リード育成(メールやコンテンツで興味・関心を高める)
- リード選別(購買意欲の高いリードを見極める)
- 商談(営業提案やデモ実施)
- 契約(成約後のサポートも重要)
各段階のKPI(たとえばMQLからSQLへの転換率)も設定し、ボトルネックの把握と改善を繰り返すことが大切です。
リード獲得がうまくいかない理由を見つめ直す
「なかなかリードが増えない」「成約に結びつかない」と感じたら、まず現状の課題を棚卸ししましょう。
戦略や実施プロセスに見落としがないか確認することで、次のアクションが明確になります。
ターゲット設定の甘さがボトルネックに
どんな製品も「誰にでも売れる」ことはありません。
曖昧なターゲット設定は、施策の効果を大きく損ないます。
- ターゲット顧客像(ペルソナ)が具体的でない場合、広告やコンテンツの精度が落ち、結果的にリードの質も下がります。
- ホリゾンタルSaaS(広い業界向け)は顧客像の具体化が難しく、バーチカルSaaS(特定業界向け)ではニッチ市場への適切な絞り込みが求められます。
- エンタープライズ企業を狙う場合、意思決定プロセスが複雑なため、担当者や部署の見極めがポイントです。
ペルソナ設計やカスタマージャーニーをしっかり見直し、実際の顧客像に基づいた施策を行うことをおすすめします。
マーケティングメッセージが刺さらない原因
ターゲットが明確でも、伝え方を間違えるとリードは集まりません。
- 競合と差別化できる独自の価値や強み(USP)を明確にし、それをターゲットの言葉で具体的に伝えましょう。
- メッセージは「機能説明」よりも「導入後のベネフィット(得られる成果)」を中心に構成するのが効果的です。
- 広告文やメールタイトル、ランディングページの見出しなどはA/Bテストで反応率を計測し、最適化を重ねましょう。
- チャネルごとに言葉遣いやトーンを調整し、ターゲットの心理状態や検討段階に合った訴求が大切です。
オンライン施策をフル活用するコツ
SaaSのリード獲得において、オンラインチャネルは最も重要な主戦場です。
SEOや広告、SNS、メールなど主要な手法を組み合わせることで、見込み顧客との接点を最大化しましょう。
SEO・オウンドメディア運用の基本
- 検索ニーズに応じた記事やホワイトペーパーでターゲットの情報収集をサポートしましょう。
- ブログ記事はキーワード(課題や悩み、ノウハウなど)から逆算して作成。課題解決型のコンテンツや導入事例も有効です。
- ホワイトペーパーは専門知識や事例集をPDF等にまとめ、ダウンロード時に顧客情報を獲得できます。
- CTA(資料請求や問い合わせ)への導線設計も重視しましょう。
- 記事の最後やサイドバー、ポップアップでCTAを設置。読者の行動に合ったオファー(例:「詳細資料はこちら」「無料トライアル」)を提示します。
- フォームは入力項目を最小限にし、離脱率を抑える工夫を。
施策 | 特徴 | メリット | 主なKPI |
---|---|---|---|
SEO・オウンドメディア | 検索経由で潜在顧客にアプローチ | 低コスト、資産化、質の高いリード | 検索流入数、ページビュー、リード数 |
Web広告 | 検索/ディスプレイ/SNS広告で即効性あり | 短期成果、ターゲット精度高い | CPC、CPL、CVR |
ホワイトペーパー | 専門資料で質の高いリード獲得 | BtoBに強い、ナーチャリング起点 | DL数、MQL率 |
メールマーケティング | 定期配信でリード育成 | 低コスト、パーソナライズ可能 | 開封率、クリック率、CVR |
Web広告・SNS広告の戦略的運用
- リスティング広告はニーズが顕在化しているユーザー向け、ディスプレイ広告やSNS広告は潜在層へアプローチするのに最適です。
- ターゲット属性や行動履歴をもとに配信先を細かく調整することで、広告費を無駄なく使えます。
- 配信クリエイティブやランディングページはABテストを繰り返し、最適なパターンを追求しましょう。
ホワイトペーパー/メールマーケティングの活用
- ノウハウ資料や事例集はオンライン上での“名刺交換”の役割を担い、確度の高いリード獲得に有効です。
- 獲得したメールアドレスには、定期的にお役立ち情報や最新事例、イベント案内を配信し、商談化のタイミングを逃さないようにしましょう。
- リードの属性や検討度合いごとに配信シナリオを設計し、段階に応じた適切な提案を行うことで、商談化率の向上が期待できます。
オフライン施策もバランスよく取り入れる
オンライン施策だけでなく、オフラインのチャネルもSaaSビジネスのリード獲得では効果的です。
ターゲット層や商材特性を踏まえ、チャネルを柔軟に組み合わせることが成果を左右します。
展示会・セミナーの出展/開催
- 業界展示会やセミナーは、製品やサービスに関心の高いリードと直接会える貴重な場です。
- 参加者アンケートや名刺交換で得た情報は、即座にナーチャリングやインサイドセールス活動に活用しましょう。
- ウェビナーも有効で、場所を選ばず幅広いターゲットに情報発信できます。
- チャットやQ&A機能を活用し、参加者とのコミュニケーションを深めることも大切です。
ダイレクトメール/テレアポの役割
- Webメールや広告では届きにくい層には、郵送DMや電話で直接アプローチする方法も検討しましょう。
- ターゲットリストの精度(業種・規模・役職など)を上げ、費用対効果の高い運用を意識します。
- オンライン施策との連携も効果的です。たとえば、ウェブで接点を持った企業に後日DM送付、または資料ダウンロード後のテレアポなどです。
リード獲得単価(CPL)とKPIを常にチェック
単にリード数を追いかけるだけでなく、コスト効率や成果指標(KPI)を常に意識することが、持続的な成長につながります。
CPL(リード獲得単価)の考え方
CPLは「リード1件を獲得するのにかかったコスト」。
たとえば「広告費100万円で50件のリード獲得」なら、CPLは20,000円です。
チャネルや施策ごとにCPLを比較し、投資効率の高い施策にリソースを集中させることが求められます。
チャネル | 目安CPL | 備考 |
---|---|---|
比較サイト | 15,000~30,000円 | 自社カテゴリにあったページがあれば質の高いリードが見込める |
オウンドメディア | 15,000~20,000円 | 長期的に運用することで、CPL低下が見込める |
ホワイトペーパー | 10,000~12,000円 | とにかくリードを集めたい場合に有効 |
展示会 | 8,000~10,000円 | 担当者のリードを集めたい場合に有効 |
Web広告 | 15,000~50,000円 | 即効性があるが高単価。CPLは年々高騰している。 |
KPI設計と効果測定のポイント
主要KPIを可視化し、定期的に効果を見直しましょう。
- リード総数
- MQL率(MQL数÷リード総数)
- SQL率(SQL数÷MQL数)
- 商談化率(商談数÷SQL数)
- 受注率(受注数÷商談数)
これらのKPIをダッシュボードで「見える化」し、部門間で状況を共有することで改善サイクルを加速できます。
効果が見えない施策は早期に見直し、より成果が見込めるチャネルにリソースを再配分しましょう。
リード獲得後の育成フローを最適化する
獲得したリードの多くは、すぐには購入に至りません。 リードナーチャリング(育成)で関心度を高め、商談・成約につなげる仕組みを整えましょう。
リードナーチャリングの基本と実践例
- メールマーケティングやSNS、オウンドメディアを活用し、継続的に有益な情報を提供します。
- リードの属性や行動履歴ごとに配信内容やタイミングを最適化しましょう。たとえば「A資料ダウンロード」後は関連ブログ案内→
導入事例→製品デモ招待、といった段階的なシナリオ設計が効果的です。
- ナーチャリングシナリオは定期的に振り返り、配信内容やターゲットセグメントをアップデートしましょう。
リードクオリフィケーションの進め方
- リードの属性や行動(資料請求、ページ閲覧、メール開封等)を点数化(スコアリング)し、営業が優先してアプローチすべき“ホットリード”を抽出します。
- アンケートや電話ヒアリングで、予算・導入時期・ニーズなども確認しましょう。
- マーケティング部門と営業部門がSQLの基準を共有し、スムーズな引き渡しとフィードバックサイクルを構築することで、商談の歩留まりが向上します。
他社事例と最新トレンドから学ぶ
SaaS市場は競争が激しいため、他社の成功事例や新たなトレンドのキャッチアップが成果を左右します。
成功事例でよく見られる共通点
- 複数チャネル(SEO、広告、メール、展示会など)の組み合わせでアプローチの幅を広げている
- ペルソナやカスタマージャーニーを軸にチャネルやメッセージを最適化し、一貫したコンテンツでブランド価値を高めている
- KPIの数値を細かく分析し、PDCAを高速で回して施策改善を積み重ねている
最新のトレンド/今後注目したい施策
- AIやMA(マーケティングオートメーション)ツールの活用でリード獲得・育成の自動化と高度なパーソナライズを実現
- 無料トライアルやFreemiumモデルを活用し、プロダクト体験からのリード創出に注力
- 既存顧客の紹介(リファラル)を活用した新規リード拡大
質の高いリード獲得でSaaSビジネスを加速しよう
SaaSリード獲得で成果を出すには、オンライン・オフライン施策をバランスよく組み合わせ、自社の強みやターゲット像に合わせて最適なチャネル・手法を選ぶことがポイントです。
今すぐできる施策の見直しや小さな改善から始めてみましょう。
新しいノウハウや成功事例にも積極的に目を向け、戦略のアップデートを継続することをおすすめします。
自社の成長を加速させるリード獲得戦略、ぜひ実践してみてください。