医療現場では、薬剤や医療材料の在庫管理が診療の質と安全を支える重要な業務の一つです。しかし、依然として紙やExcelによる手作業が中心の病院も少なくありません。
その結果、人的ミスによる欠品・過剰在庫など、さまざまな課題が表面化しています。
本記事では、病院で導入が進む主要な在庫管理システムを一挙に紹介。特徴・導入事例などをわかりやすく比較し、システム選定のポイントや、現場に定着させるための導入ノウハウも解説します。
会社名 | サービスの特徴 |
---|---|
Medilia |
業務の標準化を実現!誰でも正確に扱える在庫管理システム
|
MedicalStream |
電子カルテ連携とグループ病院の一元管理に強み |
HOPE LifeMark-Indii |
医材価格のベンチマーク機能で収益改善を支援 |
ENIFwin Nex-Sus |
薬剤から拡張可能なシステム |
McHIL |
患者ごとの薬剤使用履歴を記録・管理できる |
MELS |
薬剤部の業務を効率化!法令対応にも強い |
ODSS |
月額2万円から導入できるクラウド型・低コスト運用 |
zaico |
業界・業種を問わず使われている汎用型 |
スマートマットクラウド |
重量センサーで「置くだけ」在庫管理 |
Medicine Supervision |
薬剤部向けの多機能システム |
システムK-1 CUBE |
施設ごとの管理に優れた多拠点対応システム |
Medi-Vit |
経営改善に効く分析機能が使いやすい |
Icquickstock |
会計・経理にも強い!先入先出対応の在庫管理 |
ZERO Supply |
多彩な運用と豊富な統計機能で現場にフィット |
Pro_GRESS AA |
ハンディ端末×リアルタイム運用で現場業務を支援 |
POWERS |
薬品管理向け!レセコン連携で日常業務を自動化 |
Mediboard |
在庫管理から契約管理までまとめてDX化できる統合型 |
Windy |
モバイル対応で調剤業務をスマートに |
WEB版薬剤在庫管理システム |
院内処方を行う中小病院や診療所向け |
なぜ今、医療現場に在庫管理の見直しが必要なのか?
医療現場の在庫管理は、単なる物品の管理を超え、患者様の安全を守るために不可欠な業務です。しかし、今でも多くの病院では、紙やExcelに頼った管理が主流となっています。
こうした手作業による運用には重大なリスクが潜んでおり、医療安全を揺るがす可能性があります。ここでは、現状の課題とその背景を解説します。
期限切れ医薬品が紛れ込むリスク
院内で期限切れの医薬品が誤って使われてしまう事故が、件数は多くないものの実際に起きています。その背景には、リアルタイムで在庫状況を確認できる仕組みがなく、手作業による不定期なチェックに頼らざるを得ない現状があります。
現場の担当者が多忙な中で、期限管理を徹底するのは現実的に難しく、属人的な管理には限界があるのです。
コロナ禍以降、ワクチンの在庫量・流通量が急増した影響で、期限管理ミスが目立ちました。これらは単なる管理ミスではなく、在庫管理システムがないために起こる重大なリスクです。
人為ミスは避けられない!紙・Excel運用の限界
紙やExcelによる手作業管理は、ヒューマンエラーを引き起こしやすい環境です。例えば、数字の入力ミスや、入力漏れ・二重入力が頻繁に起こります。 こうしたミスが積み重なると、記録上の在庫数と実際の在庫数が大きく食い違い、発注ミスや欠品、過剰在庫といった新たな問題を生みます。
特に、毎日多くのデータを入力しなければならない場合、エラーが発生する確率はさらに高まります。

- 入庫・払い出し時の計数・記録ミス
- 似た商品パッケージの取り違え
- 不定期な棚卸しによる誤差の蓄積
こうしたエラーは個人の注意力では防ぎきれません。システム化による仕組みづくりが不可欠です。
病院向け在庫管理システム導入のメリット
在庫管理をシステム化することで、病院経営と医療安全の両面に、すぐに効果が現れます。ここでは、具体的なメリットを紹介します。
メリット | 具体的な内容 |
---|---|
コスト5〜15%圧縮 | 無駄な発注や廃棄を減らし、経営負担を軽くできます。 |
業務時間40%短縮 | 在庫カウントや発注作業などが自動化され、スタッフの負担が減ります。 |
期限管理アラート | 期限切れ品の廃棄をゼロに近づけ、無駄なロスを防ぎます。 |
麻薬・劇薬ロット追跡 | 法規制対応や医療安全の観点から、厳格なトレーサビリティが確保できます。 |
経営指標ダッシュボード | 経営層や各部門で客観的なデータに基づいた意思決定が進みます。 |
監査対応帳票の自動生成 | 監査準備が大幅に楽になり、データの正確性も担保されます。 |
無駄な発注を減らしコストを削減するしくみ
コスト削減の仕組みには、「発注点方式」と「発注定数方式」の2つがあります。

- 発注点方式:設定した在庫量を下回ると自動発注。欠品を防ぎつつ過剰在庫を減らします。
- 発注定数方式:一定数を定期的に発注。安定した需要がある品目に適しています。
システムは消費データやリードタイムを元に、最適な発注量を自動で計算します。結果、「念のため」の無駄な発注や、発注漏れによるトラブルが減少し、コスト圧縮につながります。
スタッフの働き方を変える効果
システム導入で棚卸しや請求照合にかかる時間が大きく削減されます。
例えば、従来は年末年始をすべて費やしていた棚卸し作業が、システム導入後は通常の10分の1の時間で完了した事例もあります。さらに、スタッフは患者様と向き合う時間が増え、働きがいの向上と患者満足度のアップにもつながります。
病院向け在庫システムの7つの選定基準
病院に最適な在庫管理システムを選ぶには、明確な評価基準が必要です。以下は、失敗しないための7つのポイントです。
- 医療法規制やGS1バーコード対応
- ロット番号や期限のリアルタイム把握機能
- 薬品マスタの自動更新
- 自動発注やVAN連携の柔軟性
- ハンディ・スマホなど多様な棚卸し対応
- ダッシュボードのカスタマイズ性
- 医療現場での導入実績とサポート体制
チェックすべき規制対応ポイント
法改正や規制対応はシステム選びで絶対に譲れない条件です。特にGS1バーコードへの対応は、有効期限やロット番号など重要な情報を一度に正確に読み取るために不可欠です。
また、ベンダーが今後の法改正にも柔軟に対応し、システムを継続してアップデートする体制を持っているかも確認しましょう。
RFID?センサー?技術の違いと使い分け方
在庫状況のリアルタイム把握には、バーコード・QRコード、RFID、重量センサーの3つの技術があります。

技術 | 特徴 | 最適な用途 |
---|---|---|
バーコード | 低コスト・普及率高い・スマホでも利用可 | 個別薬剤の払出や使用記録 |
RFID | 複数一括読取・大量処理向き・棚卸自動化 | 手術キットやリネン類の管理 |
重量センサー | 完全自動・初期コスト高・定位置管理に特化 | 消耗品の欠品防止 |
自院の課題や運用シーンに合わせて、適切な技術を選ぶことが大切です。
形だけの導入で終わらせない!在庫システムを根付かせる方法
優れたシステムを選んだ後も、現場に根付かせて最大限の効果を出すには段階的な導入が欠かせません。
- 現状の課題を詳細に把握し、導入効果を見える化する
- 意欲ある部署でテスト導入し、全体に広げる
- 導入前にKPIを設定し、月次で効果をレビュー
電子カルテ・会計と連携!二重入力なしの仕組みづくり
最新の在庫管理システムは、電子カルテや医事会計システムと連携できるものが多く存在します。
医師のオーダー情報が自動で在庫管理システムに連動し、同じ情報を何度も入力する手間をなくせます。また、患者様に使った物品データが自動で会計システムにも反映され、請求漏れのリスクも減らせます。
費用は?補助金は使える?導入コストの不安をまるごと解消
在庫管理システム導入には、初期費用や月額費用が発生しますが、補助金制度を活用すれば大きな負担軽減につながります。費用と助成のポイントを分かりやすく解説します。
項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
---|---|---|
初期費用 | 0〜50万円程度 | 100万円〜1000万円以上 |
月額費用 | 5,000円〜10万円以上 | 低額/なし(年契約別途) |
保守・サポート | 月額費用に含まれる場合が多い | 年間10〜15%の保守費用 |
補助金申請フローと注意点
在庫管理システムは「IT導入補助金」の対象です。申請の流れは下記のとおりです。
- IT導入支援事業者を選ぶ
- gBizIDプライム取得とSECURITY ACTION宣言
- オンラインで交付申請
- 事業完了後、実績報告書を提出
補助金公募のスケジュールには必ず注意しましょう。公式サイトを定期的に確認し、計画的に準備を進めることをおすすめします。
失敗しない導入のために!事前に確認すべきチェックリスト
システムのスムーズな導入のためのチェックポイントを紹介します。
- 既存Excelデータは多くのベンダーがインポートツールを提供しています。データ整理をしっかり行いましょう。
- 災害時はクラウド型なら遠隔地データ保管、オンプレミス型なら定期バックアップを。
- ほとんどのクラウド型は既存パソコン・スマホで利用可能。導入前に対応OSを確認してください。
まずは現状把握から!チェックで見える課題
システム導入を成功させるには、現状の業務プロセスや課題を正確に洗い出すことが大切です。
項目 | チェック内容 |
---|---|
プロセス | 発注・検品・入庫・保管・払い出し・棚卸しの手順を明確に記録 |
人材 | 関わるスタッフ全員の担当と作業時間をリスト化 |
ツール | 現状使っている帳票・台帳・Excelファイルを集約 |
課題 | 現場スタッフの不満や頻発ミス、非効率な点を洗い出し |
サポートと障害対応の要チェック項目
契約前に、ベンダーのサポート内容や障害対応時間をしっかり確認しましょう。
- システム稼働率や障害時の対応時間(SLA)
- 24時間365日対応か、平日日中のみか
- アップデートや法改正対応の費用・頻度
- 災害時のデータ復旧体制
「万が一」の時も安心して運用できるか、事前にチェックが必要です。
病院向け在庫管理システムのまとめ
病院在庫管理システムの導入は、単なる業務効率化ではありません。医療安全の強化と経営の最適化を同時に実現するための戦略的な取り組みです。データに基づく管理体制を確立することで、病院全体がより戦略的な経営にシフトできます。
興味がある方は、システム提供会社にオンライン説明を依頼したり、詳細な資料や見積もりを取り寄せることをおすすめします。
最後に、システム導入は現場のスタッフ全員を巻き込むプロジェクトとして進めてください。薬剤師・看護師・事務・購買など、実際に使う現場の声を取り入れながら進めることで、システムが真に定着し、活用されるようになります。